見出し画像

東大、本郷、試験会場

大学入試、特にセンター試験、いまは共通テストという名称ですが、その時期になると、テレビのニュースのインサート動画で、東京は本郷にある東京大学の試験会場が映し出されるじゃないですか。赤門とか正門じゃなくて、なんかでっかい教室の映像、見たことありません?

私、あの会場で受験したんですよ。院試を、ね。院試、ってのは、大学院の入学選抜試験のことで、基本的には大学院に入りたいひとがみんな受けます。

私はたまたま、どういうわけだか、あれよあれよというまに、東京大学大学院などというところを受験することになって、いや、「なって」なんて言っちゃいけませんな、受験することに「して」、まあともかく、当日ひょこひょこ出かけていったんですけれども、着いた先があの会場だったときは、思わず「Oh…」と声が出たもんです。

なんかね、歴史上の遺跡というか、観光名所というか、そういうところに来ちゃった感じ? テレビで見たことあるけど、ほんとにあるんだー、みたいな? テレビでしか見たことなかったけど、実在したよー、みたいな?

受験生というより、完全におのぼりさん。だってやっぱり、東大なんて、普通に過ごしてたら、関わり皆無のところじゃないですか、雲の上、とかそういうレベルじゃなく、視界にない、というか、全然意識して過ごさないでしょ? 24時間365日、ピサの斜塔やらタージマハルやらのこと考えて暮らしてる人って、いないと思うんですけど、それと同じですよ。

ところがそのピサの斜塔みたいなタージマハルみたいなもんが、いきなり目の前にばばーんと現れたら、程度の差はあれ、おおおおって、思いません? そんな感じですよ。その感覚で、きょろきょろしながら着席して、ごそごそ筆記用具準備して、あとはなーんも考えずに終わりました。

あのテレビでよく見る会場いっぱいに、受験生がいて、外部生ならおそらく全国、もしかしたら海外からも、受験生がきてて、それもみんな一見してただもんじゃないオーラが出てる、出てないひともいるにはいるけどたぶんそれは上手いこと隠してるからであろう、ものすごい頭脳の持ち主ばかり。

生涯に一度、あの空気を吸っただけでも充分、冥途の土産になりました。

あの日以来、ずっと、いまだに自分は東大のOBという感覚がなく、いや、あのもちろん、東大にはものすんごいお世話にはなったんですけれども、関係者ですかと問われれば、ああまあはいそうです一応、って答えなくはないかもしれないという程度だったりして、どうしても、外部の人間である、という気持ちが抜けません。

この時期になると、相変わらず、あの学校と関係ない他人のつもりで、通りすがりの気持ちで、あー、東大の会場だー、って感じでニュースを見てます。

当アカウントの安定的運営のため ご協力いただければ幸いに存じます。