※映画から台詞を引用させていただきますが、台詞はうろ覚えです。実際の台詞は映画でご確認お願いいたします。

ラジェンドラ・デサイのパブに「俺の女はどこだ？」と言いながらロッキーが現れる。ショーガールのミルキーが登場し、ロッキーを誘惑するように魅惑的に踊るが、「俺の女」とまで呼んで探していたはずなのに、ロッキーはそのミルキーの誘惑には関心がない。

だが、その場にリナが現れ、状況が変わる。ロッキーはミルキーを急に抱き寄せ、ミルキーの着ていた服が金色に変わる。リナは二人が踊る姿を見つめる。

この場面から始まる、映画『K.G.F :CHAPTER1』のパブのシーンが私は大好きだ。

ミルキーと踊っていたロッキーはカマルとその手下に囲まれ、そこに改めてリナが現れる。リナは撃つことは銃弾の無駄遣いだとカマルに言い、「撃つ価値はない」とロッキーに言い放つ。
言われたロッキーの表情がごくごくわずかに変化する感じがとてもいい。この表情の変化（空気のわずかな変化）がリナの挑発がロッキーになにがしかの影響を与えている感じがするからだ。そしてリナは言う。

「価値のない男に私を口説く資格はない」

端的で素晴らしい。リナがガチギレしているのが伝わってくる。

リナは何にキレている（怒っている）のか。
ロッキーがリナを口説いたのは公道とホテルなので、言葉通りに取るのならばその時の事を指すということになるが、リナは本心を言っていない。リナの目の前で起こったロッキーとミルキーのことに対して彼女はキレているのだ。

そして、そのことを知っているのはロッキーとリナだけであるという事が、このシーンを何よりも何よりも素晴らしくしてゆく。

「男らしさを（この場で）示して」という言葉がでて、あたかもこの場にいる全員がこの後起こる事を知るような形にされながらも、ロッキーとリナの二人だけがこの場で起こる事と言葉の本当の意味を理解できる話になってゆくのだ。

ロッキーがその場から立ち去るが、あれだけ強く啖呵を切っておきながらもリナは気落ちするような表情をする。だが気落ちして、戻ってきたロッキーが本当に手を伸ばし、触れられそうになると、リナは息をのんで身をすくめるようにして身体を引いてしまう。この引いてしまうところが本当に本当にいい。どれだけ言葉で「あなたのものになる」と言って啖呵を切っていても、身体（心の奥底）はついて行っていないことが伝わってくる。ロッキーは伸ばしかけていた手を止める。

そして「恋している人間は嫉妬深い」と言うのだ。

「価値のない男に私を口説く資格はない」とリナは言っているのに、その言葉に対する返事としては意味が通じないが、ミルキーとのことを通せばわかる。リナが事を起こした怒りの原因は嫉妬で、嫉妬をしているのは恋をしているから。

リナがロッキーを愛している事を示してロッキーは続ける。
「引き金に指をかけたから殺し屋か　女に触れたから男か」
言ったロッキーの表情に甘さがなくていい。リナの啖呵に対して啖呵を切り返している鋭さのようなものがあるけれど、それはリナを舐めずに向かい合って相手にしているということになるのではないだろうか。そして最後に言う。

「俺の価値は俺を愛している人が判断する」

リナが判断することだ、と言うのだ。

価値については自分の胸に聞いてくれとリナに言って、ロッキーは自分の価値についてはリナに預けたということに私はしたい。完全なる想像だけれども、ロッキーは嫉妬でリナの目を自分に向けさせて、自分がどういう男かというのをリナの前に示して、正面から見させたのではないだろうか。その上で、示した（証明した）ものの判断についてはリナに預けたというの見方はどうだろう。

リナが心の奥の方で言葉を聞いているようにじっとロッキーを見たままなのが最高にいい。「ところで」とロッキーが言って空気を変えるまで、起こっていることが完全に二人だけの事になっている空気が最高に最高に素晴らしい。

ラジェンドラ・デサイが現れて、リナが立ち去るときに最後に振り返るところがまたいい。リナの気持ちが視線の先にあるロッキーにものすごく残っている感じがして素晴らしい。

一見啖呵の切りあいになっていますが、色々繊細に描かれていてとても素晴らしいシーンで、私にとっては、何度でも見たくなる推しシーンです。

ここもめちゃくちゃ推しシーン

（そしてそんな出来事を経て、ロッキーのペンダントがリナの手元にわたったのに、CHAPTER2冒頭での出来事があり、気持ちが離れたと思いきや繋がってはいたり、さらに触れたから腕を切り落とされる男や侮辱したから至近距離から銃をぶっぱなされる男がいたりして、最終的に触れるのはMehabooba でリナの方からっていうのがまた長い長い旅路で良いですね）

※ふせったーに投稿した記事を再録しました。

2024.3.4　文章を一部修正しました