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Novelber/05:トパーズ

『怪盗カトレア』が最初に狙ったのは、とある富豪が所有しているブルートパーズだったとされる。トパーズが安置されているべき場所に『怪盗カトレア参上』と書かれたカードが残されていたことから、かの怪盗が『怪盗カトレア』という名であることが明らかになったのだった。
 それから『怪盗カトレア』は首都のあちこちで高価な宝石「のみ」を奪い去る、まさしく怪盗の名に相応しい活躍を見せていたが、ある時からはそれに加えて予告状を出すようになったのだった。盗むものをあらかじめ宣言するという大胆不敵な犯行予告を出しながら、警察の周到な捕縛作戦をかいくぐり、『怪盗カトレア』は尻尾ひとつ掴ませることなく盗みを成功させている。
 果たしてこれから『怪盗カトレア』はどの宝石を盗み出すのか。警察は『怪盗カトレア』を捕らえることができるのか。ここからは、今までの『怪盗カトレア』の犯行記録を辿っていきたいと思う――。
 
 ――そんな『怪盗カトレア』の遍歴を書きたてた雑誌を繰りながら、『ヤドリギ』はほんの少しだけ口の端に笑みを浮かべる。
 どうして『怪盗カトレア』が予告状を出すようになったのか。
 その本当の理由を知っている『ヤドリギ』は、いつかの彼女の失敗――彼女が盗もうとしたターゲットが「既に消え去っていた」珍事のことを思い出すのであった。
 
(ある日の『獣のはらわた』にて)

あざらしの餌がすこしだけ豪華になります。