新作歌舞伎ルパン3世。
流白浪燦星。
漢字のあて方お洒落。
とても面白かった！
ルパンなのに歌舞伎。
歌舞伎なのにルパン。
両方のお約束が交差するストーリー性豊かな新作歌舞伎だ。
歌舞伎って自由でいいな。

以下、ストーリー。
時は安土桃山時代。
ルパン(片岡愛之助さん)と次元(市川笑三郎さん)は、
帝から雄龍丸という刀を盗んだ。
雌龍丸という刀も狙っていて、
それをもっているのが石川五右衛門(尾上松也さん)だという。
二つの刀が揃うと手に入るお宝があるのだ。

ルパンと次元は五右衛門に対決を挑む。
そこに現れたのが峰不二子(市川笑也さん)と
銭形刑部(市川中車さん。またの名を香川照之さん)。
ルパンたちは銭形を振り切って逃げる。

世は真柴久吉(坂東彌十郎さん)の天下。
人手不足でカラクリ人形が流行中。
(人間の接客業をAIが代わるようになってきた現代の世相を反映する設定)
カラクリ人形の商いをする銀座衛門(かねざえもん。市川猿弥さん)は大金持ち。
不二子は銀座衛門に取り入っている。
この久吉たちが今作の悪役だ。

久吉は銀座衛門にカラクリ兵を作らせて世界制覇を企む。
また機械仕掛けの不死の体を得ようとする。
そのためにはルパンが狙うお宝が必要なのだった。
お宝の正体は卑弥呼の金印。
隕石の中に封印されているという。
封印を解くのに必要なのが雄龍丸・雌龍丸の2本の刀と、
卑弥呼の一族の生き残りだった。
その生き残りが糸星(尾上右近さん)。

この物語において卑弥呼は機械仕掛けの不死の体を持つ宇宙人だったという設定だ。
当然その一族の末裔なので糸星も人間ではない。
右近さんの「人間ではない美しさ」の演技の神秘性がよかった。

当然久吉らはルパンたちが持つ雄龍丸・雌龍丸を、そして糸星を狙う。
印象的なのは糸星と五右衛門が恋仲になること。
五右衛門は糸星を倒さなければならなくなるんだけど、
その糸星の亡骸から生まれたのが斬鉄剣という演出も感動的だった。

五右衛門役の尾上松也さん、殺陣がとてもお上手なんですよね。
五右衛門といえば剣の達人というイメージがあるけどそれを裏切らない上手さだった。
かっこいい。
あとこれすごい好きだと思ったから紹介。
安土桃山時代に実在した大泥棒 石川五右衛門の辞世の句。
「石川や浜の真砂子は尽くるとも世に盗人の種は尽くまじ」
めっちゃよくない？
ため息ついちゃった。天才だ。

ルパンvs五右衛門は滝で行われる。
落水音が聞こえるなー、ここはデジタル技術的に頼ったんだ？
と思ったら、なんと本物の水！
大量の水が舞台に流れ落ち当てた。
滝壺の舞台セット。
え！？どんな仕組み！？
音声ガイドによるとどこでもできる演出ではないらしい。
そ、そうだよね？
しかしこの本物の水を使用する演出自体は
江戸時代に始まったものとのこと。
冷房がなかったので夏場にやってたらしい。
現代ならではの技術だと思ったのでびっくり。
しかも背景に水流すだけじゃなくて2人とも滝につっこむ。
びしょ濡れになって刀を交わす。
濡れた刀が綺麗だった。
音声ガイド「水に濡れた衣装は重いので動くのが大変です」
そうだよね！？
床も滑りそうで心配。でもかっこよくきめてた。

不二子が「本当に女形なの？」ってくらい女性らしくて綺麗だった。
女性らしさを身につけたいなら女形のしぐさを真似したほうがいいのかもしれない…。
女である私よりずっとゆったりした所作を体得してる。美しい。

あと序盤で「めぞんかかお」という店が登場する。
MAISON CACAO！大好き！
ちゃんと暖簾が青い。
そしてルパンたちはホットチョコレートを飲んでる。
配膳に来るのはカラクリ人形だ。
人件費削減のため人間はこういう仕事をしないらしい。
舞台設定は安土桃山時代。
なんて荒唐無稽な！大好き！
「流行病がおさまってこのあたりは人が増えた」とか
「警吏は残業のしすぎなので今日は自分が交代で出勤してます」
「働き方改革か」とか、かなり現代性を織り込んでくる。
こういうネタを挟むたびに会場では笑いが起こる。
江戸時代の人たちもこんな風に笑ってたのかな？
これは安土桃山時代の設定だろ？なんで江戸の今の話をするんだよ！ってつっこみながら観てた？
MAISON CACAOのチョコレートは「令和」の元号発表の時に
各国首相にお土産として贈られたチョコレートだ。
美味しい。私も好き。
ルパンが払ったお会計は不二子のぶんと合わせて6,000円。
そうそう！一箱3,000円もするんだよね！と思って笑った。
てかなんでMAISON CACAOが安土桃山時代にあるんだよ！って思いながら観てたら、なんか、江戸時代の人と一体になれた気がした。
歌舞伎ってすごいな。

ああやっぱり歌舞伎って好き。
お洒落でカッコよくて荒唐無稽なエンタメ。
また観に行きたい。