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派遣王女☆ウルスラ / 第3話(7,628文字)

■第3話■


BADコンテスト(後編)


扉絵


1頁 ウルスラおばさま?


「ぎゃッ!!」
ズコーッ!!
カフカ王子の腕に絡ませるアリス
ウルスラはテーブルクロスを歯軋りする。摩擦で煙がでる

アリスはウルスラに微笑んで
「あらどうしたの、ウルスラおばさま?」
「じぇ!!」
ウ ☆ ル ☆ ス ☆ ラ ☆
☆ O ☆ BA ☆ SA ☆ MA ☆

「ナダルお父さまの妃は私のお継母さまですわ」
「ガッヴィーッン!!」
ウルスラはズッコケる。一瞬、まちがえてタイムスリップし損なう

「嬢、目ん玉を落としておられます」
赤い絨毯に落ちた目玉を拾ってウルスラの手のひらにそっとのせる
「3秒ルールでセーフです」
ボッチは小声で隻眼のウルスラにいう

ベンチュラとカテリーナ
「あら、あなたちまたどうしてここへ?」
カフカ王子とアリスは熱く見つめあう
カフカ王子
「じつはぼくBADコンテストに参加するんです」
ズコッー!!

サササッ

ボッチ、忍者の姿で床直前でウルスラの目玉をキャッチ
「嬢、こんどは左目を…」

アリス
「それでご挨拶に参りましたわ」


2頁 これには裏がございまして



ボッチは眼鏡をかけ手板の参加者名簿を見
「えー、カフカさまは第一次、第二次審査ともトップ成績で通過されております」
ベンチュラ
「裏口なしね」
カテリーナ
「ボッチ、参加人数は?」
「ではBADコンテストの参加費はおいくら?」
ボッチ
「会員さまで1万ガルド。非会員さまで1万2000ガルドです」
ベンチュラ
「ではカフカ王子が優勝した場合は?」
ボッチは汗をかく
「といいますとぉ…」
ベンチュラとカテリーナはボッチを睨む
「…260億ガルドの収入となります」
アリスはカフカの肩に顔を寄せて
「カフカが負けたらやはり大損なの?」
ボッチは盥(たらい)に座り、なかはなみなみと溢れるような汗
「いや、これには裏がございまして…」
ウルスラ
「裏?」
ベンチュラとカテリーナは「やはりいつものね」と笑う



3頁 ボッチの出世(ミニラブ)



そろばんを弾くボッチ
(以下、ボッチとマーリンとの淡いミニラブストーリーが展開される)
「先日、私ごとですが…」
(新人妃の付き人に任ず。ぎょい)

「給仕課から執事課に…」
(マーリンはボッチに抱きあげられ棚の上の壺をとる)

「ヘッドハンティングされまして…」
(マーリンの代わりにナダルに叱られるボッチ)

「マーリン内膳正補さまに…」
(夜の密会、池で船デート、映画館)

「強く引き留められ…」
(抱きしめ合う二人の影、喧嘩する影)

「色々なことはここでは割愛します…」
(トレンチコートを着て去る男の影、泣き崩れる女の影)



4頁 胴元はやっぱりナダル



「結局、資産運用部の融資課に配属で決着がつきました」

「ああ、あそこね〜」
ベンチュラは笑う。カテリーナは首を傾げ
「どういうこと?」

「ナダル国の融資の一つとして掛けゲームの金融商品がありまして…」
「BADコンテストも金融商品になっております」
「オッズは今のところカフカ王子ペアが1.2倍でトップ」
「あとはみな20倍〜200倍を推移」
「ちなみに最下位はウルスラ嬢ペアで268倍」
ズコッー!!
「ウッセーわいッ!」
ウルスラの汗を拭く、ルーシー
「最終ペアはまだ決まっておりませんので」
「暫定のオッズになりますが」
「この世界の経済を動かす富裕層が巨額の金をこの掛けゲームに投資をしております」
ベンチュラは笑う
「で、今回の胴元はやっぱりナダル」
カテリーナは喉をあげる
「どのような結果でどう転んでも…」
「ナダル国には5800億ガルドの収入が入ります」

ヒョエ〜ッ!!

「さすが世界の闇を牛耳る王といわれるナダルンだわ」
ベンチュラ以外の全員はおどろく

「ナダルン?」

「幼馴染なのよ。アレとわたし」
ベンチュラはワインを傾けて笑った


5頁 新婚旅行はどこへ?



