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【小説】文明大火 #ネムキリスペクト

 そこは世界のすべてだった。王子の証である海水晶の嵌まった金の腕輪を光らせて、彼は世界のすべてを持って生まれた訳だった。なだらかな額は叡智を秘め、すぐれてかたちのよい眉と、雨の日の海のような深い眼は、彼の父の国のすべての人間に愛された。
 そこは世界のすべてだった。広大な陸地だ。一周するのに七日間かかる。海水晶の採掘所を中心にして、静かな深い森。そこから流れ出る清い川は、七つの村落を緩やかにはしって、さいはては天と落ち合うまで続く海へとそそぐ。海は透明で、眼の届く限りはガラスのように砂地や色とりどりの魚の群れが透けて見えるが、漁師たちが氷簾と呼ぶあたりから急に深くなる。人々は海で魚を獲り、陸地で野菜を育てて暮らしていた。
 そのすべてが世界で、世界は彼のものだったのである。彼はいつも気だるげに、やや不満そうに微かに唇をまげ、大臣たちや両親にまで、子供に言って含めるような物言いをした。
 たとえば、子供は多かれ少なかれ大人とは偉いものだと思っていて、自分の親くらいに歳をとれば、今の自分とは比較にならぬほど立派な人物に成っていることを漠然と予期するものだ。それが、たとえば大人の眼の奥にふと汚い欲がよぎる。信用していた大人が、そこに三歳の自分を想起してしまうような振る舞いをする。王子の周りには大人ばかりいたから、彼はただそういう大人個人を嫌うというよりも、人間というものはただ歳をとったって変われないものなのだという真理を悟る方向へと向かった。彼にはこの世界のすべてが、子供の遊戯のように思われた。人生は、他人のも自分のも、同じところをぐるぐる回っていると知りながら、一向そこから離れることを知らぬ、一種気ちがいじみた、幼児性の熱中に思われたのだ。時折彼は日記にこぼした、「人生がこんなにもつまらなく、何にもならなくて、何をしたらどういう結果が出、何をしなければどういうことになるか、その答えはもう既に歴史がすべて揃え切っているというのに、それでもなお同じことを繰り返している僕たち人間は、いったい何が楽しくて生きているのだったか。否、何が楽しいなどという話ではなく、人間が生きて同じことを繰り返すのは、そのことを知るのがたいていは死ぬ間際だからであろう」。…しかし、彼の人生はまだ始まってもいなかった!

 それはある日のことだった。遠くの海に、以前にはなかった小さな影が現れた。初めは気のせいかとも思われたが、それは次第に大きくなり、ついにはその姿を天と海の境にはっきりと示しはじめた。神話の化け物がこの世の終末を告げに来たのだと言う者もあった。
 それは、七つの村落をも一時に踏みつぶしてしまうかとも思われる、実に巨大な船だった。ぴかぴかと陽に光る見たこともないほど滑らかな船体と、けばけばしい色、たくさん突き出ている棒や、風を孕んで大きく膨らんだ帆布のせいで、それは本当に神話の怪物じみていた。陸地の周りは海が浅すぎるので、その船がボートを下ろして陸地に近づいてくるのを、人々はぽかんと口をあけて見ていた。
 王が彼らを迎えた。ボートに乗っていたのは、人とも思われないような派手な格好をした、けれど二本足で立っていて、顔には眼と鼻と口が付いている、人間たちだった。何かしきりにまくし立てているようだった。王子はそれを見て顔を顰めた。この人間たちを見ていると、何か、人の寄り付かないじめじめした暗い洞穴で、一匹のウサギの腐乱した死骸で数週間食いつないでいそうな、ぬめぬめした青灰いろの肌をもつ生き物をうっかり見てしまったような、そういう種類の嫌悪感が喉元にせり上がってくるのだった。
 月が満ち欠けを何度か繰り返し、彼らと彼らの世界について、少しずつ知識が得られた。王子は、彼らの言葉を理解するにつれて、この異郷人たちが、はじめ思ったような下等生物ではなくて、それどころか、自分たちよりはるかに多くのことを知ってもおり、またなしてもいるということを悟って愕然とした。焼けつくような劣等感が彼に取り憑き日夜苛んだ。結局、彼は世界のすべてを持ってなどいなかったのだ、はじめから!彼は今までの自分を思って頭を掻きむしった。これまでの自分にナイフを刺して引き裂き、焼き捨ててしまいたくなった。この小さな、小さな陸地は、彼らの国の遥か東方で波に洗われている、ひとつの小島に過ぎなかった。
 劣等感が彼の背を始終焼くように、彼は眼の開いている限り勉強をした。かの地の文字を習い、書物を読み、科学や歴史を頭に叩き入れた。そうしている間は、苦しみを忘れられた。自分は自分を正当に罰しているという気がした。そう思えている間は楽だった。
 夜も、灯りをつけて本を読む。王子の部屋の窓からは海が望めた。夜の海は何か正体の分からない巨大な生き物のように、のたりのたりとうねりながら、涼し気でいて重厚な波の音を昼間より一層響かせるようだった。
 蝋燭。それはかの地の人々の発明のひとつだった。なんでも、蜜蜂という虫のつくる蜜蝋を固めて、火を灯して使うというのだ。それはなめらかでとっくりと重く、口に入れればさっくりと嚙み切れて、歯に纏いつくような重い弾力の中で、じんわりと甘い汁が出そうだった。鼻に近づければほのかに、鼻腔にしっとりと充溢するような甘い薫りが立って、そのまま窒息してしまいそうだった。それはむせかえるほどに暴力的な生の塊だった。かの地の船の船長が、蝋燭を知らぬ王子を面白がって土産にとくれたのだ。海水晶と貝殻を簡単にちりばめた小さな卓上飾りのそばに置いた蝋燭は、いかにも異物という感じがした。

