なんでもない夜。コンビニ。
「あお」
振り返ると彼女がいた。
「うちも行く」
「傘1本しかないよ」
「いいよ別に」
アパートの急な階段を落ちるように降り、通りに出る。
外は雨で、思ったより強く降っていた。僕は傘をさし、彼女はそこに入った。
真夜中、銀色のフープイヤリングが彼女の位置を示す。
肩まで伸びた髪。出会った頃は男みたいに短く刈り上げられていた。
風に合わせて傘の向きを変える。時折風は強く雨は横を向く。
彼女は「ひゃー」と嬉しそうに僕に身を寄せ「カップルみたいじゃ」と笑う。
彼女は気分が高まると地元の言葉が出る。
「じゃ」と僕が意地悪く言うと「…だ!」と言い返すので「だね、でしょ」と返す。
「なに、女の子っぽいのが好きなの、君は」
「いや別に」
夜道を二人、1つ傘をさし、あてもなく。
坂を登り、下り、時折トラックとすれ違い、しばらくするとコンビニにたどり着いた。
オレンジ色のカゴに各々好きなものを放り込みレジに行く。
「あ」とわざとらしく言ったのは彼女。
「ん」と仕方なく僕は彼女の分も支払う。
帰りも傘を共有し、時折雨に濡れ、家に向かう。
生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。