参加者は80名ほどに絞られた
ナダル王の謁見の間
第1回BADコンテスト
ナダル王妃のダンスパートナーオーディション
および参加者選抜会場

ボッチは笛を鳴らす
ピィー!
「三次試験始まります。表現力テストで〜す!!」
「ダンスには表現力が必要です」
「みなさんにはエチュードをやってもらいます」
「もっとも難しいお題!! なんでも自由どぞー!!」
「それではゼッケン『1』から」
大型ビジョンが設置されており、ウルスラはテレビジョンに食い入るように見ている

左半身が崩れかけた岩男が現れる
「ゼッケン2、デスロックヴィルからやってきました」
「海の幸を表現します!!」

「ぎゃははは!」
ウルスラは《10》の札をあげる
ベンチュラは《1》の札をあげる
カテリーナは《2》の札をあげる
ヤンは《2》の札をあげる
ルーシーは《4》の札をあげる

「ゼッケン2、19点不合格! 残念でした」
手板にチェックを入れる

「では次ゼッケン3」
「ゼッケン3、吾、東雲國から来たぞ!!」
テレビ中継が入っており、東雲國の応援団がヴィジョンに映し出される
「ワー!! あなた〜! パパがんばって!!」
東雲國の侍
「拙者、東方の随一の剣豪、居合い抜刀をする!!」
シャッ、バサッ、シュッ、カチン

ウルスラは《1》の札をあげる
ベンチュラは《1》の札
カテリーナは《1》の札
ヤンは《1》の札
ルーシーは《1》の札

「ゼッケン3、5点不合格! 残念でした」
ボッチは手板にチェック
「バカヤロー、国に帰ってくんなー!!」
テレビから声

「では次のゼッケン…」


審査員の長机

アリスがやってきて、ウルスラの隣に座る
「ウルスラ、どう? いい人いた?」
ウルスラ肩肘をついて
「海の幸をする岩男よかったな〜でも落ちたー」
アリスは箱を開ける
「お菓子焼いてきましたわ。おばさまたち、召し上がれ!!」
ウルスラはドキッと反応するが、すぐお菓子に貪りつく。
ルーシーと奪い合いの喧嘩になる
ベンチュラ
「あら、ありがと。で、新婚旅行はどこへ?」
カテリーナ
「まだ行ってなかったんだわね」
アリス
「婚礼の日に某国から私の祖国ロングアイランドの首都と…」
アリス涙を流す。カフカ王子がやってくる
「それとナダル王国の要塞城ゴルガダンに同時多発テロがあって」
カフカはウルスラのほほにほほを重ねる
ウルスラ真っ赤になる
プシューッ
ルーシーはウルスラの頭に乗せた薬缶でお茶を作る
カテリーナは急須でお茶をみんなに注ぎ
「戦争もね。いつ終わるのかしらね」
悲しい顔をするカテリーナ
ベンチュラは遠くを見る

ナダル王登場
全員、立ち上がる。
「たたんでよい」
「カテリーナ、わしにも茶を淹れてくれ」
「で、カフカとアリス新婚旅行はどこへ?」
ナダル王は訊ねる。カフカは答える
「それは、平和なところでふたりっきりで過ごしたいと…」
ナダル王はカフカ王子の肩に手を乗せる
「まずは、このBADコンテストに勝たんとな」
「…はい、お父様」
ベンチュラは笑って
「カフカちゃん、どうしたの?」
カフカ王子の顔に翳りがでる
「ママのエリザベスがいないと寂しい?」
カフカ王子
「違います。母上のことは言わないでください!!」
カテリーナ
「私、第一王妃のエリザベスって見たことない」
ベンチュラは笑う

「では次ゼッケン39」

カフカはハッと自分のゼッケンを見る
「ぼくの番だ!! おばさんがた見ててください!!」
「それと、ぼく通過したら、アリスとペアを組みます!!」
ウルスラは口からお茶を机に滝のようにこぼす
ガッーーーン!!



