あおいつくえ

晴れた公園のベンチに座り、 おにぎりやサンドウィッチを食べた後、 お茶を飲みながら、 …

あおいつくえ

晴れた公園のベンチに座り、 おにぎりやサンドウィッチを食べた後、 お茶を飲みながら、 読めるようなものを、 作りたいと思います。 その時、 前の噴水の水が上がり、 虹が架かったら、 今、 読んでいた僕の文章なんて、 忘れていいよ。

最近の記事

飛球

   飛球 「明日は君が四番を打つといいよ」 と酒屋さんのおじさんは言いました。 うちの四番が 明日から旅行に行くのです。 とは言っても、 神社の近くの 公園でやっている野球の事です。 僕の四番は、 近頃よく言われているように、 四番ではなく 四番目の打者ということです。 でもみんなを少しぐらい驚かせてやる。 これから帰って素振りをしようと、 空き地を見つけると ボールを空高く放り、 飛球を捕る練習をしてから帰りました。 大学のために、 この町に来たお姉さん

    • 夜露

         夜露 夜露に濡れた月を、佇んで眺めている。 小枝を拾い、 砂にその月の輪郭を絵描いて、 小枝を濡らして、 その輪郭をもう一度なぞる。 陰影をつけていると、その動作が、 手招きに見えたようで、 おばけがやってくる。僕は 「今晩は」 と会釈をするために立ち上がると、 「これが今まで投稿した 君の全部の作品です」と広げました。 「どこが良くなかったか、 これから添削しようと思う」 とおばけが言うと、僕は今まで, 詩を習ったりしたことが無く、 一人きりで作って

      • 地図

           地図 言葉は僕と、 桜の木の下で 待ち合わせをしていたらしく、 豪華なお菓子の詰め合わせのような 物語を聞いた後、 僕は彼女に、 「途中まで、一緒に行っても良い?」 と聞くと、 「うん」と言う。 時々あえてペンを止めて、 ゆっくりゆっくり紡ぐ旅行記のように、 古い町の地図の看板に、 「たぶんここが僕たちがいる場所」 と僕は使い終えた切符を置きました。 彼女は、 「この地図では、 わたしの行きたい場所は分からない」 と言う。 僕はポケットに切符をしまう

        • 夜空

             夜空 「今日の空のような青かい」 「いいえ。もっと紺です」 「それでは この衣装はこの色に染めますね」 「お願いします。 あの役に合う色だと思います」 「あの日」 「公園から見えた」 「東京タワー」 「どんな夜空で」 「僕たちは何を話しながら 歩いていたのだろう」 「回廊を通り抜けて 見上げたいちばん星を、 希望の色に塗り変えよう」 「何色に?」 「何色だろう」 「夜露を吸い込んだお麩は?」 「何色だろう」 「君は手帳を持っている?」 「それはどん

             畑 お昼休憩のために、一旦作業を止めて、 畑から上がって来て、 僕は着替えるために上着を脱いだ。 筋肉だと思った。 短期間の畑仕事を頂いて、 まだ二週間ぐらいしか 経っていないけれど、 筋肉だと思った。広がる畑は美しく、 それを熟語で表したいと 考えながら水を飲みお弁当を食べ、 また畑へ下りて行く。その熟語を、 一作目の詩集の題名にしようかと思う。     

          つくし

             つくし 時計が鳴る前に止めて、 僕は起きてすぐにごはんを食べ 学校に着いて、 放送委員の同級生に会うと、 「何かあなたに賞を上げたいんだ」 と言いました。 同級生は、 「いいよいいよ何も要らないよ。 でもそのように言われてみると、 聴いて頂きたい歌があるなあ」 と言いました。 けれど僕たちだけで 使うわけにはいかないのです。 「何々先生お電話です」 「お弁当や パンの販売が始まりました」など、 いろいろ毎日、 放送することがあるからです。 それじゃあ

          かるた取り

             かるた取り 扇風機を消して窓を開けた四畳半、 西日を浴びて本を読む。 天井からの電球は、 風が吹く度 うなづくように動きました。 じいちゃんのあぐら、あいうえお。 うさぎと僕は、 かるた取りをお願いしました。 ほしいもたべて、かきくけこ。 ぶんぼうぐやさんからのかえりみち、 さしすせそ、たちつてと。 教科書に僕が授業中絵描いた あなたの似顔絵は、 数ページの他は、 いつも笑っていました。

