青草

ジュブナイルが好きです。子供時代をテーマに小説を書きます。

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マガジン

  • 短編集

    短編小説を置くマガジンです。

  • 【短編小説】転がる石(仮題)

    36歳の崖っぷちボクサー井ノ坂は、休養のため訪れた故郷でスマホを落とす。 拾い主に電話が繋がり安堵する井ノ坂に、スマホの向こうの少年は、奇妙なことを語り始める──。 ※原題:「A rolling stone gathers no moss」の各話をまとめたマガジンです(タイトルが長すぎてマガジン名にできず、仮題です...)

  • 【連載小説】空想少年の宿題

    ノートに空想ばかり描いている小学6年生の純平は、いつものように何もない夏休みを過ごすはずだったー。 幼馴染のテッちゃんの誘いで、謎のUMA “ 雨男 ”を探しにいった彼は、傷ついた宇宙船を発見する。 宇宙船のAIに頼まれ、不思議な少女を助けたことをきっかけに、彼の運命は大きく動き出し、やがて人生最大の宿題に挑むことにー。

最近の記事

  • 固定された記事

【掌編小説】君と恨めし屋

 ぼくの学校では、6年生の思い出づくりに「学校でお泊り」がある。  夏休みに学校へ来て、みんなで体育館に泊まるのだ。  仲の良い友だちと布団を並べて、夜な夜なおしゃべりをする。考えただけでわくわくするでしょ?  けど、それだけじゃないんだ。  この行事の最大の魅力は、なんと言っても校舎全域を使った肝試し。  子どもたちは4人ひと組になり、夜の学校を探検する。チームに許されたアイテムは懐中電灯1つだけ。  夏休みの映画みたいな体験を本当にできるというのだから、ぼくはずっと楽しみ

    • 「A rolling stone gathers no moss」完結(あとがきのようなもの)

      3月から連載してきた「A rolling stone gathers no moss」が無事完結しました。 読んでくださった方、本当にありがとうございました。 夢に挫折して、サラリーマンになるも数年でまた挫折して、そんな時見つけたのが小説を書いてみたいという気持ちでした。 そこから書き始めるまでにまた時間がかかったり、どこにも公開せず夜な夜な書いたり...書かなかったり... つくづくマイペースというか、ナマケモノな私ですが、こうして投稿してみて本当に良かったです。 同じ

      • 【短編小説】A rolling stone gathers no moss 最終話「nine」

         決戦当日は、3月にも関わらず各地で夏日が予報された。  井ノ坂は、ジャージの下にじわり汗が滲むのを感じながら、試合会場の前に立っていた。  『おかけになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか――』  耳元で機械的な音声ガイダンスが流れる。  もうあの無邪気な甲高い声は聞けないのだと井ノ坂は悟った。  スマホを握る右の拳を夏のような日差しが温めていた。目を細めて空を見上げると、飛行機雲が遠く伸びていくのが見えた。井ノ坂は、静かにそれを見送った。  ――ありがとう、少

        • 【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第8話「eight」

           試合が決まってひと月が経った頃、井ノ坂の拳は快音を響かせていた。会長が次々に構えるミットを目がけ、素早くパンチを打ち込んでいく。その光景をジムの練習生たちが見守っていた。  「ようし、終了だ...」  「ハァハァ...ありがとうございました...」  「いいぞ、井ノ坂。どのパンチもよーくキレとる。それに以前より重さも増しているようだ...」  会長は、驚きの目を向けた。  井ノ坂も手応えを感じていた。  「会長にミット持ってもらうと、やっぱり気合い入りますから...」

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        【掌編小説】君と恨めし屋

        • 「A rolling stone gathers no moss」完結(あとがきのようなもの)

        • 【短編小説】A rolling stone gathers no moss 最終話「nine」

        • 【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第8話「eight」

        マガジン

        • 短編集
          2本
        • 【短編小説】転がる石(仮題)
          10本
        • 【連載小説】空想少年の宿題
          8本

        記事

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第7話「seven」

           「再戦って...もう一度戦えるってことですか?」  『そうだ...向こうの陣営が強く希望しとってな』  再戦を要求してきたのは、先日の大晦日の対戦相手だった。井ノ坂から3度のダウンを奪った因縁の相手。  「しかし...どういう風の吹き回しです?」  勝っておいて、要求してくるということは、何かしらウラがあるはずだ。  『うーん...』と会長はため息を吐くように唸ってから、続けた。  『理由なんざ1つしか思い浮かばん。あの試合後の世間の声は、お前にも届いとるだろう?