6頁 優勝候補




アリス
「カフカさま、がんばって!!」


ゼッケン39が呼ばれると、会場はざわついた
急遽、クレーンカメラが六設置され、ピンク色のカーディガンを着、サングラスを掛けた不審な男が入ってくる。その男は手をあげ、カウボーイが縄をふりまわすような仕草をする。するとカメラマンたちは一斉に録画を始める。世界中継されている大型テレビジョンにはカフカ王子が映っていた

カフカ王子は真っ黒なチュチュを着ている

「カフカ王子の十八番!! ブラックスワンだ!!」

ウルスラが股にダチョウの首をつけたチュチュをきて画面の右端から左端までスタスタと移動する

ズコッー!!
その場にいた全員と世界中の視聴者はズッコケる

カフカ王子はアラベスクから上半身を前に倒し足を高くあげて、いきなり空をとぶような高い跳躍をする。着地をすると高速回転のピルエット、グラン・ピルエットがつづく。ゆっくりと動かして足を高く上げてキープ。そうやって準備運動のような基本動作を終え、ブラックスワンは始まった。
カフカは終始アリスを見つめ、汗を飛び散らせ舞踏を舞う。場面は父国王の死、悪魔の呪い、黒鳥に姿を変えられ、娘と出会い恋に落ちる、カフカはそれぞれのシーンを演じ分ける。ラストは 黒鳥から王子の姿にもどって湖のほとりで死に絶える


「ワーッ!!」
「ブラボー!!」
「エクセレント!」
「ワンダホー!」
「グレイト!」
「トレビアン!」
「真厉害啊!」
「了不起!」
「感動した!」
「جميلة!」
「아름다운!」
参加者も会場も、大型テレビジョンを観る観客も世界中が喝采を送った

カフカはアリスを見つめる
アリスは涙を流す
見つめ合うふたり

テレビジョンの画面では股にダチョウの首をつけたチュチュを着たウルスラが踊る準備をしているのを、ピンクのカーディガンの男に首根っこを持って連れ去られる



7頁 でそろった出場者



「合格者を発表します。7,12,26,38.39,63,71,78,80以上の9名です」

ボッチは厳かにいう
「ここでルールの改変がございます」
会場は静まる
ナダル王が前にで、ボッチにマイクを渡される。ナダルは言葉を噛んでふくめるように民衆に向かって演説をする
「我が王子カフカが合格した。そこで」
「ワッー!」
「将来のナダル王国の王を国民の前に」
「ワッーワッー!」
「未来の王妃をお披露目したい!」
「ワッーワッーワッー!」
「ペアの相手は皇女アリスはいかがか!?」
「ワッーワッーワッーワッー!」
「いいぞー!!」
「盛りあがってきたぞー!」
「そう来なくっちゃ!!」
「さすがナダル王は国民の良き理解者だ!!」

アリスはカフカと抱き合う
アリスを抱きしめたカフカ王子は悲しい目をしてナダルをみる
「僕だけの力で勝ち取ったのに…」
アリスはふりむく
「なにかいいました?」
「いや、なにも…」

ボッチ
「つきまして、カフカ様とアリス様はペアになられます」
「仮にベンチュラ様と7」
「カテリーナ様と12」
「ヤン様と26」
「ウルスラ様と38」
「ルーシー様と63」
「となりますと、残りの2名で2ペアができます」
「2ペアは賞金総額をふたりで分け合う形になります」
「どうかご了承くださいませ」

審査員の長机
ベンチュラとカテリーナは喉をあげる
「外れもいるけど信じがたいほどの美男子ぞろいだわ」
ボッチは手板を見
「はい、ほとんど顔で選ばれていると思われます」
ベンチュラとカテリーナ
「なんでわかるのよ!?」
ボッチはベンチュラとカテリーナが手にもつ札を見る
「妃さま、お手元を…」
ふたりとも《10》の札を握りしめる
「エヘッ!!」
ズコッー



8頁 ナダルの刺客




BADコンテストまで、のこり6日
ナダル城
ブラックダイヤモンドの間(ウルスラの部屋)

