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夢見ナナの思春期日記

私の名前は「歌夢ナナ」です。魔法が使えます。

ある日、魔物が街に攻めてきました。ロケット弾とか機関銃で友人達を沢山殺しました。血まみれの隣人、足を失った老人、破壊された公園、孤児。私は悔しい、でも私の魔法は非戦闘タイプ、音楽の魔法です。

悲しみを量子ピアノの即興演奏で歌う。人生って何なんだろう、私は恋がしたいお年頃。大好きな人を抱きしめたい、大好きな人って誰のことなのかわからないのだけど。

学校や仕事で真面目におとなしくしてれば人生は昨日まで安泰でした。今日は違う。告白したい、狂いそうなくらい愛したいよ、美しい少女の瞳の少年と永久の春風吹くシャングリラの丘。魔物に破壊される美しいキョウキエトフの街。辛くて死にたい。でももうそれって許されないの、私の大好きな友達から軽蔑されたくない。だから死にたい、死にたい、っていう気もちを量子ピアノで歌う。

次の日、私はレイプされる夢を見た。バナナは半熟だったがミキサーでジュースにしてみた、あんまり美味しくない飲み物が出来た。魔物の進行は加速的に、街は汚染されていく。

次の日、私は天使になった。音楽の真理がわかったのだ。永遠の処女のような和声と、古代ギリシャの賢人達の数学的美に満ちたポリフォニー、私の実存と集団的無意識の叫び。天界への階段が見えてきた。上昇する身体。

天使は皆美しい、私は女性として美少女をプラトニックに愛したい。大人な子供を愛する大人な子供を観測する思春期拗らせの性の定石がわからない悲しい馬鹿な賢者のむき出しの愛、好きと叫びたい。でも恥ずかしいので魔法の歌をひたすら量子ピアノで歌う。

死にたくない。死にたくないけど交わり合いたくない、そんなグロいことはしたくない、観念的な絶頂を音楽で、あなたに伝えたい。あなたはどこにいるのですか?あなたに会えないかもしれない。会いたくないのかもしれない。でもあなたに触れたい。でも指先だけ。私の音楽を聴いて。

永い眠りのあと、街は焦土となっていた。私の魔法は無意味だったの?サイレース飲もう。甘い眠りの中、夢の中で私にとって世界でももっとも悲しくて美しいメロディーで世界は救われた。「ナナ」のことが好きです、「ナナ」の宇宙が好きです←みたいな幻聴が聞こえてきて、涙が止まらない。一人で歌いたくない。寂しい、みんなが大好きだ、みんなと同じでありたい、だから私が大好きな私の歌はみんな、あなた、好きであってくれ。お願いします。

自殺してみようかな、それともあなたに告白してみようかな、それとも諦めようかな。でもその勇気はない、悲しい歌を歌い続ける。

魔物に壊された街は、本当に美しかった。あなたを愛してる私の気持ちも美しかった。でもいつか私も死ぬ。来世ってあるのかな。音楽は体系的な学問ではない、情景だ、タイムカプセルだ、思想の確かめ合いだ。でも、真摯に向き合うには、既存の理論体系に敬意を示した方がいいと思う。私の魔法は私が病んで、恋をして、切ない気持ちを愛して、数学や情報科学や哲学を知り、力強くなった。

魔物に核融合アタックを加え、電子パルスでDDoS、デジタルフォレンジック、ダークウェブ、Apach○へのゼロデイアタック、魔物たちも人間だということがわかった。魔物も愛したい。

私は好きを探していて、魔物も好きになりたい、永遠の美少女を愛したい。自分を愛したい。

次の日、夢の中で私は択捉島にいた。辺り一面、花畑、全てがコミュニスト的反復と高揚、美しいダメな二カ国の哀愁。択捉島で影の少女がいた。その子のことが好きかもしれない、でも幼すぎる、私は大人が好きだ。

サイレースをカモメに食わしてみた。変な動きで飛んでいた。

空は緑、私はピンク、あなたは透明、キスしたいし、抱きしめたい、でも交わりたくない。死にたいくらい好きだけど、あなたは誰?寂しいよ。このまま死にたくないよ。

壁を殴ってみた。穴が空いた。穴からは銀河が見えた。なんだか解放された。日傘をさした中年の女性が微笑んでいる。

魔物を殺さないといけないのか。魔物にも人生はある。でも魔物は友人を殺す。魔物を殺さないといけないのか、銃弾でハートを打つ。安らかに死んでくれ。じゃないと私は泣いてしまう。あなたのことも愛せないかも。

5年後、私はイルクーツクに行きたい。あの国が好きだ。5年後、オデッサに行きたい。美しい街らしい。

あなたの胸を触ってみた。殴られた。

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