青野晶

第9回&第10回林芙美子文学賞最終候補 🫶ジャズダンス/バレエ/歌/ミュージカ…

青野晶

第9回&第10回林芙美子文学賞最終候補 🫶ジャズダンス/バレエ/歌/ミュージカル🫶 アイコンを描いてくれたのは漫画家の芦藻くん(@akiraturu )

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    創作大賞2024応募作と短編小説を公開してます

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「嘘つきたちの幸福」第1幕

★あらすじ(全4幕)★ アビー王子と革命家ファイザは互いに憎み合い、暗殺をくわだてている。 ところが偶然に出会った2人は恋に落ちてしまった! 「殺さなければならない。しかし愛してしまった……」 苦悩するアビー王子はファイザを殺せるのか?それとも? 実在のバレエダンサーが演じる様子を想像して小説化します。 青野晶「噓つきたちの幸福」 ■第1幕 第1場  アビー王子が革命家の女を殺そうと誓ったのは、昨日今日の話ではない。ただそれを今日と決めたのは、シャワル城で革命家の女を

    • 「嘘つきたちの幸福」第3幕(後編)

      初めから読む→「嘘つきたちの幸福」第1幕|青野晶 (note.com) 前回の話→「嘘つきたちの幸福」第3幕(中編)|青野晶 (note.com) ■第3幕 第14場  パルミル王宮遺跡の回廊を進んでいたカルロ王子は急に立ち止まり、背後にいるイーシャを振り返った。人差し指を自らの唇に触れ、音をたてないようにとイーシャに伝える。そして声をひそめてイーシャに耳打ちした。 「男の声が聞こえる」  イーシャは耳を澄ませる。確かに誰かの声が聞こえた。何を言っているのかはわからない。し

      • 「嘘つきたちの幸福」第3幕(中編)

        初めから読む→「嘘つきたちの幸福」第1幕|青野晶 (note.com) 前回の話→「嘘つきたちの幸福」第3幕(前編)|青野晶 (note.com) ■第3幕 第9場 イーシャは水瓶を両腕にぎゅっと抱えたまま、息を切らせて走っていた。呼吸は苦しく、脇腹は痛いのに頬は健康的に蒸気している。同じ色のバラが一輪、水瓶の中で揺れていた。 イーシャがシャワル城にたどり着いた時、もう日は翳りを帯びていた。水瓶を抱えたまま、イーシャはアビー王子の姿を探す。もちろん、オアシスで出会った女のこ

        • 「嘘つきたちの幸福」第3幕(前編)

          初めから読む→「嘘つきたちの幸福」第1幕|青野晶 (note.com) 前回の話→「嘘つきたちの幸福」第2幕|青野晶 (note.com) ■第3幕 第1場 スファン宮殿に戻ったファイザは日に一度の夕食を両頬に詰め込んでいた。向かいに座るのはムアである。二人は床に敷かれた絨毯の上に座っていた。シルクで手織りされた絨毯は赤を基調とした繊細な幾何学模様の柄である。絨毯の上には大きな木の板が置かれ、板からはみ出るほどの数の皿が並べられていた。四角いものから丸いものまであったが、ど

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        「嘘つきたちの幸福」第1幕

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          「嘘つきたちの幸福」第2幕

          第1幕はこちら↓ 「嘘つきたちの幸福」第1幕|青野晶 (note.com) ■第2幕 第1場 平たい屋根付きのランドー馬車を、二頭の馬が引いていた。大きな四つの車輪に乗った底の丸い車体は木製で、屋根には火の鳥と燃え盛る炎の意匠が黄金で施されている。高い御者台には従者が一人。馬車の窓には赤いベロアのカーテンが揺れていた。カルロ王子がシャワル城に到着したのは、高い陽の煌めく夏日だった。 「腰が、腰が痛い」 「カルロ王子! わざわざこのようなところに……恐れ多きことでございます」

