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鑑賞録 #15 「ヘルヴァ・ボス シーズン2 第4話:WESTERN ENERGY」

これを観たあとに本気でバッド入って冗談じゃなく本当にベッドから起き上がれなくなった回。

そんなに落ち込む原因になったのは本編というよりラストのブリッツとストラスのチャット画面だが、ストラスに感情移入し過ぎていたことと、彼の状況が非常に切なく、共感するあまりまるで自分自身のことのように思ってしまったことが要因である。

あとは初見時がノーガードすぎた。今観ても切なさを感じるが、ベッドから起き上がれないほど落ち込みはしない。



囚われのストラス

本編ではストラスとステラの離婚調停 in Café with アンドレアルフスの場面から始まり、またしてもステラの雇った殺し屋のストライカーによって襲撃を受ける。

すぐさまストラスがフル・デーモンになったので「残念だったなストライカー!ストラスは余裕で逃げられるぜ!」と思ったが、なんと彼は祝福されたロープ(blessed rope)を使っていたようでストラスは捕縛されてしまう。

あ〜でたでた「祝福された」のやつ。
アンデッドタイプにケアル系やホーリー系を使うとダメージになるみたいなあれだ。

一瞬「なぜblessed ropeがストラスに悪影響を?」と思ったが、ストラスは悪魔である。しかもGoetiaに名を連ねる大悪魔だ。めちゃくちゃ効くに違いない。

キリスト教に馴染みがないので「祝福された」といわれると概念がいまいちピンとこないが、神道でいうところの「お祓い」効果や「お清め」効果みたいなことだろうか。いずれにせよ「聖なるほにゃらら」が「邪悪なほにゃらら」を打ち消すとか「穢れを祓い浄化した」みたいなニュアンスだ。

このロープはダメージこそ与えないが魔力を封じ込めるような働きをしていて、ストラスはフル・デーモン化できないし1x2で賊に使っていたような石化させる目も使えない。

2x2のテレビ局で見せた「ペットボトルを投げつける程度の暴力さえ直視できない」描写からも分かるとおり、ストラスは物理的な攻撃に不慣れで肉弾戦など縁がないのだろう。

"Eh!"とか言いながらペットボトルを投げるストラス

彼のような貴族は言葉を武器に戦闘するからなのかもしれないが、言葉で戦うからといって武力がないわけではない。

しかし彼は賢いので、自分の力が「フル・デーモン化してちょっと咆哮を聞かせてやるだけで大概のことはおさめることができる程度の力」だと把握しているだろう。

つまり「暴力を行使するまでもない」という圧倒的強者の佇まいである。

それゆえまさかインプごときにやられると思っていないストラスは当初余裕そうだったが、いよいよ本当に危機に瀕していると知ってやっと焦り出すのだ。

「捕まっちゃったから助けてくれない?」とブリッツに電話をかけるが、ストラスがめちゃくちゃ強いことを知っているブリッツは「えーちょっと都合悪いかもぉ」みたいな緊張感のないやりとりをしている。

しかし「あ、これマジのやつ」と気がつきストラスを助けなければと真剣になるが、彼も彼で愛娘をS.H.O.Tに連れて行くという超重要任務があって身軽に動けない。

そこで、M&M夫妻が代わりに救出に向かうことになる。

M&M夫妻は1x5でストライカーに散々痛めつけられた経緯があるから、ストラス救出のついでに一泡吹かせたいよね。

今回ストライカーの貴族への恨みの原因がうっすらと仄めかされたが、いつかの記事にも書いたとおり「関係ねえ」と思ってしまう。

恨みの対象が「貴族」というだけで直接関係のないストラスを嬲ったり、貴族と関係を持っている同族のブリッツやフィズを嫌悪している紛れもないレイシスト(厳密には種族差別ではないからか2x6ではsupremacistと表現されている)であるし、それに個人的には清潔感がなく見えて嫌いだ笑

https://youtu.be/KJy7T24rhg0?feature=shared

同じインプのブリッツやフィズは清潔感があるが、ストライカーはなんか不潔そうに見えてしまい振る舞いよりも外見が好感度を下げている。

(ストライカーの声はパイロット版HHのアラスター役を務めたEdward Boscoが担当しているらしいが、それでも全然好きになれない)

ところが、モクシーに「どんなカウボーイですか?」と聞かれたストラスが「うーん……セクシー?」と答え、モクシーが「ストライカーだ!」と即座に理解している。

その場の誰も「あいつってセクシーか?」と言わなかったからミリーやブリッツも同感ではあるの?作中の基準ではストライカーってセクシーなの?
マジかよ。



He can get HURT?

祝福されたロープで力を封じられた上に祝福されたナイフによって何度も刺され、骨まで折られるという痛ましい状態に陥るストラスだが、貴族の矜持か命乞いをしたりやめてくれと懇願するような姿を一切見せない。

通常はブリッツやオクタヴィア、あるいはGoetia関係者への態度でしかストラスの振る舞いを見る機会がないが、品がありながらも敵対している相手への容赦のない物言いが垣間見られて新鮮だ。

しかしストライカーに抗う術がないことも事実でどんどん追い詰めらる描写が続くのだが、2x1でちびストラスを見ているせいで苦しんでいる顔に幼いストラスの面影を見てしまってちゃんとつらい。