「あなたが私のパートナーね」
ウルスラはいう
「はい…ウルスラ王妃、今日から閨(ねや)以外でなら二人でどこで過ごしても良いとの許可がおりてございます」
「ここは私の寝室じゃないの?」
「え!? では退室したほうがよろしいでしょうか?」
「聞きたいんだけど、これ」
天蓋付きベッドカバーをガバッと引くと、撒菱がばらばらと絨毯にこぼれる。
「なにこれ!!」
「…おそらく…東方のスパイ職のニンジャが使用するマキビシというものでございます」
「なにこれ!!」
シルク地のカーテンを勢いよく開ける
ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ、ガシャンッ、と金属の音を立て金輪っかが絨毯に落ちる
「…おそらく…マタギが森の狩猟で使用するくくり罠かと思われます」
「なにこれ!!」
読書灯がついたストールに水の入ったコップがある
「毒の入った水です」
ウルスラは男を指さし
「あんただれ!!」
「ウルスラさまのダンスパートナーでございます」


9頁 BADコンテスト当日



BADコンテスト当日
ナダル城、大パラス

がやがやがや

ナダル城に隣接するサン・デグ・ジュヴァッカ大聖堂広場に集まった観衆は30万人を超えている。集まった観衆の熱気と歓声で地鳴りがしそうだ
全世界に及ばず、今回は、魔界、天界、鳥界、獣界、物界、聖霊界、餌界、結界すべての世界と同時中継で繋がっている



10頁 勇者の後ろ姿



雲海を遥か下に見る高い断崖の山
頂上に、旅カラスの後ろ姿
旅カラスは雲に開いた穴を見る
「ワー!!」
三度笠に手をかけ大観衆の声(ふきだし)を見る
カラスの後ろから真っ黒な手の影がヌッと現れる
ふりむくカラスは人間の顔の影
「悪いな、5,000万しか手持ちはない」
「これでも助かるよ」
「人界にはもう降りんのでな」
「必ず返す、念書はいるか?」
「要らん、書いて貴様に意味はあるか」
勇者は笑う
「あばよ。必ず返しにくるぜ」
「返しには来なくていい」
「…」
「ナダルをどうにかしろ」
「…」
「我らが世界を救ったあの時の仲間じゃないか」
「ナダルの奴がああなっちまったのは…」
「…」
「俺のせいじゃないと思うんだが」
「ウルスラとアリスは殺される運命だぞ」
「運命は自分で切り開くもんだ」
「おぬしらしい…」
「お、じゃあな」

バサッバサッバサッ

小さくなる黄金龍の影



11頁 仕組まれた暗殺計画



ナダル城内は活気に満ちる
バザー、メルカト、屋台、縁日、カーニバル、ちょっとした逮捕劇や騒乱や人質事件などが町中で起こる
宮殿内は煌びやかに飾られ、各界からのVIPの席も埋まり、SPも配備につき、各教会、大聖堂、時計塔、駅ビルの屋上に対暗殺者向けの精鋭スナイパーも準備万端だ

会場
タキシードのボッチはマイクで案内をする
「さて、ペアのみなさん、位置についてください」

宮廷楽団が巨大円形舞台の出入り口から登場する。通路で演奏が始まると、こんどは舞台がせりあがり、舞台の真下に巨大オーケストラピットが現れた
「おお! 伝説の大指揮者、ヤザワ・フォン・ラザーロフだ!!」
タクトをふるうラザーロフ
音楽は始まる

8組のペアはそれぞれ、艶やかな衣装に彩られる
ラザーロフが振るうタクトに合わせた、フルオーケストラが壮大に始まった
ベンチュラペアは艶やかに舞台上を円を描いて踊り、ヤンペアは雑技や剣戟のごとく疾風する、エカテリーナペアは氷上を滑らかに滑るように、ウルスラは男から必死に逃げている、ルーシーは舞台上でペアと迷子、他のペアは華麗な社交ダンスをとヒップホップを繰り広げている


最初はベンチュラペアが舞台上で倒れた。次にヤンペアが倒れた
会場にどよめきが湧き、不穏な空気がみなぎった

それからアリス王女がカフカ王子が倒れ、他の社交ダンスペアもヒップホップペアも倒れた。舞台に立っているのは、カテリーナとウルスラとルーシーの三人だけだった

「暗殺だッ!!」

「取り押さえろ!!」

どこかから声が聴こえる



12頁 既視感




ウルスラは、皇女派遣学院の卒業の時に起きた、あの魔女狩りの既視感に襲われるのだった

「コイツは魔女だッ!!」

「取り押さえろ!!」



13頁 特殊部隊の突入




巨大円形舞台の角出入り口から、ナダル国防軍、特殊部隊が駆けこんでくる
「え、もう!?」
観客も世界中の視聴者も一同、凍りつく

ウルスラはボッチに念を送る

助けて!!