 その夜は異郷の地の外交官を交えた晩餐会が催されていた。蓬莱に生えているという玉の木のミニチュアのような、それは燭台というらしかったが、その枝分かれした先端の一つ一つに蝋燭が立ったものをいくつも卓の上に据えて、相変わらず派手な服を着こんだ外交官たち、島の王と妃、王子、左大臣とその娘などがそれを囲んだ。若い金髪の外交官は、始終左大臣の娘にちらちらと眼を走らせていた。王子はそれを煩わしく思った。
 はじめて飲んだ酒がまわっていたのかもしれなかった。何一つ思い通りにならないから、せめてこれくらいうまくいけばいい。食卓の下でそっと腕輪を外し、何食わぬ顔をして彼は、自分の左隣に置かれた鞄の中にそれを忍び込ませた。子どものように満足しきって、それからは陽気に振舞った。
 酒と人々の熱気のせいで、全身が火照っていた。自室へ戻る途中の壁が近づいたり遠ざかったりするような気がした。酒気からくる日陰の陽気さが手伝って、彼は服を脱いで小間使いに手渡しながら、得意になって言った。
「僕、さっきの晩餐会で腕輪を失くしてしまったみたいだ」
 血相を変えて慌てる小間使いが滑稽で、彼は声をあげて笑った。
「なに、じきに戻ってくるさ。誰が持っているかは知っているしね」
 一向要領を得ない小間使いの顔を見てもう一度笑い、彼は布団に身を投げた。すぐに眠りに沈みこんだ。
 翌朝、彼は庭園の椅子に脚を投げ出して座り、本を読んでいた。陽を浴びて真っ白に光る紙に浮く黒い文字を追うと眼が痛んだ。木々の若々しい緑が、黄金いろの液体を宿したようにぺかぺかと光った。蝶の群がる花の群生が、いかにも生き物じみていて、自然の放恣という字句を思い起こさせた。彼は何故か部屋に置いてある蝋燭を連想した。
 急に木々の間から、柔らかな青色がひょいとのぞいた。
「あら、ここにいらしたの」
 若い女の声が陽光と同じくらい頭蓋に響いて、彼は思わず顔を顰めた。それを見て彼女は笑った。王子にこんな口のききかたをできるのは、この島で左大臣の娘だけだった。青いすっきりとした、ネモフィラに似たドレスを身に纏い、頭に白い造花を挿した彼女は、そんな笑い方さえしなければ、かの地の若い外交官の言ったとおり、たしかに美しいと王子は思った。
「お酒が残っているのではなくて?さあ、そんなに酔っ払っていたから、私の鞄に間違って腕輪をお入れになったのよ。そら」
 彼女は急に腕を軽く振った。腕輪は彼女の手を離れ、陽光の中に燦然ときらめきの軌跡を残して彼の手の中に収まった。彼は光の残像を眼にとどめようとして天を見やった。
「君が持っていたのか。部屋へ帰ったらこれが無いものだから、探していたんだよ。わざわざ届けに来てくれて有難う」
 彼は虚空を見つめたまま、手の中で意味なく腕輪をひっくり返しながら言った。
「よかったら入って、茶でも飲んでいかないか。ゆうべあのひとたちに手土産にと貰った菓子があるんだ」
「遠慮しておくわ。多分これから、同じものを出されるでしょうから」
 彼はやっと視線を地表に戻した。彼女の柔らかな髪に付いた花飾りが、ゆうべ晩餐会の後に、あの外交官が手ずから挿してやったものだと、急に気が付いた。彼は弾かれたように立ち上がって、大股で彼女に近づき、その髪から白い造花を取った。
「これは無いほうが良いよ。ここの花じゃないから、君には似合わない」
 彼は一息に言い切った。青いドレスで正装した彼女は、長い睫毛に縁どられた眼を僅かに見開いた。それだけで薫香がたつような錯覚を覚えて眩暈がした。
「あのひとは似合うと言ったわ。私のように美しいひとは見たことがないとも」
「どうだか。お世辞さそんなの。あのひとが何と言おうと、僕には関係ないね。さあ、早く行って来たらどうだい。腕輪をありがとう」
 彼はいきなり踵を返して本を置いた椅子まで戻り、脚を組んで座った。彼女は先程と同じ場所に立っていて、やっと聞こえるくらいの声で、
「うそつき」
 青いドレスの裾を揺らして木々の間に消えていった。
 王子はそそくさと部屋へ帰って本の続きを読んだ。そのうち日が暮れる。小さな燭台に蝋燭を据えて火をつけた。薄暗い部屋の中で、一瞬甘い薫りを放って、灯りは赫赫と燃え上がり、彼は驚いて眼を閉じた。残像がぼうっと瞼の裏に燃えた。
 嘘つきという言葉が何を指していたのかと、彼は暫くしてから考えだした。だって、悔しいことに、彼はさっき噓しかついていなかった。


