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弱虫

   弱虫


ほんの僅かな美しい時計の中で、
僕たちは時を刻み、

いろんなことを心配しながら、
暮らしているようでした。

新たな時代の幕開けのように、
どこかの町でお祭りが開かれていても、

そこへ行くお金の余裕は無かったので、
庭で渡したさお竹に、洗濯物を掛けて、

そのままぶら下がって、
「折れるから止めて、もう買えないよ。

物を大切に使って」と叱られていた。
お金を増やす辞典を貰ったが、

中に入っていた
富くじの当たりはずれだけ確認して、

そのままになっていた。
「今日は一つも

良いものが出来なかった」
と泣くような日もあって、

そんな時彼女は、
「平気平気」

と何度も背中を
とんとんと撫でたりしてくれて、

僕は自分を弱虫だと思っていました。
ひどい時には、

「今夜会いに行く」と言って、
行かないどころか、

僕は誰とも連絡を取らず、
図書館を往復して日々を過ごした。

ある日僕は、帰りの電車の中で、
「良い詩を作りたいだけんだなんだ」

と思うと、涙がこぼれた。
するとおばあさんが近寄ってきて、

「それならもうここに来ないで、
じっとして、詩作りに集中しなさい。

それでようやくわたしは、
こんなに涙をこぼすお前を気にせず、

本を読めるよ」と言いました。
「でも出来たら、

わたしが本を読んでいても声を掛けて、
屋上でその詩を聴かせておくれ。

楽しみにしているよ」。

良い文章を作れるように、 作るために、 大切に使わせて頂きたいと思います。