          快く

            快く あー今日はよい詩ができた。 お茶を一杯淹れて、 外を眺めようかしら。 「僕は君を信用しているし、 信用していない」 もうすぐ夢が叶うと言ってごらん。 「何だいそりゃ」 わあーあ。 今日はちょっとだけよい詩ができた。 もう一杯お茶を淹れて、 窓を開けて風に触れようかしら。 「親友だし親友じゃない」 もうすぐ小糠雨が降るので、 冬に着ていた紺色の絣の着物で、 金色の星を撫でてごらん。 「何何何」 リスが風邪をひいている。 明かりを消してよこになり、

          馬の背中

             馬の背中 どちらにしようかどちらにしようかと いろいろ迷った夜の次の朝、 わたしは馬の背に乗り 風船を追い掛けました。 わたしはあなたのようにはなれなくて、 わたしはわたしであなたではない。 わたしって何だろう。 これは孤独とは 少し違うと思うのだけれど、 この気持ちは何なんだろう。 花のなかで草のうえで、 雲のすきまで川のそばで、 小石を拾って、 大きな木に寄り掛かって座る。 歌い踊ってまた明日。 たんぽぽ笑って風に吹かれ、 星々ぐるりとまわって 陽

          静寂

             静寂 外套に襟巻き姿の女性は、 まだ辺りは朝の静寂の中、 玄関外から 小さく僕の名前を呼びました。 僕はゆっくり布団を出ました。 けれど飛び石を進むように廊下を行く。 彼女は寒い所から、 僕は布団の中から来たというのに、 顔を合わせると、 何を言っていいか分からなかった。 今になって彼女は、 それ程の話題でもないような 気がしていました。 僕だって、怖い夢を見ていたから、 起こしてくれて有難うと伝えるには、 まだ少し後だと思っていました。 「頂いたお茶

          一編

             一編 君は作家になり、 僕は売れない詩人になった。 「君の人気は大変なものだね」 「月夜の晩に、少し歩いて来ただけで、 たくさんの人が振り向いていたよ」 「君は本をたくさん貸してくれた」 「予報通りなら、 どこかで温かいものを食べて、 朝雨が止んだら行こう。雨露で、 木々や果実が輝いていれば、 君の名前入り原稿用紙もきらきら光り、 僕を嫉妬させるだろう」 「僕の詩を、 ねだったりせがんだりする 編集者さんや読者さんは一人もいない。 近頃は、 僕の詩の

          弱虫

             弱虫 ほんの僅かな美しい時計の中で、 僕たちは時を刻み、 いろんなことを心配しながら、 暮らしているようでした。 新たな時代の幕開けのように、 どこかの町でお祭りが開かれていても、 そこへ行くお金の余裕は無かったので、 庭で渡したさお竹に、洗濯物を掛けて、 そのままぶら下がって、 「折れるから止めて、もう買えないよ。 物を大切に使って」と叱られていた。 お金を増やす辞典を貰ったが、 中に入っていた 富くじの当たりはずれだけ確認して、 そのままになっていた

          弧舟

             弧舟 ここからあの汽船を見ていても、 どこの国々を 巡って来たのかはわからないけれど、 あの船やあの船を見ていて、 同じ色の電車が、 この町にあったとして、 どちらたくさんの本を 運んでいるのかなあと想像すると、 この穏やかな海で、 釣り糸を垂らして時を過ごす、 あの人の弧舟です。

             朝 ベッドに座ってコーヒーを飲んでいる。 風邪は治ったみたいだ。 咳は出ない朝はまだ来ない。 去った不安はありがたい。 過ぎ去った不安はもっとありがたい。 もっともっとありがたいのは、 僕は帽子が風で飛ばないように、 前を進んでいきたい。

          クレヨン

             クレヨン 畳やふすまにクレヨン口紅使って でんしゃを絵描いて、 外に出掛けてどろんこあそび。 夕方帰って来て、 「あっ母ちゃんに叱られる」 と思ったけれど、 母ちゃん、 「これ上手ねえ」と言いました。 だから僕は、 「母ちゃん、ごめんなさい」 と言いました。 「今度は駄目よお」 と母ちゃん言いました。 はじめて作った詩を先生が、 「上手いねえ」とある日、 褒めて下さった。 僕は売れない詩人になりました。 詩に出会えて良かったと思いました。

          口笛

             口笛 少し風邪気味で、 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて。 友達と遊べない午後は、 口笛でも吹いて、横になり、 足を組んで、 何か歌でも 唄ってみようかと思ったけれど、 口笛でも吹いた。