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我が心のチグリス・ユーフラテス

わたしの心はすでに息を止めて
ただぼんやりと岸辺にたたずみ

たえまない
それは遥か遠い昔から
途絶えることなく
続いてきただろう
水の流れを
ぼんやりと見ている

それは
わたしがこの大地に
生まれ落ちる前から
すでに
わたしがここへ
生まれくることを知り
そして
わたしが生まれ来た後

今日こうして
わたしが抜け殻となり
ゆくあてもなく
歩いてくることを
知っていたのか

水の流れは
けれど何も語らず
空には星がまたたき
水のおもてに映った
星のきらめきは
すぐに流れに飲み込まれ
もう跡形もなく


宇宙の暗黒に立ち向かう
わたしの視界の
かけらにさえ届かない

おそらくは、もうすでに
知っているだろう
これからあとの
わたしの、さだめ
わたしという、ひとかけら
この宇宙の
ごみにさえ満たない
わたしの明日
わたしの流れゆく先を

それがたとえどんなに
ぶざまな明日でも
けれどおまえたちは
ほんの一瞬さえ
わたしへの憐れみに
立ち止まることなく
流れていておくれ

遥か遠い昔
わたしが生まれる前から
そうだったように
変わることなく
流れていておくれ

またいつか再び、わたしが
ここへ帰ってくる日が
一日も遅れないように
一分も一秒も、狂わないように

今は遠くわたしから離れた
わたしの心がまた
遥か険しい旅をした後
抜け殻となったわたしの元へ
まちがうことなく
還ってきてくれるように

チグリス
ユーフラテス
我が心の


#イラク戦争

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