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#ネタバレ 映画 「はやぶさ/HAYABUSA」

「はやぶさ/HAYABUSA」
本当の自分
2019-02-23 08:07byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

竹内結子さん演ずる主役の恵は、天文学が大好きでしたが、心底自分から好きなのか、それとも仲良しで天文オタクだった兄の影響に染まっただけなのか、そこが自分自身でも分かりませんでした。

このように兄弟姉妹が影響しあうのも、よくある話だと思いますが、重大な影響を受けるのは、やはり両親からでしょう。

子供にとって両親は、兄弟姉妹と違って絶対的な存在です。DVで虐待を受けた子供が「お仕置きは、両親の言いつけを守らない自分が悪いからで、両親は悪くない」と両親をかばう発言をしていることも有るぐらいです。

DVほど極端ではなくとも、両親が、子供が生まれつき持っていた個性を否定する様な育児をすると、子供は生来の個性を封印し、両親に気に入られるように演技することもあるようです。それが続くと、子供は本当の自分を表層的には忘れてしまうこともあるようです。忘れたまま大人になり、恵の様に、本当の自分が分からない事になりかねないのです。

そして大人になると、今度は仕事に、生活に忙しく、自分の性格の事など考えている暇は有りません。でも、定年退職後や、ふと暇になったときに、「なんで、自分は、こんな性格なんだろう」と、突然、不思議に思うのです。そして本当の自分探しが始まります。

ところで、この映画「はやぶさ/HAYABUSA」は、表層的には「あきらめなければ夢は叶う」と謳い上げていたようですが、深層的には「本当の自分探し」の物語だったと思います。そして両者をくっつければ「あきらめなければ本当の自分に出会える」ともなるのでしょう。

はやぶさ君とは「迷子になった本当の自分自身の記号」なのかもしれません。はやぶさ君が暗黒の宇宙で呼びかける「ぼくは・・・ここにいるよ」というセリフは、深層世界で迷える、本当の自分自身からのSOSだと思います。

映画のラスト、恵はわざわざ志願してまでオーストラリアへ出かけ、はやぶさ君のホームカミングに立ち会います。それは恵が本当の自分自身に出会う儀式でもありました。

やっと宇宙(深層世界)から地球(表層世界)へ帰還したはやぶさ君が、涙目の地球写真を送り、健気にも命令どおりのカプセルを発射し、あとは力尽き、流星となって燃え尽きてしまう姿が、沢山の人々の心を揺さぶったのは、これが、大なり小なり多数の人が抱えている内的宇宙の物語だったからだと思いました。その琴線に無意識のうちにアクセスしたゆえの涙なのでしょう。

はやぶさ君(子供)は、本当はイトカワなどには、一人ぼっちでお使いに行きたくはなかった。はやぶさ君は、科学者(両親)の教育で、自分はイトカワへ行きたいのだと、信じ込まされて旅立って行ったのです。

この映画が何作品も競作になったのは、この様に普遍的な物語を内包していたからかもしれません。そして映画「はやぶさ/HAYABUSA」での見所は、やはり竹内結子さんの怪演ぶりでしょう。私の友人にもあんな雰囲気の女性がいて、思わず想い出してしまいました。

★★★ (2011/10/2 10:15 by さくらんぼ の再掲)

追記 ( 青みがかった黄緑色 )

哀しい色って、

ほんとうに、

あるんだよ。

猫にマタタビとか言いますが、私にとってある種の色は、少しマタタビしているのです。

それは、子供のころ、親から買ってもらった木製のヨーヨーの色です。

理由は今でも分かりませんが、心かきむしるような、なつかしくもある、哀しい感情が染みついているのです。

それには、私鉄で30分ほどの観光地へ行った、ぼんやりした記憶も結びついています。でも、駅の記憶だけで、観光地の想い出も、ヨーヨーを買ったいきさつも、思いだせません。

ぜんぶひっくるめて、記憶は「哀しい色やね」だけなのです。

それは「青みがかった、パルテルカラーの黄緑色」とでも言いましょうか。

「パステルカラー - Pastel Colors - WEB色見本 原色大辞典」をお借りすると、「#7fffbf」の色が近いかな(ネットで見れますよ)。

どうして君は、あのとき哀しかったの?

なぜ、この色がマタタビなの?

おさないわたしは、なにもこたえてくれません。

(2015/7/27 8:36 by さくらんぼ の再掲)

追記Ⅱ ( 古い奴だとお思いでしょうが )

「ハヤブサ2」のご成功おめでとうございます。

とても素晴らしいことです。

その上で、申しあげるのですが…

関係者らしき方が、「初号機とは違うのだよ、初号機とは!」という紙を、ニュースのTVカメラに掲示した行いは、正直に申し上げますと、哀しかったです。

「研究者である我々の努力で、初号機を凌ぐ性能を持っている」という事を言いたかったのでしょう。実際、その通りだと思います。研究者の方々には敬意を捧げたいと思います。

でも、初号機が傷だらけで地球に帰還し、自らを犠牲にして、カプセルを届けてくれた時の感動は、とてもマシンとは思えませんでした。

初号機は、文字通り、私たちのスーパースターになったのです。ですから、どなた様にも、その思い出は、大切に扱ってもらいたかったのです。

(2019/2/22 22:23 by さくらんぼ の再掲)


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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