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『ことばの生まれる景色』原画展 火星の庭 (仙台) 2019.4.18-2019.5.6

大阪での展示と続けて、原画展は仙台・火星の庭へ。
東北では初めての開催となりました。
火星の庭は、辻山さんがTitleをつくる前に、nakabanさんと共に「旅するブックシェルフ」という展示の企画で訪れたご縁のあるお店でもあります。
長い長いGWとも重なった火星の庭での展示会期中、4/20には、nakabanさんとトウヤマタケオさんによる「ランテルナムジカ」のライブも開催され、大いに賑わいました。

本の表紙にもなっている『旅をする木』(星野道夫)の絵は、古本屋さんの店先をイメージして描いたのだとか。

そんな火星の庭での展示作品はこちら。

【火星の庭 展示作品】計18点
『旅をする木』星野道夫
『独り居の日記』メイ・サートン
『造形思考』パウル・クレー
『尾崎放哉全句集』尾崎放哉
『遠野物語』柳田国男
『百年の孤独』ガルシア・G・マルケス
「犬を連れた奥さん」『かわいい女・犬を連れた奥さん』チェーホフ
『山之口貘詩集』山之口貘
『八月の光』フォークナー
『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ
「なめとこ山の熊」『注文の多い料理店』宮沢賢治
『パタゴニア』ブルース・チャトウィン
『さようならギャングたち』高橋源一郎
『方丈記』鴨長明
『犬が星見た』武田百合子
『津軽』太宰治
『芝生の復讐』リチャード・ブローティガン
『声めぐり』『異なり記念日』齋藤陽道

〈火星の庭店主・前野久美子さんへのQ&A〉
1)『ことばの生まれる景色』の中で、好きな作品は?

宮沢賢治「なめとこ山の熊」です。
絵を見ていると、倒れた熊のふさふさした毛、温かい体に触っているようでどきっとしました。熊の毛皮の黒、草叢の緑、滲んだ血のコントラストが美しいです。
賢治の作品のなかでも「なめとこ山の熊」はとくに大好きで、あらゆるものを包みこむような広がりがあり、辻山さんが書かれた「宮沢賢治の宇宙観が凝縮された、スケールの大きな物語」という言葉に深くうなずきました。

2)もし自分が作品を選んで、nakabanさんに絵を描いてもらうとしたら
どの本を選びますか? 可能でしたらその本から選ぶ一節も教えてください。

林芙美子『放浪記』(新潮文庫)。
「裸でころがっているといい気持ちだ。蚊にさされても平気で、私はうとうと二十年もさきの事を空想する。
それでも、まだ何ともならないで、行商のしつづけ。子供の五六人も産んで、亭主はどんな男であろうか。
働きもので、とにかく、毎日の御飯にことかかぬひとであれば倖なり」

初めて読んだ10代から50歳になった今でもいつ読んでも新鮮(90年前の話とは思えない)です。偏りのない目で見て、平気なことも平気じゃないこともさらけ出して、あっけらかんと生きていく。どんな自分も自分であると。その姿は尊いと思います。

3)展示に関して、お客様にひとことどうぞ。
壁に並んだ絵は、電車の窓から見える景色のようです。
本という乗り物に乗って旅をする気分で観にいらしてください。

*  *  *

前野さん、ご回答ありがとうございました!
火星の庭での展示は5/6(火)で終了となりましたが、ご近所の方はもちろんのこと、仙台にお立ち寄りの際は、ぜひお店を訪ねてみてください。
美味しいコーヒーとカレー、そして宝の山のような古本(と新刊)が待っています。

(写真:火星の庭提供、文:川口恵子)

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