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日々是短歌、ひりだす哉。

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素人俳句です。 手元に一冊「短歌研究2021年6月号」を持ち、それを頼り(ほとんどバイブル)に日々一首をひりだしていきます。
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記事一覧

ザ・恐怖(ホラーとは?) / 20240512sun(400字)

ホラー小説は、恐怖を主題として、読者に恐怖感を与えるため(恐がらせるため)に書かれた小説。恐怖小説あるいは怪奇小説などとも呼ぶ。 書き始めのころ「地下に繋がれる裸の女は時間になると陰部に覚醒剤を打たれる」女の地獄の極限を描いた。批評家の先生に「これは寓話だ。ジャンル小説を書きたいのか?」と言われた。後に冷静になれば「ぼく(筆者)が勝手に思いこんだザ・女の恐怖」だった。 恐怖は読者(あるいはキャラ)によって違う。ADHDで同僚の会話が恐怖だったり、子どもで親がネグレクトで継

喋らぬ男とジャズ / 20240511sat(400字)

滞ったシーン: 雪山で橘田は崖から滑落してクマに襲われた男を目撃。 傷だらけの男をテントに連れて帰る。 男は手術をして助かる。 男は喋らない。 橘田は車内にジャズをかける。 「むかしむかし…… 」 橘田の語りは次第にジャズのように軽妙なアドリブになる。 「キサマら何者だ! 桃太郎は熊、盗人、大鷲を睨んだ。熊は逆に桃太郎さんに尋ねますが。あなたどこからどうやってこの世界に来たんで? あなた鬼を征伐するって言いますがあなたのその目で一度も見たことのない鬼ってのは悪者ですか? そ

純愛は純度100%の純水、結婚は海 / 20240510fri(400字)

ぼくは浄水場で濾過された純度100%の純水を飲んだ経験がある。コップ一杯の純水は味ものどごしも感じなかった。純水がのどを通る感覚がなかった。奇妙だったが、そこで飲んだという実感、時間さえ感じなかった。 かたや、現実の海は汚れている。プランクトンの汚物からタンカーから撒き散らされた重油まですべて海だ。 純愛は儚い夢。 恋愛とは純水に「不純物」をふくむ。 結婚は海。 恋愛と海は「不純物」がふくまれる。 不純物とは「偽り」「嘘」「軽蔑」「疑い」その他さまざまな「人間の偏見の目」だ

恐ろしく有能な女。(看護師編) / 20240509thu(400字)

始まってもないのに、 ごめんなさい。 不安でした。 昨晩は勇足だった。ケータイを開く。 おはようございます。ゆっくり休めましたか? 色々とお話し有難う。 私の写真をたまたま気に入ってくれたのかなと思います。 でも実際にお話ししたら、あれっ?って思うかもしれない。 お会いしたらフィーリングが合わないって思うかもしれないよ。 まずは通話してみましょうね。 仕事の都合で後日でも大丈夫ですか? レナ 完璧な返しだった。 看護師53歳。部下に上司に助けられ日々を感謝。 レナ

イカゲームを観て、妹を重ねる / 20240507tue(400字)

ホームシアターで母とイカゲームを観た。 悪役のチャン・ドクス。良かった。 まず顔がワル。二度目でも飽きない。 チャン・ドクスのキャラに妹が重なった。 先月、僕は妹と膝を突き合わせ話した。 妹は離婚をして三人の息子を育てる。 この春、次男は高校を留年。 十年前、僕は妹の家族の一端を垣間見た。 「テメエら、うるせえ! ぶっ殺すぞ! 」 妹はキレて五歳の息子を蹴りあげた。 「やめろ」とは言わなかった。僕の家庭ではない。 妹は自分(の教育)が悪いと認めない。 常にじぶんが被害者

過去に生きる女 / 20240506mon(400字)

「キティって呼ばれます。若い頃はすごーくモテたんですよ! 当時はアッシーくん。メッシーくん。貢くんがいました! デートをした数は百を超えます。プロポーズは二十はありました。でもキスに至るまで一年かかるお堅い女子でした。理由は… じぶんでわかってるんですけどね。笑。セナさんはモテましたか? 」 のっけから元気な女性だ。 「告白すれば全戦全敗です。モテたことはないです」 プロフを見る。 元歌手。ソニーと契約が折り合わずライブハウスで活動。怒涛の子育てが終わる。65歳。身長

小説は「四次元」の世界 / 20240505sun(400字)

朝、目覚めると腹はもう半分割かれていた。 朝、目覚めると、腹はすでに割かれていて、腹がさらに割かれたぼくが目覚めたのか、はたまた腹は、ぼくとは違うほかのだれかの腹で、ぼくはだれかの腹が割かれるのを、じっと真横で眺めていただけなのか。奇妙な夢だった。 最初の一文でも超短編小説で話は成立する。 それは書き出しとして(夢の説明の段を加えて)物語を始められる。 SF小説を書いている。純文学を書いていてエンタメに舵を切った。まさか楽しんでいるだけのSF世界をじぶんで書くとは思わな

