蒼杜

彫刻

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最近の記事

お題【通話 爆弾 夏】

あれはとても暑い夏のことでして、たしか八月の下旬にもなったのに、気温は30度を超えていました。ええ、そうです、昔は30度と言ったらとてもとても暑くて、そりゃあ外になんて出たくありません。まぁ唯一だわね、扇風機だけで、涼を感じていました。でもねあなた、昔の扇風機と言ったらうるさくて、しまいにはモーターの部分が熱を持つような古いもので、逆に部屋があったまってしまうみたいなものでしたのよ。いえいえ、これは嘘でもなんでもないです。ほんとうに熱くて困ってしまったのです。 そう言ってナ

    • 鉄、

      ぼわーんとしているあたまの中は、 高速で鉄を研磨するグラインダーの音が離れない。 なにかを解き放ちたいみたいに、一直線に突き抜ける鉄の悲鳴が、右と左の耳の穴をわざと選んで通り抜けている。 重い鉄板は、高速で回るグラインダーの刃と相反して、火花を空に散らしながらゆっくりと削れていく。 それはわたしの意識の時間の軸を、ゆらりと歪め、視界の焦点をぼんやりとズラしている。 現実を忘れた私の瞼は脳みそと繋がることも忘れてしまって、瞳が乾いてしまった時の対応の仕方までもを、

      • 飛ぶ鳥を落とす勢い

        飛ぶ鳥を落とす勢い “飛ぶ鳥”が持つ空間的な広がり 青い光で溢れる空の標高を鮮明に感じられる 鳥が空を突き抜けることで、私の視線は南アルプスの雪が積もる白い景色まで見届けることができる しかしその鳥を落とすほどの何かがこちらにあるわけで、 飛ぶ鳥と私の狭間の空間を一気に引き裂くかのように鳥は落ち行く 「大空を飛ぶ鳥も、威勢に圧倒されて落ちてくるということから、並ぶもののない権勢をいう。」

        • 1

          どうしても何かがこころの中のうごめきを、ゆっくりとかき混ぜている。まだ手のひらがいまの半分くらいの大きさしかなかった頃に、すきとおった水のバケツに絵の具のひかりを泳がせて、混ざりきらないきいろと、あおいろの境界線に、おれの意識の焦点がぴったりとくっついていた。 いま外に出て、少し冷たい空気の中をゆうゆうと切りながら歩き出しても、見えるものはなにかむかしと違くて、その違うことすらも忘れてしまうようになっている。 ただ、青い空とペンキでぬられた建築物の、境界線に気がついて、なにか

        お題【通話 爆弾 夏】

          かみなり、とか

          かみなり、とか、のことを頭に浮かばせる 雷じゃなくて、かみなり 遠くの雷鳴、遠雷、じゃなくて、とおくのかみなり ひらがなが好き、と粗く言い切ってしまうのは良くなくて そのときに省略されてしまう細かい部分に、 雷じゃなくて、かみなり、を選ぶ感覚の広がりがあるから "わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。" 宮沢賢治

          かみなり、とか

          I 水 石 自分 世界 意識 覚醒 

           今、自分は現実に意識が向いていない。現実に意識が向いていないのに意識がある、ということは稀に起こる。わかりやすい例えでいえばコクリコクリと眠りながら頭の中で夢を見ているとき。しかしその時というのは意識が曖昧で自分の見ている細部まで五感の意識を向けることができない。音を聞くことも物を見つめることも。何かに触れ、感じることも。 現実に意識を向けずに自分の意識を細部まで貼り巡らせることがある。側からその姿を見るとそれは眠る人間とこちらの意識が全く通じ合わないのと同じように空間的

          I 水 石 自分 世界 意識 覚醒 

          美大生の杞憂

          最近、若者の貴重な時間を表面的な面白さしかない動画を作ってお金に変えて儲けてるインフルエンサーが多すぎる。 もっと時間をかけたら本質的に面白いものがあるのに、その方向に目を向ける隙すらないくらい浅いSNSと情報で埋め尽くされている気がする。何が悪いのか。たぶんこれは広告と資本主義の弊害。 もっと恐れているのは、この表面的な面白さに慣れ親しんだ今の若者の世代が、世間の大衆になった時。 本質的に面白いものを追及してる人達が一定の成果を出し始めた時。 それを評価する側の大衆はまと

          美大生の杞憂

          テスト前

          男は真っ黒の手袋を嵌め、軽く会釈し私の前から去っていった。 なぜこの男が自分の目の前にいるのかよく分からずに私は再びまどろみの中に包まれていく、、、 昨日は明け方まで英単語の暗記作業に追われていた、

          テスト前