ギリギリのところでM&Mが現れてストラスを救い出すが、ストライカーの過去がどんな酷いものだと分かっても情状酌量の余地なしのサディストっぷりだ。


愛娘のS.H.O.Tをようやっと完遂したブリッツとM&M夫妻が病院前で合流し、報道陣や医療関係者でごった返す中ストラスの載ったストレッチャーが通り過ぎる。

「なんの騒ぎだ?」と聞くブリッツに「ストラスが重傷を負ったの」と答えるミリー。

ストラスを強き者だと理解しているブリッツは一瞬「なんの冗談w」みたいな反応をしてるけど、すぐ真顔になって "He can get HURT?" と戸惑う。

「ストラスが重傷を負った」ことに衝撃を受けるブリッツ

hurtは肉体的に傷つくことも指すが、痛み自体や心が傷つくことも表せる。

肉体関係まで持ちながらも一線を画した別次元の存在だと思っていたストラスが、自分たちと同じように「傷つく」のだと知って驚いたのだろう。

それほどまでに彼の中でのストラスは強者であり、別の生き物であり、肉体的にも精神的にも「傷つく」なんてこととは縁遠い存在だと思ってたんだろうな。


ストラスは病院のベッドの上でたくさんの花に囲まれてはいるが、表情は悲しげだ。

枕元のスマホに着信があり、ブリッツからのメッセージが届く。

スクロールされるチャットの履歴にはストラスからの長文のメッセージとそっけなく一言で返すブリッツの返信が並んでいる。

その最後、最新のメッセージには
"GIT BEVVER SWOON :(" の文字が。

https://youtu.be/KJy7T24rhg0?feature=shared

それを見て切なげに微笑み、すぐに返信するストラス。
ブリッツからも返信がありそうな気配がしたが、結局何も返ってこない。

徐々に望みを失ったような表情になり、静かにスマホを置く。そのまま枕元の花が花びらを散らしていく描写と共にエンディングを迎える。

せ、切なすぎる……TT

私がどん底まで落ちた原因はこの一連のメッセージのやり取りであるが、「ほほー!ストラスとブリッツのやりとりじゃん!どれどれ〜?」という興味本位で覗いてしまったせいであまりのギャップにぶん殴られた形だ。

表示されていたメッセージは1x7で後味の悪い別れ方をした後から今日に至るまでの履歴だと思われるが、ストラスはなんとかブリッツとの仲を良好なものにしようとものすごく気を遣っている様子が分かる。

謝りたい、話をさせてほしい、君を傷つけるつもりはなかった、申し訳ない、君が気にしていないならいいんだ、私が大袈裟に考えすぎていただけ、あれはユーモアだったのだから私は気にしていない、今日はありがとう、人間のショーでの君は素敵だった、今日は会える?、でも邪魔はしたくない、気が進まないなら満月の夜の約束をスキップしたって構わない、でも会いたい。

丁寧にメッセージを送っては「なんで?」だの「別に」だの「忙しい」だの「りょ」だのと冷たく返されているのを見て私がとても傷ついた。
ブリッツの「遠ざける」悪癖を理解してはいるが、共感できていないのでとても冷淡な対応に見えてしまい反感を覚える。

1x6では人間に囚われたブリッツの危機に駆けつけつつも
"Who dare threaten my impish little plaything." と、ブリッツを「おもちゃ」呼ばわりしていたストラスだが、いつからかブリッツを単なる玩具とは思えなくなってしまい、それによって苦しんでいる。

ブリッツへの気持ちに苦しんでいる様子もストラスの魅力ではあるとはいえ、なぜVivはこれほどまでにストラスを痛めつけ叩きのめすのか。

まるで進撃の巨人におけるライナーの扱いである。

ちなみにブリッツが送った"GIT BEVVER SWOON :("というのは、おそらくGET BETTER SOON(= お大事に、早く元気になって😢)のtypoだと思われるが、最初は全然意味が分からず「ブリッツなんて言ってんだこいつ?」とイラッとした。

ストラスがすぐに理解しているように英語圏の人たちや英語が得意な人なら即Get better soonね!と気づくのだろうが、私は先にスラングの可能性を考慮して悩んだし、その後メッセージの履歴を読んでブリッツにはひどいtypo癖があると分かったからこそ思い至ったレベルである。

……いくらtypoでもGIT BEVVER SWOONにはなんないって。



余談

何か作品を観てインスタントに共感しインスタントに感動してインスタントに涙を流すというチョロさは持ち合わせているものの、あくまでもその場限りの感情で終わる。

それがフィクションのキャラクターだろうと生身の芸能人や著名人だろうと、常に分厚い隔たりがある。

酷い目に遭っていることを知れば怒りや悲しみが湧くことはあるが、その人のために本気で何かしてあげたいと思ったり、その人のために大金を注ぎ込もうと思うこともない。

実際に関わりがある大切な相手にならそういう献身的な行動をとることはあるけれど、それ以外の誰かというのは結局はこっちが一方的に知っているだけの無関係の誰かである。遠く離れて見ているからこその恩恵というものがあって、私はそれを享受するので十分。

もちろん、生身の人間に対してもフィクションのキャラに対しても好き嫌いはあるが、特定の誰かを強烈に好きになったり強烈に嫌いになったりするよりは色んな人の色んな要素にちょこちょこと共感して感情移入したり逆に苦手に思ったりすることの方が圧倒的に多く、推しとして挙げる場合も便宜上そのワードを使っているだけで「推し」なんて言っていいレベルの好きではないのだろうなと思いながら挙げている。

しかし、本作に関しては珍しく入れ込んでいるように思う。

この回を観て落ち込んだ時はそれはそれはつらかった。
しかし普段エンタメをさらっと観ているだけの自分が、ここまで振り回されるような作品に出会えたことがすごく嬉しい。



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