ひろいキッチンだけが夢だった
どうしても居場所が必要だった。実家は居ごこちがあまりよくなくって、自分だけの、自分のためのキッチンが欲しくてたまらなかった。
それで、いまの家に住みはじめたのが20歳。
誕生日を飛び越えたとたん、印鑑を押してお金を払えばなんでもできてしまった。成人式には出なかったけれど、成人であることをなにより実感した瞬間である。貯金していたお金をぜんぶはたいて家出した時、いまよりもっと自由だったと思う。
(これは鍵を受けとって部屋の掃除をしにいった日。ひとりで雑巾がけをしたり。と