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おじさん、子供の頃の『地獄』を語る、の巻 【後編】

前編は、こちら

(以下の話はグロくて汚いです。苦手な人はスキップしてください)

「パパがまだ、5歳くらいだった頃。
うん。 まだ間違いなく、小学生にはなっていなかった。 一人で、家の近所の公園に砂遊びしに行ったんだ」

「パパが小さい頃といっても、もう40年以上も前の話だけど、それくらいの年の子どもが一人で公園に行くのは普通だった。行って、友達がいれば友達と遊んでた。平和な時代だよな」

「で、その日は、砂場に仲間は誰もいなくて、パパ一人だった。でも、公園全体では、小学校の高学年くらいの『お姉さん』が2人で遊んでたんだ。

最初は、ただおしゃべりしてたお姉さんたちが、あの、丸いジャングルジムっていうか、球体のさ、ぐるぐる回るジャングルジム、
A子、わかる?  あれで、遊び始めたんだ。
(筆者注: 正式には「グローブジャングル」というらしい)」

「で、1人が中に入って、もう1人がそれを回し始めたんだけど、グルグル回り始めて、中にいるお姉さんも『わー!』とか『回せ、回せー!』『もっと回せー!』って、はしゃいじゃって、楽しそうだった」

「回す側のお姉さんも、『よーし』なんて言って一生懸命回してた。一心不乱になって、グルグル、グルグル回してた。グールグル、グルグル。

そしたら、そのうち、中にいるお姉さんが、『ちょっと待って、早い、早い』って言い出したんだ」

「でも、回している方のお姉さんは、面白くなっちゃっているから、止まらない。どんどん回しながら『それそれー!! まだまだー! もっと回るよー』とか言ってる。

でも、中にいるお姉さんは、いよいよ『こわいよー。○○ちゃん、待って、とめて、こわいって』って真剣な声で言い出した」

「それでも回してる方のお姉さんは、『まだまだー!(笑)』みたいになってる。

そのうち、中のお姉さんが、『止めてー!!
止、め、て! 止めてーー!!』って、大絶叫したんだ」

「そしたら、回していた方のお姉さんも、さすがに中にいるお姉さんの真剣さに気づいて、球体を少しずつスローダウンさせて、ようやく止めた。

球体が止まって、中にいたお姉さんが、フラフラ〜って飛び出してきて、『止めて!って言ったじゃん!!(怒)
なんで、すぐ止めないの!!(怒)』って、回してた方のお姉さんをすごい剣幕で怒鳴り始めたの。

そしたら、怒鳴られた方のお姉さんも『だって、□□ちゃんも、回してーって言ってたじゃん!?』って反論し始めた」

『でも、あんなに回さなくていいでしょ!!私が止めてって言ってるんだから!!』って言ってる方の『回された』お姉さんは、それを言いながら泣き始めた。」

「泣き声で『なんで、止めてくれなかったの!?』って叫びながら、いきなり『オロオロオロオローー』って、ゲロを吐いた」

娘「え?」

俺「そう、回されてたほうは、回されすぎて『酔った』んだろうね。泣きながら、ゲーゲー、ゲロを吐き始めたんだよ」

「そしたら、回してたほうも、泣き始めて『ごめん!□□ちゃん!ごめんね、ごめんねー』って、ほぼ叫ぶような感じで謝り始めた。
で、おいおい泣きながら、ひたすら『ごめんねー、□□ちゃん、ごめんねー』って繰り返してる」

「その傍らで、回されたほうは、依然、ゲーゲー吐いてる。

そしたら、今度は泣きながら謝ってた方のお姉さんが『オロオロオロオロ〜』って、これまた吐き始めた。
『ごめんね、オロオロオロオロ〜、ご、ごめん、オロオロオロオロ〜』って、謝りながらゲロを吐いてる。
先に吐き始めたお姉さんも、少し落ち着き始めてたのに、今度は、そのゲロを見て、また気持ち悪くなったのか、新たに『オロオロオロオロオロオロオロオロ〜』ってゲロを吐き始めた」

「そのうち、雨が降り始めてさ。ゲーゲー吐いてる2人の上に容赦なく打ちつけるわけ」

「土砂降りの雨の中で、二人の少女が大号泣しながら吐いてる。

パパは、1人でその光景を雨に打たれながら見ていた。そんで『こわいなぁ』と思いながら、動けなかったんだ。なんせ、お姉さんが2人、雨に打たれながらゲーゲー、ゲロを吐いてるんだからね」

「5歳のその時は、そんな言葉で表現は出来なかったんだけど、あとで少し大きくなってから、『地獄っていうのはああいうことを言うんだろうな』って思ったんだ」

「そのあと、雨の中でゲーゲー吐いてるお姉さんたちを置いて、パパは1人、雨の中を家に帰った。でも、親に言えない悪いことを見たような気がしたから、家では母さん(おばあちゃんのことね)には何にも伝えなかった」

「これが、パパが初めて触れた『地獄』。
死んじゃうかも、とは思わないけど、『こういうのを地獄というんだろうな』と思った瞬間。
あのお姉さんたちも、今では、55〜6歳だろ?
時が過ぎるのは早いねー」

と、俺が話をまとめると、娘が「パパ、もう、そこの信号から歩いていくから降ろして。
なんか、気持ち悪くなっちゃった。話に『酔った』のかも」だって。

「もらいゲロ」は時空を超えるんだな、って、ちょっと思った2021年の秋でした…。

おわり

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