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母性愛の幻想

『ロスト・ドーター』(Netflix/2021)監督マギー・ギレンホール 出演オリヴィア・コールマン/ジェシー・バックリー/ダコタ・ジョンソン


解説/あらすじ
海辺の町を訪れたひとりの女性。近くの別荘に滞在する若い母親の姿を目で追ううちに自らの過去の記憶がよみがえり、穏やかな休暇に不穏な空気が漂い始める。

Netflix映画は侮れないな。これは素晴らしい映画だった。監督のマギー・ギレンホールは、『クレイジー・ハート』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた俳優でもある。この作品でボストン批評家映画賞の新人監督賞を受賞している。センスがいいと思うのは音楽の使い方。

映画は今日的なテーマで、女性の自立と育児。母性本能にかける母親役を『ファーザー』で(中年の)娘役だったオリヴィア・コールマン。この人の演技も上手い。中年女性の孤独、美人ではないが異邦人性を醸し出している。

母性本能が欠如した母親の物語。まあ父性本能とか言わないから、そういうのは後天的に作られたものなのか。考えさせられる映画。女性の自立とはある意味社会的反抗だった。

子供と愛人との間で揺れる若い母がいる。避暑地での出来事。夫が金持ちだけどビジネスに忙しい風。地元の若者と羽目を外す若い母親。そんなときに幼い娘が迷子になる。

子供には罪はない。ただ母親の原罪感みたいな。「ロスト」というのはそういうことだった。共感していた若い母親が子育てと自由の間に悩んでいて、それに寄り添う形だったけど、最終的には違った。子供の人形を何気なく奪ってしまったというのは、怖い。そのミステリー感。

娘を置き去りにした母親は、自由を手にした自分の姿なのだ。回想シーンの子育ての孤独さが描かれる。それが若い母親と重なったのだが、過去を振り返りながら思う娘の記憶は何を意味するのだろうか。そして、離婚を決意したときに、夫は自分を束縛していた母に娘を預けるという。夫一人では面倒見きれないから、それが取引きなのだ。

ブロークン・ハートもの傷心映画。音楽の使い方がほんと上手い。このマギー・ギレンホール監督は要注意です。

母親失格の主人公の名前はレダ。イェーツの詩「レダと白鳥」から来ていた。


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