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第7話「seven」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第6話「six」

           スマホ画面の向こうから差し込んでくる目が眩むような光。頭上にはギラギラした夏の太陽が浮かんでいるのだろう。少年は、日焼けした腕で額の汗を拭いながら、真剣な眼差しを送ってくる。少年の側からは、youtubeの試合映像が見えているのだ。  井ノ坂は、過去の試合は全て再生リストに保存していた。勝っても、負けても、必ず見直して課題を見つける。それを途方もない練習量の中で、毎日少しずつ修正していった。  最もそれで勝ちが保証されるわけではない。それでもそうして一歩ずつ歩みを進めていけ

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第6話「six」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第5話「five」

           翌日も井ノ坂は公園に向かった。  雪は止んでいたが、相変わらずの曇り空だ。  降り積もった雪に足跡をつけながら、とぼとぼと歩いた。こんなに積もられちゃロードワークもできないなと考えたが、もうその必要もないかと白い息を吐いた。  公園に着くと、井ノ坂はポケットから妻のスマホを取り出した。今日も落としたケータイを探しに行くと口実をつけて借りてきたものだ。  昨日と同じように自分のスマホに電話してみる。  2度、3度とコール音を聞いているうちに、昨日の電話は夢だったんじゃないか

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第5話「five」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第4話「four」

           スマホ画面に映る少年は、目を丸くした。『なにこれ...テレビ?』と言いながら、涙と鼻水を日焼けした腕で拭う。  ティッシュで拭け、と思いつつ、井ノ坂は他人事に思えなかった。   少年は、幼い頃の井ノ坂そのものだった。首まわりが伸びたTシャツにも見覚えがある。小学校高学年の時によく着ていたものだ。  子どもの頃の動画を見ているようにも思えるが、井ノ坂が手を振ると、少年も手を振り返してきた。  極めつけは、背後に見える滑り台だ。井ノ坂のいる公園にも同じものがある。ただし、

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第4話「four」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第3話「three」

           「今なんて言った?」  『だからぁ、どうして俺の名前がわかったの?』  電話の向こうの少年が怪訝そうに聞いてくる。  井ノ坂が名乗ったのに、少年は自分の名前を言い当てられたと思っているようだ。  井ノ坂は、頭をひねる。  同姓同名?  いや、“ 井ノ坂龍一郎 ”なんて長い名前、然う然う被るものじゃない。  親が熱心なボクシングファンで自分にあやかって名付けた?  いやいや、あやかるなら自分じゃなくても...  頭の中で、いくつかの可能性が浮かんでは消えていった。  「

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第3話「three」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第2話「two」

           ポケットに入れていたはずのスマホ。一体いつどこで落としたのか。もしかすると公園のベンチに座った時だろうか。  井ノ坂は、妻にスマホを借りて、再び公園に向かった。コールすれば、バイブレーションが鳴るはずだ。近くにあれば、きっと見つけられると思った。  公園に着き、さっそく自分の番号に電話してみる。  耳元で数回コール音が流れた。  しかし辺りは静まり返っており、バイブレーションの音は聞こえない。  まさか電源が落ちた? それとも他の場所で落としたのか。  大粒の雪は、しんし

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第2話「two」

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第1話「one」

           ワンツー。ワンツー。ワンツーフック、そこからアッパー...  井ノ坂の目には、少年がシャドーボクシングをしている光景が浮かんでいた。ぎこちないフォーム。テレビで見た試合の見様見真似だ。それでも少年は、楽しそうに同じコンビネーションを続ける。  「はぁ...」  深めに吐いた息とともに、少年の姿は消えてしまう。  灰色の雲に覆われた空の下。井ノ坂は、公園のベンチにだらっと座り込み、ぼんやりしていた。負傷した右の拳が、かじかんで余計にズキズキと痛んだ。彼はそれをかばうよう