          「嘘つきたちの幸福」第2幕

          【短編小説】男役をめざす高3の夏

          書いたのは3年くらい前(?) 参考:めざせ舞台女優!「かげきしょうじょ」の魅力|青野晶 (note.com) 青野晶「やがて銀橋に続く」  細く長い道を行く。星野薫は白線を超えて車道に出ないよう意地になっていた。バス停へと続く海沿いの道は、車道の幅を広く取りすぎたせいで歩道が狭くなっている。白むほどの炎天はまぶしく、鋭く痛い光が降り注いでいた。 「なにあれ?」  少女たちの嘲笑が聞こえて、星野薫は日傘の柄をギリと強くつかんだ。つんと鼻先を上げるのに、胸の奥に差し込む鋭い痛

          【短編小説】男役をめざす高3の夏

          めざせ舞台女優!「かげきしょうじょ」の魅力

          斉木久美子さん原作の漫画「かげきしょうじょ」。 アニメ化、舞台化もされたこの作品の魅力について書こうと思う。 主人公、渡辺さらさは紅華歌劇団(モデルは宝塚歌劇団)のトップスターを目指す少女。 身長178㎝というスタイルに恵まれたさらさが目指すのはもちろん男役だ。 「男役」というとかっこいいイメージだけど、さらさはふわふわした天然ちゃん。 そしてもうひとつ魅力的な設定がある。 さらさは歌舞伎の天才なのだ。 さらさの才能は幼少期に開花する。 「男に生まれていれば歌舞伎役者にな

          めざせ舞台女優!「かげきしょうじょ」の魅力

          日本バレエ協会「パキータ」全幕レビュー

          2024都民芸術フェスティバルにて。 バレエダンサーの友達が出演した舞台!!!!! 出演する舞台は必ず教えてもらって観に行ってる。 今回もよかった。 なんと「パキータ」の全幕は日本では初公開らしい。 歴史的瞬間に立ち会えて嬉しい。 いつも通りストーリーを中心にレビューを書く。 ではさっそく。 原作はセルバンテス「ジプシー娘」。 物語を一言でまとめるなら、 「ジプシー娘のパキータと、高貴なフランス人のリュシアンによるシンデレラストーリー」だ。 身分違いの恋というのは舞台では定

          日本バレエ協会「パキータ」全幕レビュー

          新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」レビュー

          構成がやや複雑。 簡単に説明すると「ホフマンを主人公とした4つの失恋物語」。 失恋の原因はいずれも悪魔の邪魔による。 構成はいわゆる「枠物語」。 物語の大部分はホフマンの3つの失恋についての回想だ。 第1幕、第2幕、第3幕でそれぞれホフマンは1回ずつ失恋する。 それをサンドイッチするプロローグとエピローグが「現在」で、 最終的にエピローグでホフマンは4回目の失恋を経験することになる。 第1~3幕はE.T.A.ホフマンの短編小説を原作としている。 バレエ「ホフマン物語」では原

          新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」レビュー

          【短編小説】YOASOBI「夜に駆ける」を私が書くなら

          3年くらい前に書いたやつ。 すてきな設定は原作リスペクト。 YOASOBI「夜に駆ける」 Official Music Video (youtube.com) 青野晶「きる」  引き伸ばされた夜を断つように、その音は鋭く透明に鳴り響く。氷雨の手首は白百合のようにしなって柔らかく、まるで力なんか宿らないように見えた。それでも氷雨は確かな手つきでフェンスカッターを握り、冷たい鋼の編み込みを一本、また一本と断ち切り、丁寧にそれをほどいていく。  廃墟のビルは四階建てだった。私は

