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私から君へ 2

友よ、返事遅くなってすまない。
私から唐突に手紙を出しておいて、貰った返事にこんなに返さずいるとは無礼者だ。
ビシッと厳しく叱っておくから安心してくれ。


反省の色もこの辺りにして近況報告をさせてもらうと、今日引っ越した。
2年間暮らした梅ヶ丘を離れ、門前仲町という街に移った。
東京都内というのは、十数キロ東に移動するだけでこんなに色が違うものなのだな。

これまで暮らした西側にはやはり、私を含むようなクリエイティブな仕事に取り組んでいる人が多いように感じる。
それに対して東側の街並みからは、数年後数十年後を設計して生きる人間特有の生活感を感じる。
なんだか、また私の東京生活が一風変わる予感がする。


手紙の返事で君は私に、顔が似ていることや出身地、すぐ世間の物事に気に食わんと噛み付く私に「京都の狂犬」ならぬ「京都の狂狐」という呼び名をくれたな。
最近の私の小さな悩みに関わるので少し書かせてもらう。

東京に来て3年。都内在住の日本人の7割が地方人と言われるこの町では、名前や仕事の次に出身地の話になることがお決まりだろう。
そんな時、やはり「京都」というのはブランド力があるのだと、周りの反応から常々感じる。

そこに私の顔立ちや話し方、キャラクターや父親の仕事も相まって「京都いいですね」と「京都っぽいですね」のオンパレードを浴びる毎日だ。
高校卒業までの18年を京都で暮らしたが、住んでいる頃は「京都が良い」なんで一度も思わなかった。
小中高と事あるごとに課外授業と名目を立て寺を巡るスタンプラリーをやらされ、歴史も風情もわからぬ私は歴史の押し付けをしてくる京都を憎むばかりであった。
賑やかな隣の都会町大阪や神戸の方がよっぽど魅力的であった。
しかし歳を多少重ね、東京へ出てくると知った。「どうやら京都はブランド力が高い」

その一方で私はそもそも「出身地でイキる奴はダサい」と思っている。

自分の中にジワジワと蓄積された「誇れる産まれ」という認識と、「出身地でイキる奴はダサい」がぶつかり合って、最近出身地を聞かれて答える時、変な顔になる。

これ、どうすればいい。



ヒートテックの件、君の断りは残念だがまあよい。1つ学びになった。
長いものに巻かれるとはよく言ったものだ。
巻かれる人が増えるたび、その長さは増し、もっと巻き取られる人は増える。
大企業とはこうして出来上がるんであろう。




出会いは早かったが、中学で会うまでの君の人柄をしっかりとは覚えていないから、なんだか幼少期の君の話は新鮮だった。
銀座で飯など食うな。
私は見栄と映えで出来た空間が嫌いだ。
表参道やら銀座やら、あんな居心地の悪い街はない。

ちなみに私は心残りな後悔話はない。
やらなかった後悔はあれど、やって後悔はない人生を歩んだつもりである。

少し長く間が空いてしまった。君も募る話があるだろう。
お返事楽しみにしている。

東の新参者

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