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ウェディングハイに見る「ウケるスピーチ」と「結婚披露宴の問題点」(前編)

最近、『ウェディングハイ』という映画を観た。
ハプニング続出のドタバタ結婚式を描いたコメディで、最初から最後まで楽しく観られた。

篠原涼子がウェディングプランナーを、中村倫也が新郎を、関水渚が新婦を、それぞれ演じている。
観た後で知ったのだが、脚本はバカリズム師匠だった。そりゃ面白いわ。

「結婚披露宴あるある」がふんだんに且つオーバーに盛り込まれた『ウェディングハイ』を観ていて、映画に対しても、また結婚披露宴そのものに対しても、思うところがいくつかあったので、筆を取った次第である。

この記事では、映画に出てくる披露宴の前半部分を局所的に取り上げるが、物語の結末に関するネタバレは一切ないので、これから映画を観るつもりの方は安心して読み進めてほしい。


1. スピーチでどれだけ笑いを取れるか

この映画には、結婚披露宴のスピーチでいかに笑いを取るかに駆られている人物が出てくる。
しかも、2人もだ。
高橋克美演じる新郎の上司と、皆川猿時演じる新婦の上司である。
(ちなみに僕は、この皆川猿時が"港カヲル"という名前で活動しているコミカル系ロックバンド"グループ魂"の隠れファンである。『愛人』という曲の港カヲルが、僕はもう最高に好きなのである。)

この映画の中心にいるのはあくまで新郎・新婦やウェディングプランナーなのだが、僕はこの脇役のオジサン達2人に引き込まれていた。
スピーチで笑いを取ることに全神経を注ぐ2人のオジサンの脳内が視聴者に明かされる一幕が、もうたまらなかったのである。

ただし、その肝心のスピーチの中身は、映画では公開されない。
視聴者が見れるのは、ウケているシーンだけである。

例えば…
財津俊彦(高橋克美)「それでね、そいつ、七分袖だったんですよー!」
会場「あはははは!!!!!」
ってな感じである。

オチが七分袖のエピソードって何!?
フル尺で聞かせてほしかった。

先攻の財津のオモシロ主賓挨拶を見て、あとに続く井上司郎(皆川猿時)は、急遽、自分のスピーチ(乾杯の挨拶)の内容をその場で変更するのだが、その思い切りも凄い。
井上司郎は事前に用意してきた2リットルのコーラに見切りをつけて(おそらく乾杯の発声の際にコーラの一気飲み芸を披露するつもりだったと思われる)、芸ではなくトークで笑いを取る方に舵を切る。
しかも、その即席トークで見事に爆笑をかっさらってしまうのである。
いやぁ、港カヲル、ハマり役でした。

本作では、オジサン2人のトークの内容全てが明かされるわけでは決してないのだが、ウケるスピーチをする人の考え方を存分に知れるし、話し手と聞き手が共鳴し合う空気感を味わうことができるし、どっかんどっかんウケて気持ちよくなっているオジサンたちを見て視聴者としてニヤニヤすることができるので、それだけでもこの映画を観る価値がある。


さて、手練れ2人のスピーチを終えて、会場のボルテージは最高潮なのだが、ここで問題が発生する。

オジサン2人のスピーチが長すぎて、進行が遅れに遅れ、ケーキ入刀を前にして、1時間押しになる。

ケーキ入刀なんて乾杯の後に続く、いわゆる序盤戦の代表格なのに、その序盤戦の時点で既に1時間押しているのだ。

オジサン2人が気持ちよくなった結果、こんな弊害が生まれてしまった。

後半のプログラムを複数削らないと成り立たないほどのロスである。


このまま次のテーマ、「(仮題)2. 一生に一度の晴れ舞台が、他人次第」を書こうと思っていたのだが、長くなりそうなので、記事を分けることにした。

というわけで、後編をお楽しみに。



つづく

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