 一隻目の船が帰り、二隻目の船がやがてやってきた。沢山の物品が持ち込まれた。王家の為に、かの地の人間たちと同じような、派手な服が誂えられた。こってりと隙間なく精緻な模様の張り巡らされた時計、ねじを巻くととろけるように甘美な音で耳に際限なく快楽を浴びせかけるオルゴール、眩暈をおこしそうに甘く芳醇な葡萄酒、大量の書物、嗅ぎ煙草、紅茶、眼にも眩しい金銀に光り輝く宝飾品。かの地の王の直々の使者がやってきて王に謁見し、これらの品々を献上した。今回開かれた晩餐会では、かの地の食物も使って、かの地の料理人が腕を振るった。
 王子は食事に手をつけたくなかった。異郷のものを食べてはならない。神話の記憶は遺伝子に刻まれた抵抗となって吐き気を引き起こした。それでなくとも、今日は一日中、破廉恥でいっそ淫蕩なまでの美を次々と浴びせかけられて参っていたのだ。王も妃も、眼を回しかけながら、素晴らしい、素敵ですわ、と阿呆のように繰り返していた。王子はそんな父母を嫌悪した。誂えられた派手な服を着るのも、嫌な感じがした。品物を献上する使者の、抑揚のない眼の奥の怪しい光も、今回やって来た船員の全体の雰囲気も、なにか、どこか、嫌な感じがした。けれど、そんな感じがなんとなくしたというだけで、彼は何も言わずに服を替えたし、使者のこともすぐに何とも思わなくなった。とにかく、彼は疲れていた。頭に煙が詰まったようだった。ただ、晩餐会の食事だけは、口に入れたくなかった。
 王子はそっと広間を抜け出して露台へ出た。背後に王と王妃の、外交官の冗談に応える高笑いが響いて、彼は顔を顰めた。両親はかの地の言葉を殆ど理解していなかった。外交官との会話はすべて、王子が通訳していたのだ。王と王妃は、誂えられた服を素直に着、出された食事に舌鼓を打って、分かりもしない冗談に笑う。僕もそうすべきだのに、いったい何が、僕の腹の中でこんなに抵抗するのだろうか、と彼は思った。自分たちは世界のことを何も知らず、かの地の人々は世界のことを何でも知っている。彼らと同等になることが、人類から大きく後れをとった僕たちの、まずは、目指すべきところではないのか。
 外は霧雨が降っていて、肌寒かった。夜の海の音は穏やかなのに轟轟と響き、寒々とした畏怖の念を、人々の心に生じさせる。そして、微細な花のように散る雨に包まれて、ひとつの人影がじっと動かずに立っていた。蝋燭の灯りを煌々と湛えた広間に戻る足を彼が止めたのは、ひとえにその人影のせいだった。
 その人は頭巾付きの黒い外套で頭まですっぽりと覆い、肩を丸めて、俯いているようだった。広間の灯りを避けるようにして、じっと、耐え忍ぶように、立っていた。王子はその背中にふと胸を突かれた。
 その時その人影がこちらを振り向いた。その白い顔が広間から漏れる灯りに晒されて、魔法のような一瞬は呆気なく消えた。
「なんだ、こんなところにいたの」
 彼はわざと大きな声を出した。王子の胸には、まだあの「うそつき」の声が燻っていた。彼の幼稚な嘘の、彼女は証人だったわけである。だから、相手がびくりと肩を震わせたことが、彼の心を高揚させた。
「あの金髪のひとが君を捜していたよ。君のお父さんの左大臣を殆ど尋問するみたいにしてね」
「ああ、お願いだから静かにしてよ。ここにいるってわかってしまうわ」
 彼女はさっと王子のそばまで寄り、囁き声で制した。
「いつも思うのだけど、あのひとが付けている匂いってきつすぎるわ。鼻が曲がりそう。きっと私たちより鈍いのね。ああ、ここで暫くやり過ごしてこっそり家へ帰るつもりだったのに、まさかこの露台の付いている広間で宴会が始まるなんて」
「今回は人数が増えたから。聞いていなかったの?」
「ええ聞かないわ。私お腹が空いてしまった」
 王子はそっと露台の端まで寄って、下を覗き込んだ。階ひとつ分下にある庭園は、闇が生えているように見えた。
「僕たち、飛び降りる?」
 彼女も彼の横から下を覗いて身震いした。
「…その服、似合わないわね」
 彼女は急に言った。彼は肩をすくめた。
「なんだか不思議。降られながらずっと考えていたわ。ねえ、あなたって、雨に似ているの…」
 思ったより近くにあった彼女の濡れた眼が、ふと夜の海のように見えたから。彼はもう、自分の幼稚さの証拠のことも、露台から飛び降りることも、晩餐会に戻らねばならないことも、全部忘れて、どうでもよくなってしまった。
 部屋に戻るともう真夜中だった。使いさしの蝋燭に灯りをつけると、甘いような苦いような匂いを漂わせて、あかあかと燃える。遠い異郷の地の、翅のはえた小さな毛むくじゃらの虫たちのいのちが、じゅわりと溶けて燃える。死の匂いだ、と、彼は唐突に思った。熱く、暗く、狭い巣の中で、己がいのちを夢中で注ぎ込んでいるうちに、その蜜のこの上もなく甘美な匂いに、知らないうちに窒息することを思った。彼は暫くぼんやりと座って、腕輪に嵌まった海水晶が炎を映じて朱く輝くのを眺めた。今の彼の幸福な頭は、それが終末の炎であるという想像を一瞬にして抹消してしまった。

