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(詩)ギターも夢見る

まだ宅配便もなかった時代
その一本のギターは
東京の販売店から東京駅に運ばれ
それからガタゴト、ガタゴト
それは長い長い道のりを
レールの上を
コンテナの隅に載せられ揺られ
熊本駅の荷物預かり所まで
遥々独りぼっちで旅して来たのであった

そこで待つこと数日
とある土曜日の晴れた午後
ギターの前に現れたのは
午前中で終わった中学校の教室を
まっ直ぐに飛び出し息を切らしてやって来た
詰襟姿のひとりの男子中学生

少年とギターは互いに無口に
眩しい顔で見詰め合うのだった

出会いの午後
その日から
二人三脚の夢が始まる


※その当時、熊本でも勿論ギターは売ってました。でも通販のギターがめちゃくちゃ安かったんですね。家、貧乏だったんで……でもこれなら買える、と胸弾ませて注文しました。……ほぼ実話的少年時代の思い出話です。
(その後転々として、今は横浜のすみに生息否棲息中。ご近所さん、よろしくね)

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