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vol. 43 もう一つの月が教えてくれたこと。

2024年1月20日の夜中、とあるライブ配信をドキドキしながら観ていました。JAXA月面探査機「SLIM(スリム)」の月面着陸の生中継です。無事SLIMは着陸し、日本は世界で5番目に成功しました[1]!日本の技術が地球を飛び越え、月に届くことは何てすごいことなのだろうと思いながらSLIMのニュースを見ていました。

月面着陸したSLIMですが、トラブルが発生しました。SLIMに装備されている太陽電池に太陽光があたらず、発電できなかったそうです。太陽電池が充電されないとSLIMが上手く動かず、月面調査が困難になります[1]。残念ながら、太陽電池は発電していないそうなのですが(2024年1月22日時点)、SLIMに搭載していたバッテリーのおかげで、月のデータ収集は成功したそうです[2]!SLIMが見た景色はどのようなものなのでしょうか。想像するとわくわくします。

発電トラブルのニュースを知った時、KIMCHI and CHIPSの作品《Another Moon》を連想しました。青い月が夜空に映し出される様子は、その美しさに目を奪われますが、作品のコンセプトがまさにSLIMが直面したトラブルについて言及しているかのように感じました。

そもそも月がなぜ光っているかというと、太陽光が月に反射しているからだそうです[3]。このことを踏まえ、《Another Moon》の照明は、日中に集めた太陽光がエネルギーとなり、夜間に青い光を放ちます。青い照明の明るさは、日によって変わります。日中に太陽光をたくさん集められなかった日の夜は、照明の点灯中に太陽電池のバッテリーがなくなると、照明(レーザー)が1つずつ消される仕組みとなっています[4]。

この仕組みを通して、KIMCHI and CHIPSは再生可能エネルギーと私たちの関係性を描いています[5]。太陽光や風力など、人間がコントロールできないエネルギーをいつ・どれくらい得ることができるかによって、私たちの生活に大きな影響があることを伝えているのかなと思います。部屋の電気をつける、ネットサーフィンをする、温かいお風呂に浸かる….私たちの日々の行動は、エネルギーがなければ何ひとつできないですし、貴重なエネルギー、大事に使いたいと改めて思いました。

SLIMの発電トラブルのように、地球を飛び出しても人間とエネルギーは密接な関係だなと感じました。SLIMのニュースや《Another Moon》を通じて、エネルギーとの向かい方を再度考えるきっかけとなりました。

<引用>
[1] JAXA月面着陸成功、日本独自技術の高さ証明…SLIMは地球に帰還する機能なし. 読売新聞. 2024-01-20, 読売新聞オンライン,
https://www.yomiuri.co.jp/science/20240120-OYT1T50217/, (参照 2024-01-22).
[2] 月面探査機、データ送信に成功 精密着陸の成否検証へ. 日本経済新聞. 2024-01-22, 日本経済新聞, , (参照 2024-01-23).
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC224BF0S4A120C2000000/
[3] “月はどうして光っているの?”. 学研キッズネット. 2022-01,
https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0391/, (参照 2024-01-22).
[4] Kimchi and Chips. “Another Moon”. Kimchi AND Chips.
https://www.kimchiandchips.com/works/anothermoon/, (参照 2024-01-22).
[5] Prix Ars Electronica, “Another Moon”. Prix Ars Electronica. 2022.
https://calls.ars.electronica.art/2022/prix/winners/10165/, (参照 2024-01-22).

<参考文献>
Filip Visnjic, ”Another Moon - Kimchi and Chips”, Creative Applications, 2022-04. https://www.creativeapplications.net/c/another-moon-kimchi-and-chips/, (参照 2024-01-22).

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