 海水晶。それはこの島の最深部で採れる、希少な鉱石である。ひとつの結晶のうえから、もう一回り大きな結晶が育ってできる。王子の腕輪に嵌まっているものはそのうち最も希少なもので、これまでに採れたどの海水晶よりも大きく透明で、その内部には、赤、青、黄、緑など、多彩でごく小さな鉱石が散っている。それがさながら、島の周りのガラスのように透明な海を、色とりどりの魚が泳いでいるように見えることから、海水晶の名が冠せられた。それは彼らの暦で年に一度だけ、神々に捧げる祭りの日にひとかけら、採掘することになっていた。
 外交官が王に謁見したいというので、王子が通訳に出てみると、彼らの要求はこの島に自分たちの物品を売る許可が欲しいとのことだった。彼らはこの島の言葉を話さない。覚えることを考えもしないのではないかと王子は考え、またそれは当たり前だとも思った。
「あなたがたがお持ちの品々の素晴らしさはよく理解したところです。わたくしはこの島の人々にもそれを分けてやりたい。お好きなだけ、お売りください。しかしご存じの通り、わたくしどもは、その対価にあなた方に差し上げるものを何も持ちません」
 王が言うと、大使は答えて言った。
「あなた方は我々の欲しいものをお持ちです。『女神の悲哀』、あなた方が海水晶と呼ぶ石です。それを対価にいただきたい」
「駄目だ」
 王子は突然声をあげた。王は驚いて彼を窘めたが、大使は悠然と首を傾げた。
「それでは、交渉は成立いたしませんねえ」
「いいえ、申し訳ございません。これは僕の口が勝手に申したことです。どうぞお気になさらず」
 王子は激しく動揺しながらぼそぼそと呟いた。
「良いでしょう、もちろん、海水晶を差し上げます。あなた方には随分と世話になったことですし、わたくしどもとしてもあなた方の欲しいものを差し上げることは喜びです」
 王の言葉を訳す王子の声は震えた。
 かくして、かの地の物品を王が海水晶をもって買い取り、それを島中で取引するという約束が交わされた。
 昨夜の晩餐会で覚えたような胃の抵抗感で、彼は混乱した。頭の中で蝋燭が燃えていた。あのむせかえるような甘い匂いの煙のなかで、彼は溺れかかっていた。
 早々に部屋を退出したのち、珊瑚をあしらった柱の陰の小さな腰掛に掛けて頭を抱えていると、向こうから人声が近づいてきた。使節のうちの二人だった。王子には気が付かない様子で、笑い交じりにこう言っていた。
「やはり、食事は故郷のものに限るな。ここのものは何でもごく薄い塩味で、しかも得体の知れない、ぐずぐずしたものを食わされるんだ」
「ああ、バター万歳だ。それにしても、お前もお手柄だな。これで俺たちは大儲けで、隣国との戦争も圧勝さ」
「いいや、それほどのものでもない。実を言うと、奴らは殆ど何の抵抗もしなかった。我が国が少し指を動かせば、こんな島などひとひねりだが、しかし、労力は少なく、得られるものは貰っておく。外交官の使命さ。この島では真珠も、金も採れる…」
「ああ、無知は美しいな!疑いを知らぬのだ、奴らは…」
 声は遠ざかっていった。
 王子は蒼白になって王の部屋へ駆け込み、今しがた聞いたことをまくし立てた。王は取り合わなかった。
「あの大使は、気分が悪いと言ってお前が退出した後、この島の言葉を使ってこう申した。『我々は人間の欲得ずくのやり取りに疲れました。あなた方のように心の美しい人々とこうして互いに喜びを与えられる関係になれて嬉しいです』と。余は感動した。あれほど進んだ世界の方が、このような老いぼれに、この島の言葉で、たどたどしくもあんなに優しく語りかけた。あれは誠の言葉だ。余は信じておる」
 王子は一呼吸おいてはじめて、父の言ったことを理解した。つまり、外交官は言葉の力をよく理解していたのである。普段は直接の意思疎通ができないために、いきなり自分に理解できる言語で直接語られた言葉は、深い感銘を残す。息子の言葉を聞き入れない程には、王はあの大使に感化されてしまったわけだ。
 彼はふと、自分が何に危機感を覚えて、これほど慌てて王に会いに来たのか、分からなくなった。込み上げてきたのは羞恥心と、焼け付くような劣等感だった。ぎりぎりと歯を食いしばりながら、しかし彼はもう、敗北に慣れてしまった。遥か天上にいるように思われる、かの地の人々が自分たちを奴隷にしたいなら、奴隷になるのが美徳だという気がした。
 王宮では夜ごとに晩餐会、舞踏会、音楽会が催された。王子はかの地の踊りを習わされ、かの地の卓上作法を身に付けさせられた。結局、かの地の食物も食べさせられた。彼にとってはあまりに脂っぽく、香りがきつく、味が濃すぎるそれを、彼は食事会が終わってから決まってもどしてしまっていた。
 かの地の特別な冗談の言い方、音楽や絵画の知識、踊りのステップ、食事作法、そういうものが世界の教養という訳だった。彼は劣等感が背を焼くままにそれらを覚えた。時折日記にこぼした、「僕は何が楽しくて生きているのだったか」。
 そのうち島中でかの地の商品の取引が始まった。海水晶が伝統の儀式もなしにどんどん掘られ、やがて採掘場は荒れ果て、そこから鉱石を運び出す為に森の木々が倒された。少し裕福な島人はこぞってかの地の商品を買い求め、島で最も美しいものよりも強力に、殆ど暴力的なまでに五感に訴えてくるあでやかな美に歓喜した。王子は時折日記にこぼした、「僕たちは、何が楽しくて生きているのだったか」。
 夜ごとの会に現れる左大臣の娘も、彼に十分な慰めを与えてはくれなかった。彼女は殆ど常に金髪の外交官を伴っており、部屋の反対側から王子に必死の目配せをするのが精一杯だったからである。
「あのひとが、今度この船が故郷に帰るときに、私を一緒に連れて行くと言うの。お父様も止めなさらないのよ、酷いと思わない?私はこんなに、こんなに…」
 ある日の舞踏会で、辛うじて掴んだ機会に、彼女は呻くようにそう言った。
「私は野蛮の民だから、彼が開化へ導くのですって」
「その同じ船で、右大臣がかの地の見学に行くそうだ。だから僕も行くよ、その使節として。そうして君を連れて帰る」
 王子は出鱈目なステップを踏みながら言った。彼女は子供のように笑った。そういう時が、彼にとって唯一の幸福であった。