          【短編小説】YOASOBI「夜に駆ける」を私が書くなら

          宝塚雪組「壬生義士伝(みぶぎしでん)」レビュー

          「一番好きな時代小説は?」と聞かれたらこう答える。 浅田次郎さんの「壬生義士伝(みぶぎしでん)」だ。 宝塚で舞台化された。 雪組公演だった。 主人公の貫一郎を演じるのが当時の男役トップスターの望海風斗さん。 その妻しづを演じたのが当時の娘役トップスターの真彩希帆さん。 以下、ストーリーの詳細。 主人公は浪士、吉村貫一郎(望海風斗さん)。 南部地方盛岡藩の侍だった貫一郎は貧しく、 妻しづ(真彩希帆さん)と子供たちを養うために故郷を離れなければならなかった。 貫一郎の幼馴染で

          宝塚雪組「壬生義士伝(みぶぎしでん)」レビュー

          宝塚花組「うたかたの恋」レビュー

          1年くらいの時差投稿。(書き溜めてあった) 「うたかたの恋」は宝塚で何度も再演されている人気公演だ。 この記事で紹介するのは2023年3月の花組公演。 原作はクロード・アネの小説「うたかたの恋」。 物語の中心となるのはハプスブルク皇太子のルドルフ(30歳)とその不倫相手の少女マリー(17歳)。 2人が心中した事件に脚色を加えてドラマに仕立てたのが「うたかたの恋」だ。 宝塚に詳しくない人のために言っておくと、 宝塚歌劇団には女性しかいないため、男性の役も女性が演じる。

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          ディズニー「ノートルダムの鐘」レビュー

          ディズニーの最高傑作といえば? そう。「ノートルダムの鐘」だ。 原作はヴィクトル・ユゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」。 ディズニーでは「ノートルダムの鐘」のタイトルで結末を変えている。 劇団四季のキャストが吹き替えを担当しており、舞台化もされている。 ちなみにこの名作、「エスメラルダ」のタイトルでバレエ公演にもなっている。 (バレエ版はエスメラルダの視点でストーリーが進行する) 原作だけエグいバッドエンド。 でもアニメやミュージカルやバレエではハッピーエンドとなってい

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          「ムーラン・ルージュ」はなぜ傑作か

          去年観た映画の中で一番好きだったかもしれない。 夏に舞台化された。 サティーン役、私の大好きな望海風斗さん。 もちろん観に行った。 今年も公演あるよ! 今回は映画「ムーラン・ルージュ」の良さについて語る。 ムーランは風車、ルージュは赤。 赤い風車が特徴的な娼館を舞台にした物語。 一番人気の娼婦サティーン(ニコール・キッドマン) と 小説家志望の若者クリスチャン(ユアン・マクレガー) による 純愛が軸になっている。 クリスチャンが歌うまイケメンすぎてびっくりする。 こんな歌う

          「ムーラン・ルージュ」はなぜ傑作か

          劇団四季「リトル・マーメイド」はなぜ傑作か

          子供の頃から大好きなディズニーアニメ「リトル・マーメイド」。 これの劇団四季版が傑作なので紹介したい。 原作はアンデルセンの「人魚姫」かな。 小学生の頃に読んで衝撃を受けたんだけど、 なんとこれ! バッドエンド! アリエルは最後、自分の胸に短剣を突き立てて泡になって消えてしまう。 お姉さんたちが「アリエル! これで死ぬのよ!」ってくれたナイフで。 そんなことある? しかしさすがのディズニー、 輝かしいハッピーエンドにアレンジしてきた。 子供の頃からディズニーの「リトル・マ

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          LA LA LAND シネマコンサートレビュー

          作曲家本人(ジャスティン・ハーウィッツ)が指揮。 豪華すぎる。 ジャズ演奏はアドリブを入れてた。 「ラ・ラ・ランド」がなぜ傑作かという話は数日前に2,600字以上打ったので (実はほぼ書き溜めだけど) 今回は簡単に書こう。 前回の↓ LA LA LANDはなぜ傑作か|青野晶(@aono_akira0614) (note.com) ミアとルームシェアの友達で歌うsomeone in the crowdに深い意味を感じた。 ミアにとってsomeone in the crowd

          LA LA LAND シネマコンサートレビュー