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ライフワークの転機① - 僕たちは世界を変えることができない -

2011年公開の向井理主演映画
「僕たちは世界を変えることができない。 
but we wanna build a school in cambodia.」。

総合診療医で、認定NPO法人理事長である葉田甲太さんの学生時代の実話をもとにした映画。葉田さんが150万円を集めることができればカンボジアに学校を建てることができることを知りチャリティーイベントに精を出す話で、この作品との出逢いが、私のボランティアや海外への関心に大きな影響を与えることとなった。

この作品から学んだことはたくさんあるが、一番自分のなかの既存概念を壊してくれたのは「クラブイベントでの募金」だった。
当時14歳だったが、中学生の私が思いつく「募金活動」といったら街頭募金一択だった。母の職場のボランティアも、校内での募金も手段として街頭募金しか採っていなかったし、そもそも募金は相手にリターンはなくあくまで人の「善意」の結果でしかないと思い込んでいたから他の方法なんて考えもしなかった。

葉田さんたちも初めはキャンパス内での街頭募金やビラ配りから始めたが、偽善活動と揶揄されてばかりで資金も集まらなければ時間だけ浪費するような状況だった。
それは当時の私の「ボランティア」のイメージそのままだった。人の善意に訴えかけるだけでは資金を募るのは難しいし、貧困国の様子や東日本大地震はじめ国内の震災についても御涙頂戴のエピソードとして取り上げられはするものの結局協力する、行動する人はほんの僅か。「困っている人に手を差し伸べる」ことをひとつのコンテンツとしてしか見ていない人が多いことを14歳の視点からも感じていた。震災が起きた直後だけ被災地を労わる、ACやユニセフのCMが流れた時だけ心を痛める、だから私はボランティアが嫌いだったけれど、結局自分もやっていることは何ら変わりないことにもまた悶々としていた。

作中では、合コンで知り合った本田(松坂桃李)の提案で夜のクラブでのナンパ、学校でのビラ配りなどで人集めに奔走してチャリティーイベントを成功させている。
それまでの正攻法ではないやり方が斬新で、観ていてとてもワクワクした。多分これが私が地方創生というテーマを掲げたときに迷わずイベントの企画に舵を切ったきっかけだと思う。

そして何よりボランティアに対して「本人たちが楽しんでいる」ことに考えさせられた。文字に起こすと単純に思えてしまうが、今でもこのスタンスはとてもとても大切にしている。
約10年の国内外のボランティアを通して、結局「人のために」という気持ちだけでは物事は続かないのだと気づいた。これはボランティアに限らず万事に対しての私の持論だが、「誰かのために」というだけで起こす行動は結局一方的なエゴイズムでしかない。

例えばカンボジアに小学校を建てることも、表向きは発展途上国の教育環境を整えるという”人(子ども)のため”であるが、その場合果たして現地の子どもが本当に小学校に通いたいと思っているか、教育機関が必要と感じているかは切り離されて考えられることが多い。
本当に必要と感じているのであれば動くべきは外国人である私たちではなく現地の自治体なのではないか、学校を建てたとして子どもを一家の労働力として重宝している環境下で勉学に費やす時間は与えられるのか、教員の人員確保や教育水準は足りているのか、継続的な運営維持費はどうするのか等々、実際問題は山ほどある。発展途上国の子どもは満足な教育を受けられていない、だから学校を建てようというのは安直且つ支援側の勝手な独り善がりな思考であるが、かと言って全ての課題を解決できるわけでもなければ逐一ヒアリングすることも現実的ではない。

だから私は”ボランティア”に括られる活動をするとき「人のために」という考え方を捨てようと思った。結局、私たちが何を求められていて何を与えることができて何をしたら喜ばれるかはその時々で異なるから、私には正解が分からない。
また、支援を受ける側も、支援者に自分の身を削ってまで支援をしてくれとは考えていないと思う。大半のボランティアはそこまで含めて全てエゴイズムが主軸になると思っている。私は全て自分の経験値のために、自分がその目で見ておきたいから現地の惨状を見に足を運ぶ。そして必ずしも慈善活動は「人のため」だけに取り組まなくても良いものだと、作品に教えてもらった。ナイトクラブのイベントで収益を上げてもいいし、集客にナンパの手法を使ってもいい。自分たちが楽しくて、能動的に動いた結果が誰かの役に立てばwin-winだなと思った。そのほうが結果的に長続きする。

私にボランティアの在り方を、スタンスを教えてくれたのは間違いなくこの作品だった。
私はこの作品と出逢った3年後の高校2年生のときに実際にカンボジアに足を運んだ。また、葉田さんの著書を通してウガンダの国際支援に勤しむみふゆちゃん、現地のHIV母子感染のドキュメンタリーを葉田さんと一緒に制作していた小川光一さん(元々東日本大地震の支援関係でメッセージ頂いた)とも出逢うことができた。
本当に不思議なご縁を恵んでくれた作品なので、みふゆちゃんと小川さんとの繋がりについても改めて書きたい。

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