 それはある夜のことだった。王宮の露台では、星空の下に音楽会が催されていた。かの地の音楽は、蝋燭の灯りを映じて様々に光り輝く奇妙な形の楽器をふんだんに使って、まるで息つく暇もなく音を並べ立て、この島の海や神を唄った素朴な音楽に比べると、あまりに煽情的で、身体の中にあるものを一斉に搔き立てるような響きを持っていた。王子はすぐに耳をふさぎたくなった。かの地の人間たちのように、眼を閉じて気取った顔で聴き入るどころか、今すぐ立ち上がって近くにあるものをすべて破壊して回りたい衝動に駆られた。
 しかし、その衝動に暫く耐えたところで、右大臣が急に立ち上がった。銀髪を長く垂らした、穏やかな老人だった。彼は立ち上がったなり、熱に浮かされたように、しかし常人とは思えない速度で露台の端まで駆け寄ると、そのまま手摺の向こうへ消えた。一瞬の出来事だった。
 誰かが悲鳴をあげ、音楽が止み、皆騒然として手摺に駆け寄って下を覗き込んだ。庭に人が遣られた。老人は首の骨を折って、地面に倒れて死んでいた。
 王子はその報せを聞いてもなお、呆然として座り込んだままでいた。右大臣の濃紺の衣服の裾が翻った残像が、彼の眼を何度もちらついた。蝋燭がふつと消える音がして、甘い煙が一筋、立ち昇った。

