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小学校3年生理科・植物の育ち方「たねまき」で,なぜ色・形・大きさを比べるのか?

授業参観の日

今日は授業参観の日だったね。
君はもう小学校3年生,今年から初めて「理科」を習い始めるんだ。
教室の壁に,君が書いた将来の夢が書いてあるのをパパは見つけた。
「大学の科学の先生になりたい」って書いてあって,パパはとっても嬉しかったなぁ。

今日の授業は,まさにその理科だ。「たねまき」という授業だったね。
先生がホウセンカ,ひまわり,オクラ,大豆のタネをみんなに配り,虫眼鏡で観察したね。
観察のポイントは色,形,大きさだ。君は一生懸命観察していた。

観察の後,班ごとに発表があって,みんなそれぞれのタネの特徴を発表していた。
君の班はオクラのタネだ。色は茶色,形は丸い。大きさは1 mmくらいだったね。

授業参観では,親たちは自分の子供しか見ていない。
授業内容については,普通あまり頭に入ってこないものなんだ。

実験や観察が始まると,子供たちはタネに注目するけど,親たちは自分の子供に注目する。
パパの隣で聞いていたママも,君の様子や友達の顔や,教室に貼ってあった君の似顔絵などに興味が移った。

でもパパは大学の理科の先生だから,授業内容についていろいろ考えてみたんだ。
この授業は,何が大切なんだろうって。

いろいろな疑問が湧いてきた。その中で,一番大きな疑問は二つあった。
1,なぜ,色・形・大きさを比べるのだろうか?
2,なぜ,ホウセンカ,ひまわり,オクラ,大豆を比べるのだろうか?

なぜ,色・形・大きさを比べるのだろう?

今日は1の疑問について,考えたことを話そう。
実際のところ,同じオクラのタネであっても,色や形や大きさは微妙に違っているよね。
写真に撮れば,全てのタネは違っているはずだ。

しかし,それを言葉にすると,みんな観察結果は同じになる。
配られたタネはそれぞれ違うものなのに,みんなの発表は同じ,「色は茶色,形は丸い、大きさは1 mmくらい」だ。
どうやら科学っていうのは,観察したことをそのまま,ありのままを記録することではないらしい。

色,形,大きさ,というのは,君が観察を行う前から既に持っていた,ものの捉え方のことだ。
このものの捉え方を使うと,みんなの意見が一致する。
それ以外の捉え方,例えば味や匂いや手触りといったものについては,皆の意見は違ってくるだろうね。

理科の観察は見る前に決まる

どうして皆の意見を一致させようとするんだろうか。

それは,「誰が見ても同じ見方・捉え方」を共有することによって,人間の集まりである社会がうまくいくのだ,と言うこともできる。
大人たちの意見が様々に分かれてしまって,ケンカになってしまいそうなときに「科学的に考えよう」ということがよく行われる。
そうすることで,お互いにケンカをしないで済むようにしているのかもしれない。

もう一つ,別の考え方は「本質」を知りたいから,というものだ。

本質って難しい言葉だけれど,要は変化するものの中にあって変化しないもの,という意味なんだ。
今日の授業で言えば,たくさんのタネはそれぞれ個性があって,決して同じ形のタネは無いというのが本当のところなんだけれど,
その中で同じだと誰もが思う特徴が「丸い」ということなんだ。

君も教室の中の子供の顔がみんな違うことはわかっているし,名前も服装も髪型も持ち物も,全部違う。
親たちは自分の子供は他の子供とは違う,と思っている。でも科学は一人一人の個性に関心が向かないんだ。

全ての子供に共通する,入学してから経った年数だけを取り出した見方を「学年」と言う。
そして今この教室にいる子供は同じ3年生である,と観察しなければいけないんだ。

みんな,虫眼鏡を使ってタネを拡大して細かいところまで「見た」はずなのに,発表の時は一つ一つのタネの個性を無視してその細かい情報を捨ててしまってる。本当に、不思議だよね。

まとめ

まとめると,こうなる。
理科ではタネの色・形・大きさだけに注目して,味や匂いや手触りを無視する。
その理由は,身の回りのいろいろなものの中で,誰でも同じだと言える共通の特徴,つまり本質を知りたいからだ,ということだね。
そして,みんなで本質を確認することで,ケンカをしないようにしている。そのように,パパは思ったな。

2番目の疑問については,また明日お話ししようね。
おやすみなさい。

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