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vol.30雪見だいふくなうさぎと光るうさぎ。

少し前に、友人とディズニーストアに行きました。ストアに入った瞬間、うさぎの格好をしたミッキーやミニーたちのキーホルダーがずらりと並んでいたので思わず、

私:「もうイースター*グッズ販売しているの?!」
友人:「いや、来年は卯年だからうさぎ関連のグッズが販売しているんでしょ?」

とツッコまれました。来年は卯年だということをすっかり忘れていました…….。そしてアメリカで生まれたディズニーと日本の伝統行事が結び付かなかった私でした。

*イースター:キリストが死から復活したことを祝う3~4月頃に行うお祭り。うさぎはイースターエッグ(復活祭の卵)を運んできます。

今回は何について書こうかなと思った時、この会話を思い出したのでうさぎの作品を2つ紹介したいと思います。

1. 雪見だいふくなうさぎ
2.光るうさぎ


1. 雪見だいふくなうさぎ

私は「浮世絵」「うさぎ」と聞くと、漫画の元祖といわれている鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)を連想します。うさぎやカエルが漫画キャラみたいですし、絵の中にどのようなストーリーが描かれているのか気になりますが、今日は別の気になるうさぎについてです。

藪長水《Portrait of a Rabbit(兎)》1867年

ででん。ど正面!
鳥獣人物戯画のように、うさぎの浮世絵は横向きで描かれているイメージが強かったので正面から見るうさぎは新鮮です。丸々としたうさぎのフォルムが雪見だいふくみたいで可愛いです。この絵を描いた藪長水(やぶ・ちょうすい)(1814~1867年)のことをググってもなかなか情報が出てきません。分かったことは、

  • 大阪生まれ、儒学者・藪鶴堂(やぶ・かくどう)の息子

  • 文人画*の第一人者、池大雅(いけの・たいが)の孫弟子、岡熊岳(おかゆうがく)に絵を習い、肖像画や人物画を描いた。

  • 幕末には、大坂を代表する絵師のひとりとなった!

*文人画:文人(儒教と文学を勉強した人)が趣味で描いた絵

2014年には、大阪歴史博物館で生誕200周年記念「幕末大坂の絵師 藪長水」展を開催したのですが、それ以外の情報や作品画像はあまり見つかりませんでした。マイナーな絵師なのでしょうか?

でもグッズはたくさん販売されていますが、詳細情報を見つけることができない、不思議なうさぎです。うさぎのお腹に何て書かれているのか気になります👀。どなたか藪長水についてご存じでしたら教えてください 🙂!

2.光るうさぎ

バイオアートの先駆者である、エドゥアルド・カック(1962年〜)は、2000年に光るうさぎを発表しました。CG画像ではありません、本物のうさぎです!

エドゥアルド・カック《GFPウサギ》2000年

クラゲが持つ、光るタンパク質(GFP)をうさぎのDNAへ入れた結果、ブルーライトの元で緑色に光るうさぎ「アルバ」が誕生しました。この作品は世界中で物議を醸し、共同開発をしたパリの研究所はカックにアルバを引き渡すことを拒否しました。カックの夢であったアルバと一緒に暮らすことが叶わないまま、アルバは死んでしまいました。

2.1 なぜカックは遺伝子組み換え作品を作ったのか?

カックは、人間・動物・ロボットの境界を探っており、その延長線上で遺伝子組み換えの作品を制作するようになりました。カックは「昔は戦争や産業といった限られた場でしか使われていなかったパソコンが今や誰でも入手できるように、バイオ技術も私たちの生活に溶け込むのでは?」と考えました。実際にアメリカの高校では、簡単なキットで遺伝子組み換えバクテリアを培養しているそうです。もうすでに「遺伝子組み換え」という言葉は、私たちにとって日常的なものとなっているのかもしれません。
(参考:エドワルド・カッツ, 「生命の変容―芸術の突然変異」, アール issue 07 / 2017)

2.2 《GFPウサギ》、写真盛りすぎ?な件

世界中で有名になった《GFPウサギ》は、「こんなに緑色に光らないのでは?」と疑われていました。結局、証明できないままアルバは死んでしまったので本当のことは分からないままです。ですが、カックの《GFPウサギ》プロジェクトが次々と現実となりました。

●2008年:「光るタンパク質」、下村脩博士たちが発表しノーベル化学賞を受賞。
●2013年:「光るうさぎ」、トルコとハワイの大学研究所が暗闇に光るうさぎを発明。

カックのプロジェクトが13年越しに証明されました!この技術は、今後医療やエネルギー問題に役立ちそうです。例えば、街路種の葉が自ら光合成をしてCO2削減に貢献したり、人間のガンをピンポイントで見つけることができるのかもしれません。私たちにとって「遺伝子組み換え」という言葉はますます日常的な言葉になりそうです。


参考文献:
CNN, 2013, 「暗闇で光る蛍光ウサギ、トルコの大学で誕生」, <https://www.cnn.co.jp/fringe/35036047.html>

Eduardo Kac, 「Bio Art」, <https://ekac.org/transgenicindex.html>

エドワルド・カッツ, 2017,「生命の変容―芸術の突然変異」, アール issue 07 / 2017,<https://www.kanazawa21.jp/tmpImages/videoFiles/file-52-11-file-2.pdf>

藝大アートプラザ, 2022, 「バーチャル背景にもおすすめなかっこいい浮世絵30選!歴史や背景も徹底解説」, <https://artplaza.geidai.ac.jp/sights/16379/>

大阪大学, ReSOU, 2016,「「光るタンパク質」で医療やエネルギー問題に貢献 未来社会を大きく変革する」,<https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2016/u8rq1b>

大阪歴史博物館,2013,「幕末大坂の絵師 藪長水」, <http://www.mus-his.city.osaka.jp/news/2013/yabuchousui.html>

岡山大学, 2014, 「クラゲの蛍光タンパク質で、血中がん細胞を捕獲 遺伝子変異の高感度検出が可能に」, <https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id200.html?>

下村脩、下村幸、ジョン・H・ブリネガー, ヨコハマトリエンナーレ, 2020, 「光に導かれて――クラゲ、GFP、そして思いがけぬノーベル賞への道」,<https://www.yokohamatriennale.jp/2020/concept/source/luminous-pursuit/>

WIRED, 2002,「蛍光色ウサギは本物か(上)」, <https://wired.jp/2002/08/20/蛍光色ウサギは本物か上/>

WIRED, 2002,「RIP: Alba, the Glowing Bunny」, <https://www.wired.com/2002/08/rip-alba-the-glowing-bunny/ >


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