ダメです!!

ズコッー!!

なんでよ!! このままじゃ捕まっちゃうわ!!

私の百魔力を使えば
またたく間に部隊は壊滅します

じゃあ、早く!!

ですがここは、様子を見ましょう

ズコッー!!

なんの様子見よ!!

お嬢、大丈夫です
何かあったら私も元勇者パパさんもいます
ここはナダルを泳がせましょう

「取り押さえろッ!!」



14頁 ナダルの陰謀



ナダル城、地下牢
看守は澱んだスープに欠けたパンを入れた皿にをもって歩いてくる
「ほら、飯だ。おれたちの残り飯だがな」
「三人で分けろよ」
「ぺっ」

足音
コツコツコツ

ナダル王登場
「飯はうまいかな。カテリーナよ」
ウルスラは
「腹へった腹へった腹へった腹へった腹へった」
ナダルはさけぶ
「だまれ半魔女!!」
「魔界の前魔王!!」
カテリーナとルーシーは目をまるくさせる
「しーーーーーーッ!」
ナダル王は看守をよび、ウルスラとルーシーの分の飯を用意させる
ナダル王
「カテリーナ。貴様は私と共に過ごしてなにを盗んだのだ?」
カテリーナは横を向く。涙がこぼれる
「泣く女の横顔は美しいもの」
ナダルは笑う。カテリーナは泣きながら懇願する
「私はこのまま死んでもかまいません!!」
「せめて、せめて父と父の国を」
「グレナダ王国だけはお助けください」
ナダル王は哄笑する
「ダメだ」
「お前の父ドワーノフは」
「莫大な戦費支出の為に債務不履行で」
「人生がデフォルトだ」
カテリーナ
「どういうこと!?」
「ですか!?」
ナダル王は笑いながら
「貴様の父、ドワーノフ王は」
「いったいどこから武器を買っていたんだ?」
カテリーナは刮目する
「そうだ、隣国の、べタンパール共和国だ」
「べタンパール共和国とは三年前から」
「ナダル軍直属の石油採掘会社と深いつきあいがあってな」
カテリーナは泣き崩れる
「グレナダ王国は借金まみれで債務不履行なんだよ」
「その後はナダル軍が侵攻して地下鉱物資源を採掘する」
「世の中はそういうふうにできているんだ」
ウルスラは右手で腋を隠し手を挙げる
「なんだきさまは!?」
ナダルは笑う
「きさまは、カテリーナと一緒に処刑だ」
「バナナはお菓子に入りますか?」
ナダルは虚をつかれ、驚く
「へ!?」



15頁 ウルスラ石油採掘ファンド




「なんだいきなり!?狂ったか?」
ナダル王はさけぶ
「結局はBADはだれが優勝したの?」
「賞金は? だれに?」
ウルスラはナダルを睨む
「そんな出来レースなど私の一存でどうにでもなる」
ナダル王は笑う。そこでウルスラはナダル王に提案をする
「じゃあ、とりあえず」
「優勝者はだれにも害の及ばない、ルーシーにして!!」
「なんでだ!?」
「賞金がルーシーのものなら結局はナダル王のもの」
「あたりまえだ!!」
「その賞金の半分を私はルーシーから借ります!!」
「いい?」
ウルスラはルーシーに頼む
「いいよ」
ルーシーはひとつ返事
「だいたいそんな巨額をなにに使うんだ!!」
「またその半分を私はカテリーナに貸す」
パチンッと指を鳴らすと、そろばんを持ったボッチが現れる
「そうですね、ちょうど負債額は全額返済される額です」
ウルスラは話をつづける
「カテリーナはグレナダ王国の代わりに」
「デフォルトに陥った戦費の莫大な借金をナダル王に返済」
ナダル王はどなる
「残った四分の一はきさまがくすねるつもりか!!」

「私たち三人で、グレナダ王国の石油を堀りにいきいます!!」

ナダル王、カテリーナ、ルーシー三人
ズコッー!!
ズッコケる

「それでナダル採掘会社の石油開発費は浮くでしょう」
「カテリーナの祖国グレナダ王国は…」
「ナダル軍にこれ以上侵略されない!」

「ウルスラ、大っ好き!!」

カテリーナはウルスラを抱きしめる


第4話へつづく











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