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“問題発見能力”はどうしたら伸ばせるのか?【”アマビエ伝説”から学ぶ】

こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事の青木唯有(あおき ゆう)です。AO・推薦入試オンラインサロンのナビゲーターも務めています。

これまで長くAO・推薦指導に携わってきた私自身の経験から、AO・推薦に象徴される大学受験の大きな変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、特に保護者の方に認識いただくことで、大学受験を通じて形成される親と子の自立した関係「親子軸」を育むヒントにしていただければ幸いです。
※2021年度入試からAO・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」となりますが、本ブログでは便宜的に旧名称で記載しています。

「研究テーマ」の設定をどこにどう定めていくかは、AO・推薦入試においては柱です。

そして、大学入学後に取り組むべき「研究テーマ」を設定するために欠かせない資質が「問題発見能力」です。

研究テーマの設定とは「問い」を立てる行為ですが、これまでの学校教育では、答えを見つける力の養成がメインでしたから、問題は与えられるものという考え方が一般です。
社会に出てからもその本質はそれほど変わらず、社長や上司などの他者から与えられた問題を解決する力が高いことが、いわゆる優秀な人財としての定義でもありました。

ですが、これからの時代は「問題を発見する力」の方がより重要になります。
変化の激しい現代社会においては、問題が健在化してから策を講じるようでは、すでに手遅れになってしまう可能性が高いからです。

皆が認識する以前の潜在的な課題に気づき、顕在化する前にその芽を摘んだり、新しいチャンスにしたりする力がより求められるでしょう。

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ただ、これまでの日本の教育環境においては、自分自身で問題を設定する力を鍛えることは、指導する側ですら経験のない人がほとんどです。
そもそも、日本の教育の中でほぼ置き去りにされてきた「問題発見能力」とは、一体どのようなものなのでしょう?

話は変わるようですが、新型コロナウイルスの感染拡大の中で疫病退散の守り神として注目されるようになった妖怪「アマビエ」の姿をイメージしてみてください。

“病が流行ったとき、アマビエの姿を人々に見せると疫病が治まる” という伝説からSNSなどでそのイラストが広く拡散されましたから、認識されている方も多いと思います。

アマビエは、魚のような鱗で覆われた身体を持ち、口には鳥のようなクチバシがあります。
実は私は、この「魚」と「鳥」とが融合したようなアマビエの不思議な絵を見た時、AO・推薦入試で求められている「問題発見能力」は、まさにこのアマビエによって表せると感じました。

つまり、「鳥の目」「魚の目」を持つことが重要であるということです。

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AO・推薦入試に必須の「問題発見能力」の高さは、「鳥の目」としての物事に対する俯瞰力と、「魚の目」としての潮目を読む洞察力の高さにまさに比例するのです。

そしてこれらの特別な目は、最初から発揮されるわけではなく、見えない課題を発見しようとする姿勢そのものから結果として生み出されるものです。

最初から「見えない課題を発見するぞ!」と息巻いても、決して新しい問題を発見できません。
既に見えているものからスタートしていくことがコツです。

例えば、某国立大学水産学部のAO入試に合格したある高校生が自らの研究テーマの核となる「問題を発見したプロセス」 は本当に単純なことからでした。

彼は、自宅近くに流れる川が地域でもワースト1と呼ばれるほど汚い状況であることから、当初は水質汚染の問題に着眼します。

“汚染された水をいかに浄化するか?”

たしかに課題ではありますが、これは「発見された問題」ではなく、既に「共有されている問題」です。

市役所や水道局に取材し、図書館などに保管されている資料などで調べていくと、徐々に彼はこんな風に感じるようになります。

“水を綺麗にすることが、環境にとって果たして本当に良いことなのか?”

よくよく探究していく中で、水を浄化する際に目には見えないプランクトンまでをも殺してしまうことになれば、プランクトンに依存して生息する生物に影響を及ぼしてしまうと考えたからです。

“綺麗な水は、水生生物にとっては必ずしも良いことではないのかもしれない・・・”

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人間にとって都合の良いことが必ずしも地球環境にとってイコールではないという視点は、自分の目線からだけでは見えなかったことに気が付ける「鳥の目」によるものです。
また、「汚れたものを浄化する」というシステムの延長線上にある「人間以外の生物にとってのリスク」を捉える洞察は、まさに目には見えない流れを掴む「魚の目」だと言えるでしょう。

詳しいことは省きますが、素朴な問題意識を粘り強くたどっていった結果、彼の中にある「鳥の目」と「魚の目」が開かれ、独自の研究テーマが絞り込まれていったのです。

また、これはあくまでも私見ですが、「鳥」と「魚」の姿を有するアマビエの伝説がコロナ禍によってにわかに流行したのは、現代が本質的に求めている資質を象徴するアイコンとして社会全体が無意識的にキャッチしたからなのかもしれません。

では、「鳥の目」と「魚の目」を持つために何が必要か?
私の経験から考える、そのための考え方のポイントは以下の通りです。

・全てはニュートラルに起きている:マルバツで考えない
・出来事自体に意味はない:良い悪いと判断する人間がいるだけ
・“今”に集中する:飽くなき好奇心を大切に
・現状に満足しない:絶えず「行動」×「情熱」あるのみ

ちょっと抽象的ですね。
これは、ずいぶん前の私のノートに書かれていた「AO・推薦入試に向かう姿勢」についてのメモ書きです。何かの参考になれば幸いです。


次は「AO・推薦入試が”チーム戦”である理由」です。
お楽しみに。

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