短歌50首:空想忍者

気配りし生きてきたのに「まあいいや」と置いてかれるならもういいよ
家族にもこんな仕打ちをされている空想忍者を復活させた
車窓から見える忍者のあの速さ伴走をして手を振ってくれる
昔なら2Dのように走るだけ今は奥行き使い全てが成長
十二歳あたりで空想忍者とは疎遠になったが三十五の今
夜になり外に向かって僕は言う「中においでよ」「外から守る」
悪い雲空想忍者が守ってる雷遠ざけ僕は安眠
僕の部屋枕元にはぬいぐるみ空想忍者も同志の気持ち
屋根の上空想忍者が飛び移る道路の塀で見えなくても
運動場あったらすぐに中入り網を掴んで「出して」のユーモア
水たまり空想忍者はあえて踏む飛沫で演出僕らのカッコイイ
気が付いて空想忍者をONにする急に車窓が飾られる術(じゅつ)
車窓からリレーしてくる蝉のこえ空想忍者は物音立てず
旅の途中高速道路を走る時違う分岐を走るユーモア
高原も空想忍者が走ってく木に掴まって巧みにターン
ホテルでも空想忍者は外にいる二階だからかジャンプしてくれる
木々が無い遠くの山にスキー場「そこに行こうか」さすがに空想過ぎ
用水路空想忍者が「走れる」と誇らしげに言いピースサインを
錆びている古びた鉄塔「登れる」とそれはまあまあそういう人もいるし
変わらない空想忍者のユーモアは十二のままでずっていてほしい
トンネルは中に入らず森のほう出口で手を振る彼に安堵し
森の奥光が灯った場所がある動物からは彼が見えるの?
橋にあるオブジェで大喜利する余裕でも大体座ってみるユーモア
朽ちているドライブインの中にある寂れたダルマにタッチ&ゴー
山の中棚田をどんどんテンポ良く駆け上がっていく勢い憧れ
曲線の手すりをなぞり草のカス手に付き驚く風のチカラを
電柱が乱立している田んぼ道あの電柱には触れないルール
道路脇【歩道終わり】と書かれてる空想忍者は終わらない足
気になって百円自販機立ち止まる彼は知らないテレビCMあること
ミニダムだ流れて泡が立っているそこも登れる龍にもなれる
カーテンが無いほどすさんだ温泉街潰れた宿に一礼をする
デカいダム車窓からは見えなくて代わりに遊んで永遠の若さ
川の岩木の棒刺さって浮いているヤジロベエなの? 座っていいの?
湖をなぞるように走る道曲がることが彼は楽しい
喜んでサイクリングのロード行くやけに安全そういう日もある
盆栽をテラスにいっぱい置いてある中通る時丁寧に行く
十二時に歪んだメロディ流す町怪しく揺れる創作ダンス
デカ歩道あるのに車道を歩く人負けじとガードレールの上を
走ってる空想忍者はマスク無し僕が十二のままでいてほしい
街頭で演説してる傍の時目が×になる僕と同じだ
影があるいや影が無いリバーシブル風景馴染みを優先させる
影・重さ・触れる・足音エトセトラ車窓から見たエモさで変化
小説を書いてる時は窓の外見知らぬ僕へ写真撮るポーズ
「絵描かない?」チラシ指差し僕へ言う昔のソレはお金が無いだけ
車内にてワクチン接種の待機中空想忍者は隣に座る
病院のタクシーのりばで手を上げる車内待機の僕へのユーモア
短歌詠む僕のメモ帳覗き込む「ボクいるんだね」「そうかもしれない」
「何故短歌?」空想忍者が聞いてくる短い言葉が当時にも合う
逃避だと認めた上で話してる逃避の意味を彼は聞かない
朝起きてカーテン開けて今日もいるずっと一緒に走っていきたい

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