 かの地の人々も、王も王妃も、右大臣の突然の投身の理由を理解できぬようだった。この頃の王夫妻は、日夜かの地の美々しい装飾品や絵画、食事、嗜好品に入れ込み、始終酔っ払っているように見えた。強すぎる刺激に慣れ、この島のものには飽き足らなくなり、海の音を聞くこともなくなって、常に新しい美を欲しがった。
 王子は、右大臣の喪にきちんと服している人間が、果たして何人いるだろうかと怪しんだ。王夫妻は、昔は宮廷料理人の使いの童が病気で死んだときでさえ、彼の家族の為に涙を流したものだったのに、今ではもう、新しい愉しみ、新しい快楽のことしか考えられなくなっている。王子はもう両親を諫めることを諦めた。話しかけることすら嫌だった。世界中が急速に色を失っていくように思えた。何度も頭の中を、「僕は何が楽しくて」という言葉がよぎった。彼は一人でいるとき、ふと右大臣のあとを追って身を投げる想像が浮き上がってくるのを止められなかった。
 そのうち、かの地の船が出航する日が近づいてきた。右大臣の死により、かの地への見学使節の話はうやむやになっていた。ある日王子が図書館への廊下を歩いていると、若い女の声が急に耳に飛び込んできた。誰かと言い争っているようだった。
「信じられませんわ、まだそんなことをおっしゃっているの?右大臣様がお亡くなりになって、こうして喪に服しているのがお見えにならない?」
 それから別の、抑えた激しい声が何事か言って、よく聞き取れぬうちに、また女のほうが叫び出した。王子は彼女がこれほど怒るのを聞いたことがなかった。かの地の言葉を話しているせいで気が付かなかったが、それは左大臣の娘の声だった。
「ええ死んだのはお父様じゃないわ。でも、だから何だって言うの?右大臣様は最後まで、あなた方が得意げにひらひらさせているような、浮ついた着物なんかお召しにならない、素敵な爺やだったわ。とにかく私は行かないと言った筈よ。あなた方は本当に…」
 彼らが本当に何なのか、金髪の外交官が聞くことは叶わなかった。王子は廊下の角を曲がって、ちょうど二人の真ん前に出ていた。外交官は顔を顰め、左大臣の娘はあからさまにほっとした顔をした。なるほど彼女の言った通り、外交官の付けている匂いはきつすぎる、と彼は思った。
「ご機嫌よう」
 王子はちっともご機嫌よくなく言った。それから金髪の外交官の青い眼をまっすぐ見上げ、淡々と続けた。
「この娘が、とんだ我儘を申しまして申し訳ございません。このとおりの激情家で。これまでも度々失礼をいたしましたでしょう。ですが無理に連れて行こうとはなさいますな。もし彼女を無理に船に乗せれば、彼女はきっと波間に身を投げるでしょう。それでなくともわたくしが、彼女を殺して僕も死ぬ」
 どうしてこんな言葉が、自分の口からすらすらと出てくるのか、わからなかった。いい加減僕も頭がおかしくなってきたなと思った。それでも彼は青い一対の眼から眼を逸らさなかった。金髪の外交官は顔を赤くして交互に二人を指さし、何度か口を開きかけたが、怒りのあまり言葉が出なかったのか、踵を返して立ち去った。
「うわあ、どうしちゃったの。頭でも打った?」
 彼女はいきなり笑い出した。王子は強張った頬を無理に崩して微笑んだ。彼は疲れていた。食べたものを殆どもどすせいでろくに栄養を摂れていないし、夜は何度も右大臣の濃紺の衣服の残像にうなされて、眠れていなかった。見れば彼女の眼の下にも濃い隈が付いていて、どうやら少し痩せたようだった。
「守ることがこんなに大変だなんて、知らなかった」
 彼は今にも床にしゃがみこみたいのを我慢して、ぼそぼそ呟いた。
「ちょっと、あなた休んだほうがいいわ。眠れていないんでしょう」
「君こそ」
「お食事は。召し上がっているの」
「料理人がね、いろいろ試してくれているんだけど、全部もどしてしまって」
 彼はいよいよ彼女に寄りかかってしゃがみこんだ。
「馬鹿ね、この島のものを食べればいいのよ。さあ、立って、お部屋に戻ってください」
 小間使いがやってきて、王子を抱えるようにして連れて行った。
 彼は布団に身を横たえるなり瞼を閉じた。寄りかかった彼女の肩の、静かで柔らかな髪の残り香が鼻腔に漂った。夢も見ない眠りだった。

