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オーディオルーム・アドベンチャー

ひとつの詩的体験が不調に終わったとき、
空想は「書物とランプの間」から消え、
私の兄の遺したアンプを通って隠れた、
オーディオルームにーーそこでは、吸血鬼が
焚き火をインディアンたちと囲み、
悲しいバラッドで彼らの涙を川にし、
ハーモニカで辺りを秋の風に変え、
ゴムの靴底でシタールを奏で、
嫉妬に狂った魂でブルースを歌い上げていた。

しかし、私にあるのは真っ白な紙とペンだけ。
そこで、ジェイクとフィンに電話をかけ、
私の分身をもらった(ありがとう、友よ)。
それがサイモンーー彼が冒険の主人公。
ハゲタカの群がる私の兄の部屋を旅し、
未来を1日だけ失う朝に帰還するのだが、
サイモンが部屋に入ると、CGの宇宙で、
物凄い熱を発してバディ・ホリーの心臓が、
ジャングルのビートで歌っていたーー
すげぇ!

サイモンは進む、月が道を照らすうちに。
オーディオルームの奥深くへと分け入り、
しぼんだ私の風船に空気を入れてゆく。
アナロジーの上で、彼は岩に、鳥になり、
日常から非日常、空想から現実へと渡り、
ディランの「ミシシッピー」の歌詞の中へ。
バスタブではジャネット・リーが横たわり、
クレオパトラはアントニーのケツをかじり、
X-MENは未来と過去にこんがらがっていた。

デビット・リンチの砂漠で帽子をなくし、
マルホランド・ドライブで奇妙な罠にかかり、
サイモンは広げた地図の穴から青い夢に落ちる。
ナイフを突き刺されても覚めない夢の中では、
私の妻になるはずだった女が現れ、
「あなたの血液型が駄目だったの」と笑う。
そして私は目を覚まし、詩を書き始めた。
始めに光を捏ね、アダムを産み落とし、
ヴィンセント・ベガとアムステルダムへ。

その時、兄の眼鏡が振動を起こして揺れた。
私は湖に潜むジェイソン・ボーヒーズを気にかけ、
蛇のように息を潜めて、兄と語り合ったーー
ルー・リードの『ニューヨーク』が兄と私の聖地。
あるいは、ヒッチコックの『フレンジー』が。
古今東西の英雄と敵に囲まれた兄の部屋で、
私はポエニ戦争からベトナム戦争まで、
ありとあらゆる戦争を見た。
ロシア革命の一部始終を見た。
ケネディの暗殺を、アラブの春を見た。
叶わない恋を見た。
キルストン・ダンストのマリー・アントワネットを、
グイネス・パルトロウのシェイクスピアを見た。
戦いに破れた戦士たちを見た。
ランボーを見た。
コマンドーを見た。
ディランの「ジョーイ」を見た。
ジョン・レノンの「神」を見た。
ブッダを見た。
ブッダの歩いたインドを見た。
ライオンに食われる鹿を見た。
雨を見た。
干ばつを見た。
私の中に地球を見た。
地球の中に私を見た。
ボルヘスの「アレフ」を見た。

何マイルと続けた私たちの冒険が終わり、
サイモンは、見送る私に振り向き、微笑む。
曰く、「これでお前はしばらく生きていける」。
私は生涯をかけ、何を探しているのだろう。
ジョーズを仕留めたロイ・シャイダーの気分。
ポール・マッカートニーの声で、64歳の顔をする。
恍惚の間、花はその分だけ枯れ、
詩人は死に一時間近づいたことだけを悟る。
どんな力も命を引き止めることはできない。

どんな力も。

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