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中2理科の化学反応式を【理解】する(8) 金属の燃焼

中2理科の教科書を読んでおります。
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中2理科 いろいろな化学反応

B. 金属の燃焼

  • 【実験】マグネシウムとスチールウールを加熱し,前後の物質の性質を調べると,全く別の物質に変わっている。

マグネシウム + 酸素 → 酸化マグネシウム

$${2Mg + O_2 → 2MgO}$$

鉄 + 酸素 → 酸化鉄

C.穏やかな酸化

「錆びる」現象も穏やかな酸化である。


金属も燃焼する

 さあ,ここでは何をしているのでしょうか?私たちは有機物の燃焼を通して,「燃焼とは酸化反応である」ことに気がつきました。すなわち燃焼とは物質が酸素と結びつくことである,と原子論的に解釈し直したのです。物事を,より一般的な(他のものにも当てはまりそうな)視点で捉え直すことを一般化と言います。

 一般化によって,酸化の概念はさらに広がります。これまで私たちは木や紙やガソリンなどの有機物だけが燃えるのだ,と思っていました。しかしそれ以外にも,酸素が結びつくことさえできれば,それを燃焼と呼べるのではないだろうか。そういう新しい観点に気がつくのです。そこで紹介されるのが金属の燃焼です。

 子供たちは普通,金属は燃えないと思っています。もちろん,鉄板に火を近づけても燃えないのですが,理科の授業ではこの常識を金属の燃焼実験によって壊してやります。

 まずマグネシウムという金属に火をつけて,非常に明るく眩しい光を出しながら燃えることを印象付けます。この実験をやったことがある人,見たことがある人はわかると思いますが,かなり強い光が出ます。これで「金属も燃えるんだ」と記憶に深く刻まれます。

 しかし,マグネシウムは燃えても鉄は燃えないよ,と考える人も当然います。子供に限らず人間というものは,「常識」から抜け出すことが非常に難しいのです。

 えっ?マグネシウムなんて,そんな金属あるんだ?初めて聞いた。現代は多様性の時代だし。そういう特別な「燃える金属」があってもいいんじゃない?でも,普通,鉄は燃えないよね。そう思ってしまいます。

 そこで鉄を繊維状にしたスチールウールに火をつけて,火が燃え広がるのを目の前で見せつけてやるのです。ただし昨日百均で買ってきたばかりの新しいものに火をつけないとダメですよ。1年も放置してから火をつけようと思っても,燃え方がショボいです。

実験だけで終わらせない

 どうせなら空気中ではなく酸素の中で火をつけてやりましょう。マグネシウムほどではないですが,派手に燃えてくれます。実験は本当に楽しいです。学校は,非日常の世界を垣間見せてくれる場所でもあります。マグネシウムや鉄が燃える様子なんて,普通の家庭生活では決してお目にかかれないですから。

 ただし,実験をマジックショーか何かのように考えるのは,私は好きじゃないのです。ショーを受け身的に楽しむだけなら,YouTubeでもなんでも,いくらでもやっています。そういう人は燃焼反応が終わったらそれに満足してしまいます。「綺麗だったね」で終わりです。

 しかし,私たちは探究者なのです。私たちの後ろには,「物質とは何か」を二千五百年にもわたって探求してきた自然哲学者や錬金術師たち,そして化学者たちが歩んできた歴史がある。

 この世界の秘密を解き明かす証拠が,何かないだろうか?金属が燃えたからといって,それで満足してはいけない。目を皿のようにして探さなければダメです。酸化とは,燃焼とは一体何なんだ!?と思いながら,こちらから物質に対して積極的に探りを入れていかなければならない。そこで,金属が燃えた後に残るものをよく観察してみましょう。

燃焼後に残った物質は何だろう

 燃焼後のマグネシウムは真っ白な物質になるし,燃焼後のスチールウールは真っ黒で脆い物質が残ります。有機物の場合,燃焼によって生成した酸化物は気体の二酸化炭素と水でした。固体のようなものは残らず,消えてしまいます。

 しかし金属が燃えると固体が残るのです。鉄の燃えカスに磁石を近づけても,くっつきません。もはや磁力を失っているようです。これは一体何が起きたのでしょうか?

 そこで,化学者は原子論的世界観で何が起きたかを考えてみます。教科書には酸化鉄の化学式は示されていません。実は酸化鉄にはいくつかの種類があり,化学式は少々複雑なので省略してあります。ですので,マグネシウムで金属の酸化を考えてみましょう。

$${2Mg + O_2 → 2MgO}$$

 この式からわかることは,燃え残ったカスと思われていた白い物質が,酸素とマグネシウムを成分として含む酸化マグネシウムという新しい物質であること,そして気体や液体が一切発生しないということです。金属が燃焼してできた酸化物は固体になる。これが金属の燃焼の特徴です。

【燃焼=酸化反応】 物質 + 酸素 → 酸化物

$$
\begin{array}{c:c:c} \hline
酸素と反応する物質&酸化物\\ \hline
有機物&二酸化炭素と水(気体と液体)\\
金属&固体\\ \hline
\end{array}
$$

錆びることも酸化反応

 鉄が錆びることを目にした人は多いはずです。この錆びるという,燃焼とは全く別に見える変化も,酸化反応の仲間に入れてやることができます。なぜかというと,錆びた鉄を炭素と一緒に加熱すると,二酸化炭素を放出して鉄に戻るからです。これが還元です。これについては,次回やりましょう。

 私たちは有機物の燃焼を通して,「燃焼とは酸化反応である」こと,すなわち物質が酸素と結びつくことであると理解しました。これを他の現象に適用する「一般化」を行うことによって,有機物の燃焼の他にも,金属の燃焼と金属が錆びることが同じ酸化反応であることがわかってきたわけです。

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