 どうやら頭がおかしくなったのは彼らだけではなかった。間もなく島中の人間に、王宮で起こっているのと同じようなことが起こり始めた。かの地の物品はある者には劇薬として、ある者には麻薬として、逃れがたき影響を及ぼしたのである。多くの人間が精神的あるいは身体的に死に、そうでなければひたすら新しい刺激を求めた。人々は気が短くなり、いまだかつてないほどに膨張した欲望の制御を失った。商船が何度も往来し、海水晶は早々に掘りつくされ、取引品は真珠に移った。王はもはや前後の見境もなくなっていた。
 王子は密かに宮廷の料理人に命じて、かの地の人々がやってくる前に食べていたような料理を彼の為に作らせた。おかげで食べるたびにもどすこともなくなった。夜は相変わらずうなされたが、しかし、少しずつ元気を取り戻しつつあった。
 そんなある日、彼は単身、王宮のすぐそばにできた、かの地の大使館へ出向いた。
「貿易の停止、ですか」
 大使は驚いたように眉をくいとあげた。
「それは王様のおっしゃったことで?」
 王子はその質問を無視した。
「島民を見てください。あなたがたはこの島の者たちを廃人にするおつもりか。あなたがたのやってくる以前のこの島は、もっと穏やかで人間らしいあたたかみがあった。なるほどわたくしどもはあなたがたのお陰で、知識、見識の上では人類として大きな発展を遂げたが、しかしそれと同じくらい、いやそれ以上に、わたくしどもは獣に戻ってしまった。あなた方がもたらした品々のしでかしたことですよ。悪魔の商品と言っても良い」
 彼は静かに言った。大使はいかにも困ったという風に首をかしげて頭を掻いた。
「そう言われましてもなあ。わたくしどもは、わが国で愛でられているものをそのまま、こちらへ鬻いでいるのですよ。もし仮にあなたがたに悪い影響が出ているとすれば、それはあなたがたにこういう商品が合わなかったというだけでしょう。それに、わたくしには、この島がそれほど変わったようには見受けられない。むしろ王様をはじめとして、多くの方に喜んでいただけていると信じておりますよ。我々の商品は、飛ぶように売れているではありませんか」
 大使は禿げ上がった額の下で、薄笑いを浮かべて言った。王子は表情を殺して要点を繰り返した。
「それで取引を中止したいのです」
「まあ、そう性急におっしゃるな。商船はまだ来ますし、簡単に止められません。あなたが国民を守らねばならぬと同じように、わたくしどもにも守らねばならぬ者共がいる。それに何ですか、貿易はまだ始まったばかりでしょう」
「三年です」
 王子は食いしばった歯の間から唸った。
「なに、今度は王様とご一緒にいらしてください。そして王子様、あなたはさっき、我々の商品のせいで島民が獣になったとおっしゃった。恐れながら、人生の先輩としてひとつ申し上げるとするならば、人間はいつまで経っても、獣であるのですよ」

「…人生はいつまでも同じところを回る児戯に過ぎない」
 王子はいつか日記に記した言葉を低く呟いた。金髪の若い外交官、貿易を持ち掛けてきた大使、中身のない言葉で王子をかわし続けた大使。幻想は破れ、彼は天を仰いで、小さく乾いた笑い声をあげた。なんだ、僕が思っていたことに例外なんかなかったんじゃないか。この世に特別な人間なんていない。ただ強いか弱いか、それだけだ。
 前の右大臣の投身の原因を理解できなかったように、かの地の人間にはこの島全体に起きていることが理解できない。大使の口からすらすらと出てきたような、蝉の抜け殻のように形だけでがらんどうの言葉の数々は、この島ではついぞ聞かれたことはなかった。このような人間たちだからこそ悪魔のような嗜好品を作り出したのか、それとも、と彼は考えた。それとも、悪魔のような品々が、彼らをそういう人間にしたのかもしれなかった。人間が作り出した悪魔が、人間を悪魔にしたのかもしれなかった。甘い薫りの中で、少しずつ息の根を止めるように。
 夜、部屋の窓から村を見下ろすと、あちこちの家々に蝋燭の灯りが灯って、星々が黒い海に浮かんでいるように見えた。そのひとつひとつにひとの営みが存在するのだ。そう思うと以前は心が和んだものだが、今は、深い峡谷の淵を覗いたときのように、心の奥にさあっと冷たい風が吹くような気がした。自分はこれだけのひとの命を預かっているのだと思った。
 ふと肘のあたりに灼熱を感じてびくりと手を引っ込めると、卓上に置いた蝋燭に近づきすぎたらしく、袖に付いた房飾りに焼け焦げができていた。彼はまじまじと蝋燭を見つめた。ゆらゆらと、明るい炎がたのしげに揺れている。眩しいほどに明るく、安定していて優しいのは、その炎が死んでいるからだった。いや、死んだふりをして、じわじわと甘い薫りの蜜蝋を溶かして、人間が油断した隙に、世界のすべてをその舌に絡めとって吞みつくすのだ。それがきたら、誰にも止められない。万能のかの地の人間にだって、止め方はわからない。人間は、生き物は自然であって、自然は神であって、神は人間の手に負えるものなんかではないからだ。遠い海を隔てたかの地に棲む、まだ見ぬ小さな生き物が紡ぎ出した、人間が飼いならしたと思い込んでいる炎は、確かに人間の手に依って作り出されながら、人間をも覆いつくして燃やし尽くすだろう。蜜蝋の最後のひとかけらが、甘い煙になって消えるまで。
 そういう幻影を、彼は見た。