          【短編小説】A rolling stone gathers no moss 第1話「one」

          【連載小説】空想少年の宿題 第8話「友達になれたらいいな」

          第8話「友達になれたらいいな」  僕が声を出そうとすると、突然女の子は僕の口を手で押さえ、「静かに!」と小声で言った。 「あんでいみがここい...!」  塞がれた口では、「なんで君がここに」と言えなかった。   と、その時、下の階から電話のコール音が聞こえてきた。  母さんが出て、電話口で何か言ってる。  女の子は、もう一方の手で人差し指を口元に立てると「しーっ」とささやいた。  窓から入ってきた南風に混じって、石鹸みたいな匂いがする。  「じゅーん? 電話よー?

          【連載小説】空想少年の宿題 第8話「友達になれたらいいな」

          【連載小説】空想少年の宿題 第7話「先生の家」

          第7話「先生の家」  団地に置きっぱなしの自転車を諦め、いつかのカブトムシを捕りに来たルートを下った。  雨粒が跳ね回る音が強くなり、時々雷鳴が唸るように聞こえる。  テッちゃんは息を切らしながら、ずり落ちて来る女の子の体を何度も背負い直した。  「ごめん、テッちゃん。大丈夫?」  「はは、全くオタク使いの荒いヤツだよ、お前は。はぁはぁ...良いから...足元照らせ」  「うん」  そのやり取りのあと、僕もテッちゃんも押し黙って歩いた。  日が落ちた丘は、まるで深い森の

          【連載小説】空想少年の宿題 第7話「先生の家」

          【連載小説】空想少年の宿題 第6話「助けなきゃ」

          第6話「助けなきゃ」  「うっ、宇宙船だって...?」  僕が丸い目を隣に向けると、テッちゃんも同じ目をして首を振った。  「時間が...ありまセン。名前も知らない子どもたち...君たちにお願いが...ありマス...博士を......」  やわらかい男性の声が途切れ途切れになり、やがてヘッドライトの明滅が止んだ。  「おい、どうした? 博士が何だって!?」  テッちゃんが問いかけても、返事はない。光を失った大きな船体は、闇の中に佇む岩のようだった。  宇宙船の声

          【連載小説】空想少年の宿題 第6話「助けなきゃ」

          【連載小説】空想少年の宿題 第5話「鋼鉄のオタマジャクシ」

          第5話「鋼鉄のオタマジャクシ」  「何か分かったら、また来るよ」  そう告げて悠と別れ、給水塔の丘を登っていた。  「はぁー。この傾斜、オタクには堪えるわぁ」  テッちゃんが、肩で息をしながら文句を言う。 「給水塔って、こんな道、通らなきゃ行けないんだっけっ」  頭のてっぺんまで生い茂った雑木林の木々を見上げて、僕は聞いた。  頭上に気を取られていたら、危うく滑りそうになり、慌てて体勢を立て直す。足元の土が雨を吸って、湿ったままなのだ。  「気をつけろよ、純平。俺

          【連載小説】空想少年の宿題 第5話「鋼鉄のオタマジャクシ」

          【連載小説】空想少年の宿題 第4話「怪物のすみか」

          第4話「怪物のすみか」  少年の名は、細田悠。  僕と同じ学校に通う小学4年生で、公園の真ん前の27号棟に住んでいるそうだ。  丸々とした体型に似合わない苗字だと指摘したら、クラスメートにもそれをいじられているらしい。僕も隅っこ隅野って揶揄われることがあるし、テッちゃんも僕といるせいで、となりの照彦(本当は隣野ね)と言われたりするから、僕らは彼の苗字について、それ以上何も言わなかった。  そして、彼は、なんとあのネット掲示板の投稿主でもあった。  「昨夜、トイレで目が

          【連載小説】空想少年の宿題 第4話「怪物のすみか」