「アフリカは信頼がない」みたいなフレーズを聞いたことがある人がいるかもしれない。ナイジェリアで暮らしていると、日本人やアジア人（や欧米人）の考え方はある程度似ている気がするけど、ナイジェリア人は心の底から違うなと思う。そして、なんでこんなにも違うのか？と常日頃思っていた。でもその謎が解けた気がする。

私は先月ナイジェリア人5人と1週間、ナイジェリアからコートジボワールまで陸路で一緒に旅行した。一緒に旅行するとなると多くの時間を共に過ごすから、生い立ちとか深い話をしたりするのかなと思った。

しかし、それがビックリするほどなかった。一緒に旅行した友達は米国系メディア所属のジャーナリスト、プライベートエクイティファンド勤務、アメリカの企業のエンジニア、スタートアップで働く人だから、超エリートだし働き方はスタートアップに染まっている。そんな彼らでも、深い話をなぜかしないのである。

ナイジェリアにはYoruba Demonという言葉がある。その意味は（人によって解釈違うが）ナイジェリアのYoruba族の男は女性をお姫様のように扱い、女性は彼しかいない！と思うのに、その男性には他にも複数人女性がいるとか実は結婚して子供もいた、みたいなタイプの男を意味する。そんな言葉があるぐらい、男女問わずこの国は浮気にあふれている。

もちろん日本にも浮気をする人は多いと思うが、日本では一応浮気自体はタブー、ダメとされている。が、ナイジェリアでは（特にラゴス）息を吸うように浮気をしている人が男女ともにうじゃうじゃいて、悪いとも思っていない。（もちろん宗教の関係で結婚するまで性行為をしないタイプも有）

この浮気カルチャーの理由は、一夫多妻制が残ってるから？とか思うかもしれないけど、私的にはそうじゃない。

ナイジェリアは生きていくのがほんとに大変。エリート友達と話していても、「Life is hard」というフレーズをよく耳にする。貧困で暮らす人はいっぱいいるし、今私が一緒に働いている売れっ子YouTuberのメンターから「実は彼女にはいつも「金をくれ」とせびられていたよ、人気になる前は本当に貧乏だったから、たまに金とか服とかあげてたけどね」と言われた。

だから、恋愛でも仕事でも、一人の人間や組織に依存すると、その人に何かが起きたら、裏切られたら、彼らは本当に何もなくなってしまう。生きていけなくなってしまう。国からの公共サービスなんてあるわけないんだから、自分で生き抜かないといけない。だから浮気をすることで複数の人と関係を持って保険をかけるのが当たり前だし、副業も当たり前だし、自分をさらけ出して弱い部分を見せたりすると、悪用される可能性があるから中々さらけださないのである。

つまり、そう、この国には信頼がない。旅行にいっても、仲良くなったと思っていたのに深い話とかしないし、特に自分の弱い部分は本当に見せないのは、国全体に蔓延る信頼のなさに所以していたんだなと思った。

私はナイジェリアでナイトライフを楽しんで、一緒にいつも遊ぶ友達もいるけど、回を重ねて会うごとにとても親密になる、ってことはそこまでない。というか、クラブやレストランにいっても、音楽がううるさすぎてろくに話せないし、別に皆そこまで話そうともしていない。スマホをいじるか、踊るか。

ただ、この信頼のなさはスタートアップカルチャーによって少しずつ改善はされていると思う。私は最近ナイジェリアで売れっ子YouTuberちゃんと一緒に働いているからエンタメの世界に足を踏み入れており、現在は来月開催予定のイベントのためのスポンサー集めに奔走している。

スポンサー候補にアタックするために、スタートアップ界隈の友達に「○○の会社と繋がってる？連絡先教えてくれない？」というと、「この人に連絡しな！」と快く連絡先を教えてくれる。それに、会社のトップレベルの人やHead of marketingなど、その人と繋がりたかったの！！！！！という責任者に繋いでくれるし、事前に話も通してくれる。

でも、エンタメ界隈の人経由で「○○の会社の連絡先教えてくれない？」と聞くと「連絡先を教えたら何をくれるんだ？」と、すべてにおいて金を請求してくる。人に気前よく何かをして、長期的に何かめぐってきたらいいや！という思想がない。（そしてさらに面白いのが、ドリンク会社やアルコール会社はお金を直接イベント会社にあげることはせず、照明代とか会場代とかを払うという形式をとる）

私は、スタートアップ界隈からエンタメ界隈に入り、良いマインドセットで長期的な視点で考えるナイジェリアの良い部分ばかりをみてきた。私が今後のエンタメ業界との関わり方は今も模索中だが、少なくとも「エンタメ業界に信頼を提供する」という事は、地道にやっていくことで、できるんじゃないかなと思い始めてきた。という私の方向性は置いといて、、、

信頼がない国に住むと、日本にいた時にいたような「親友」が作りにくい。なんでも話せて、話してくれる、自分の心の気持ちをさらけ出せる友達があんまりいない。言語とかの問題じゃなくて、心の問題で。そして、残念なことに、これが理由でナイジェリアを去る人・去ろうとしている外国人も見てきている。ただ私は、この国で少なからず存在する、信頼できて心をさらけ出せる人を見つけていって、本当に安心できる居場所を作りたいと思う。このナイジェリアという国が大好きでこの国に出来るだけ長くいたいから。