 原因不明の熱病が流行り始めていた。罹った人間は月が一周満ち欠けするほどの期間を高熱にうなされ、そのまま死ぬこともあった。それは暫く前からじわじわと広がりつつあったが、あまり重大視されてこなかった。王がそれに感染するまでは。
 王宮中が大騒動になった。しかし、王子の本の知識と、島中の医師、祈祷師の努力もむなしく、王は呆気なく逝ってしまった。
「死にとうない」
 彼はうわごとにそう言って、息を引き取った。王子は泣いた。往時の王は、死にたくないだなんて、死ぬ直前に唇に上せるのに最も相応しくない言葉だと言っただろう。
 王妃も夫の後を追うように熱病に罹り、間もなく逝去した。
 かくして彼の父の国は彼の国になった。そこはかつて世界のすべてだった。そこにあった彼の大切なものは次々と死んでしまった。
 かの地の人間たちは哀悼の意を示す為と言って、黒ずくめの、武装した一群を王都に送ってきた。喪が明けても軍団は海辺にそのまま居座ってしまった。この国ももう終いか、と新王は思った。初めから対等なんかではなかった。おしまいまで勝ち目なんかなかった。劣等感が全身を焦がしても、もう彼には自分の心を突き刺す元気すら残っていなかった。
「海水晶はもうない。真珠も採り尽くした。島じゅう熱病患者か中毒患者だらけで、戦争のせの字も知らない、狩猟用のナイフと弓矢だけの、小さな島国。ちょうど前王は崩御したばかりで、新王はひねくれ者の青二才」
 彼は窓に額をくっつけて海辺の黒い軍隊を見つめながら独りごちる。
「諦めるの?」
 背後から声が響く。
「何を?何を?僕たちに、諦める何があるって言うの?」
 彼は呻いた。
「たくさん持っているわ。私たちは、いろんなものを持っているわ。ねえ、人間の身体って、証拠でいっぱいなのよ」
 彼女は新王の袖を引いて、自分のほうを向き直らせた。
「見て。ここに。私、あのひとたちが来る前のこの島の暮らしのこと、ずっと思い出して書き留めていたのよ。どんなに私たちが一体となって、どんなに幸せだったか。どんな風に優しい冗談を言い合ったか。どんな料理を作って、どんな風にみんなで食べたか。どんなお祭りをしていたか。どんな唄を歌ったか。海のこと、森のこと。みんなここにあるわ。あなたの心の中に、まだはっきりと。残すのよ。伝えるのよ。どんなに無垢で満ち足りた、繊細な人間たちが、この美しい島で生きたかを。諦めてはいけないわ」
「そう」
 彼は胸を突かれてほかの言葉が出なかった。黙って彼女の持つ冊子を受け取って頁を繰った。涙が止まらなくなった。本を窓辺にそっと置いて、彼は彼女を力の限り抱き締めた。
「ごめん。ごめん。僕はこの後にくるものを知っている。はじめから知っていて、それを避ける術を知らないんだ。父上に申し訳ない。島のみんなに申し訳ない。僕は」
 彼は彼女の肩に顔を埋めて泣きじゃくった。
「あなたひとりのせいじゃないわ。思い上がらないで」
 彼の頭を撫でる手は、しかし、限りなく優しかった。

 燃えている。
 あかあかと、赫赫と、炎はその舌にあらゆるものを絡めとって、獲物を得た獣のように歓喜して暴れる。
 こんなときなのに、蝋燭だ、と思った。ついにそれが来たのだと思った。 
 すぐに大使に降伏を申し入れた。かの国が島民を奴隷として売り捌き、島中の金を採掘し、陸地を彼らの国の大農園にすることに合意するのなら、島を焼き尽くすことは勘弁してやると、彼らは答えた。抵抗すれば、男と老人は皆殺しにし、子供は奴隷にし、女は残らず略奪して、この島を完全にかの国の領土にすると。その気になればそれくらい、明日にでもできると、彼らは言った。
 新王はひとこと、諾、と答えた。


 その小さな絶海の孤島は、列強が競って航海し世界中に勢力を広げたあの時代にありふれた運命を辿った。当時の王は生涯、王妃とともに、昔の島の暮らしを記録した手記を大切に保存し、書き足し続けたという。かの国がこの島を完全にひねりつぶせなかったのは、この王の働きに依るところが大きいとされている。彼とその妃の手記は現在も非常に良い状態で保存されており、この伝記もそれに基づいて著したものである。

~fin~


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蜜蝋…白状すると、葵は蜜蝋をテーマにすることの何たるかをイマイチわかっていないまま見切り発車しました(=゚ω゚)ノ(´∀`=)
ので、イマイチ、テーマがはまっていない、こともないと思いたい、な〜

 ここまで読んでくださった優しいあなたが、よい新年度を迎えられますように!



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