ある「化石」の仮説 / 20240504sat(400字)

最近「村◉春樹」の言葉を使った記事を書いた応報でじぶんのページに村◉春樹が上がってくる。うんざりだ。 物語を書くことはじぶんの無意識に眠った化石をそのままの形で掘りだす作業だ。じぶんを信じて書けばいい。S・キング 彼から知る前に、ぼくは薄々じぶんの内部で察知していた。 三月ぼくはプロット(物語の骨格・青写真)を作成した。 すべての伏線をラストシーンで完全に回収する。それがエンタメ作品だ。 師匠のことばが頭に引っかかる。 S・キングと記者出身の師匠の言葉は矛盾する。

精神病を理解するための「侵襲性」 / 20240503fri(400字)

上の記事を読んで。 僕は精神科の閉鎖病棟に二度入った。北イタリアと京都。 二カ国の閉鎖病棟経験は日本では僕くらいだそう。 「講演ができるよ」主治医は笑う。 上の記事を批判するわけではない。 当事者でもある僕の考えをここに。 主治医は15名になる。 初診は21歳。パニック発作で東大病院精神科に。 「うつ病の典型だ」誤診だった。 11年後、北イタリアのコープの駐車場で発狂。 太陽が僕に笑った。 「おまえも笑え」太陽に唆されて発狂。 双極性躁うつ感情障碍だった。 記事を書く人

エンタメ版のマクガフィンの問題 / 20240430tue(398字)

マクガフィンは小説や映画などのフィクションにおけるプロット・デバイスの一つ。話を進めるために用られる作劇上の概念。 ヒッチコックのマクガフィンの定義はプロットの進展に必要であるものの観衆はさほど気に留めないオブジェクト(ネックレスや書類)。対してジョージ・ルーカスは「まるでヒーローと悪役の決闘シーンのように観客を虜にするものでなければならない」と語る。 ぼくはルーカス版「悪役:綿鍋銀次」を物語に登場させた。とはいえ、マクガフィンだ。綿鍋銀次が死ぬと物語は急速に力を失った。

被せてくる港区の女 / 20240425thu(400字)

昼前。雨。 マッチングアプリを開く。 うな垂れる。 体重を訊ねてきた女だ。 返答に困る。太った体重を気にしているのだ。 これをデリカシーというのか。 「体重がなにか… 」 時間を置いて答えた。 「体重に合わせての運動がいいですよー」 僕のプロフを見たらしい。 彼女のプロフを見る。 五十二歳。港区。大卒。外資系企業。 海外へは五十五カ国に行った。機内でCAに声をかけられます。 旅行相手探し。食事に行きたい。ゴルフ相手が欲しい。 自分の話しかしない。対話は基本スルー。 マウン

妊娠検査薬(掌編) / 20240424wed(399字)

「今日はおれが出すよ」 「じゃおねがい」 結は翔の頬にキスをして玄関をでた。 靴棚の横にゴミ袋を落として翔はしゃがむ。 第六感は的中した。袋の底に、白い棒を見つけて、摘みあげた。 妊娠検査薬だ。判定線はない。 ドアに翔は背を凭せる。南の窓に曇空が見える。 ベランダの向こうに濃い葉がみえる。階下の桜の木だ。 背中が下にずるずるとさがる。尻がついた。 「結となら欲しいな」 昨年の今頃、翔は結に言った覚えがある。 翔は四十六。結は四十二。 結が孕めば生活は一変する。 結は変化を求め

実際に見たヤクザの話 / 20240420sat(400字)

二度ある。 初めは小学五年 ステーキハウス。 家族四人で食事のとき。 どん。 席に、瓶ビールが二本置かれた。白い服を着た男が立つ。 「飲んでくれや。蒼井さん」 「非番だ。家族できてるんだよ」 父はわらう。 「カテエこというなや。仕事じゃねえんだろ」 父はやんわりと断る。 男が戻ったボックス席に桃色と黄色のワンレンボディコンの女が居た。 男は女二人を抱えるように座った。 二度目は地元オートレース場の観覧席で。 二十五歳のうつで療養中。祖父に連れてきてもらった。祖父は元市会議員

突然、老いた瞬間。 20240415mon(400字)

先日のコメント。 老いをコラムで四百字にまとめる。至難だ。 折良く、村上龍の「オールドテロリスト」を読み返している。 あった。 428頁。 鏡に映った自分の顔と、ボロボロになった歯が、お前は老いた、という信号を発している。目の下がたるみ、黒ずんで、首の皮膚は張りを失って無数の皺がある。人は、ゆっくりと老いていくが、あるとき突然に、自分の老いに気づく。老いの自覚は、過去は絶対に取り戻せない事実を突きつける。抵抗のしようがない。 ぼくが老いを感じたのは京都から帰ってきてすぐだ。