きびだんご

桃太郎は何で鬼退治をしたのだろうか 興奮いっぱいの自己満足だろうか
【イヌ・サル・キジの組体操をワイン飲みながら見ている桃太郎、の絵】

でも自己満足が誰かのためになっているってラッキーなことだと思う
自己満足で周りから崇められたら最高だと思う 興奮汁が止まらないと思う
【ワイン樽から零れてるワイン汁をグラスに入れようとする桃太郎、の絵】

普通自己満足というものは何の価値も無くて
僕の自己満足だってそうだ
【眠った犬でびっしりのワインセラー、の実写】

僕の自己満足はきびだんごを作ること
あくる日もあくる日も ただただきびだんごを作る
【キジの羽まみれのきびだんご、の絵】

誰に食べてもらうわけでもなく 自分で作っては自分で食べる
【サルが小っちゃい滝にオティンティンを当てている、絵】

たまに桃太郎に憧れてしまう
それと同時に僕の自己満足が悪人のやることじゃなくて良かったとも思う
【桃太郎が『ワイン県やまなし』という旗を背中に差している、絵】

もし僕の自己満足が人を傷つけることだったら
僕は今こうやって普通に生活することはできていないだろう
【キジの羽まみれのきびだんご、の絵】

無個性故の無意味
無個性故の安全さ
【眠った犬でびっしりのワインセラー、の実写】

ある日なんとなくネットサーフィンをしていると
同じことをずっとやっている結果バズっている人を見つけた
【桃太郎のSNSアカウント、フォロー3000でフォロワー2、のCG】

同じことを同じようにすることを毎日アップロードしていると
バズる時があるらしい 僕は一人で頷きながらきびだんごをほおばった
【桃太郎が『ワイン県やまなし』という旗を一人で描いている、絵】

僕は何だかそれを試したくなり
作ったきびだんごの写真を毎日SNSにアップロードし始めた
【桃太郎のSNSの通知欄、ワイン県やまなしからフォローされる、CG】

突然は突然だ 僕のきびだんごはバズだったのだ それはもうズリズリと
【両手に持ったきびだんごでキジの羽をズリズリと擦っている、絵】

僕に届いた言葉はほとんどが肯定的だった
「同じことを何度もやっていて草」とかも僕の中では肯定的な言葉だ
【キジの羽まみれのきびだんご、の絵】

中には「同じことを貫く姿勢に感動しました」とか
「好きなことを好きと思ってやり続けることってやっぱりいいですね」
とか誰が見てもそれは肯定的だと分かるような言葉もあった
【眠った犬でびっしりのワインセラー、の実写】

僕の自尊心と肯定感がパァっと満ちていった
これが脳内麻薬というヤツなのかと思った と同時に
【眠った犬の脳内メーカー、中身がきびだんごばかり、の絵】

と同時に僕はこんなことがしたかったのかとも思った
だって僕はきびだんごを作っているだけで楽しかったのに
【股に挟んだ二個のきびだんごが何だか物悲しそうな陰がついてる、絵】

急に罪悪感が満ちてきて というより引力が欠けてきて
陰と陽が脳内でごちゃごちゃしている
どうせ陰キャだなんて言葉が出てきて
それをなんとかきびだんごの美味しさでかき消して
でもそんなきびだんごからもそっぽを向かれて
僕はどうしたらいいんだ
僕はきびだんごのことが好きなだけだったのに
【桃太郎のSNSアカウント、キジからブロックされてる、CG】

そんなことを思いながらきびだんごを作って食べていると
「きびだんごを食べてみたいです」という言葉がSNS上に溢れてきた
【SNSの画面が出てるスマホをワイングラスに落とした桃太郎、の実写】

あれからきびだんごは作り過ぎていた
悩めば悩むほど作っていたから
もう自分では食べ切れないほどに作っていた
だから僕はこのきびだんごをネットで売ることにした
【股に挟んだ二個のきびだんごが何だか笑ってる光がついてる、合成写真】

きびだんごを持って写真を撮っている女の子の写真で
僕のSNSのタイムライン上はいっぱいになった
その時に思ったんだ
【新宿の夜景、の空撮】

きびだんごのサイズを僕の家のドアノブサイズにしたら
僕の家へ遊びに来てくれているみたいになっていいなぁって
【きびだんごをワイングラスの中に入れたウェルカムドリンク、のレシピ】

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