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#ネタバレ 映画「追憶」

「追憶」
2017年作品
女なんてさ
2017/5/10 14:06 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

この映画は「密かに女が主役」なのかもしれません。「この世は女が回している」 「父ちゃんよりも、母ちゃんが強く」 「犯罪の陰に女あり」みたいな。それに比べれば男なんて子ども。女の手のひらで転がされているようなものかもしれません。

それに映画「駅・STATION」のDNAも引き継いでいます。

「 人気TVドラマ『素敵な選TAXI』の劇中劇に『犯罪刑事(デカ)』というのが出てきて、『犯人は俺だ~』という主役デカの決めゼリフが面白いですが、この映画『 駅・STATION』も、ある意味、健さんという、罪人刑事(つみびと)の、改心への旅路の物語だったのですね。

…(中略)…

この映画は、私たちも寡黙な健さんと一緒に旅をすることで、彼(加害者である健さん)の、心の軌跡を想像する映画なのです。他の事件、犯罪者は、健さんの家庭教師、教材でもあります。… 」( 映画「駅・STATION」2014/12/8 by さくらんぼ 追記Ⅱより抜粋 )

そんな「降旗康男監督と撮影の木村大作9年ぶり新作」と言えば、観ないわけにはいかないでしょう。

今回も「犯罪刑事(デカ)」の物語で、兄弟の様な作品です。映画「駅・STATION」よりも刑事の心情が分かりやすくなっているので、こちらから攻略するのも良いかもしれません。

★★★★

追記 ( ご夫婦の熱演 ) 
2017/5/10 18:19 by さくらんぼ

何人かの女性のうち、中心的役割をしているのが、涼子(安藤サクラさん)です。彼女は親に捨てられた3人を我が子のように可愛がって育てていました。常連客の光男(吉岡秀隆さん)とともに。

そのとき事件が起き、涼子が子どもたちの罪をかぶり、かん口令とともに、子どもたち3人は離散してしまいます。

そして25年後…

やっと出所した涼子は、また運の悪いことに、交通事故で頭を打ったらしく、認知症のようになり、車いす生活を送っています。

そこへ3人のうちの一人・川端悟(柄本佑さん)が見舞いに来るのです。

涼子の認知症状を見た川端は、ピエロのようにおどけてみせます。まるで赤ちゃんをあやすように。すると涼子は横を向き、露骨に「ウザイな~」な顔を見せるのです。それでもめげずにピエロを演じる川端。哀しいシーンです。

でも、安藤サクラさんの実際のご主人が柄本佑さんだと知ると、この「ウザイな~」が喜劇に。。。

このダブル・ミーニングなシーンが面白いです。

喜劇は映画「駅・STATION」でも一つありました。

健さんが居酒屋の女将さんとHをしたあと、「私、大きな声出さなかった?」と聞かれるシーンです。その返事の、健さんの本音と建て前がおもしろいのです。

追記Ⅱ ( 映画「シックス・センス」 ) 
2017/5/10 21:37 by さくらんぼ

を思いだしました。

あえて詳しくは書きませんが。

追記Ⅲ ( 「愛情と手がかりの証」 ) 
2017/5/11 9:55 by さくらんぼ

>そのとき事件が起き、涼子が子どもたちの罪をかぶり、かん口令とともに、子どもたち3人は離散してしまいます。(追記より)

その事件とは「涼子の元彼らしい男(刺青あり)が押しかけてきて彼女をレイプし、それを見た子どもたちが男を刺殺した」のです。

あとで判明するのですが、涼子は男の子供を身籠っていました。そして子供(女の子)は「母の名も、父の名も知らない捨て子」として育てられたのです。

女の子は可愛い娘に育ちました。近くにいた啓太(離散した3人の内の1人)は不覚にも惚れてしまい、結婚することになったのです。

妻が、「まだ見ぬ父を殺した犯人が夫」だと知ったら、この結婚は破たんするかもしれません。そして両親が共に前科者であることも彼女を悲しませる材料になります。

でも、すべてを闇に葬り去ってしまうだけで良いのでしょうか。

この映画では「その秘密は口伝で、限られた関係者にだけ伝えられていく」のです。

ところで…

映画とは直接関係はありませんが、世に「赤ちゃんポスト」と言うものがあります。

どんな理由があるにせよ、せめて担当者と対面して赤ちゃんを預けていくべきだと思いますが、やもうえずポストに置くにしても、「愛情と手がかりの証」ぐらいは一つ残していって欲しいものです。

「 … ゆりかごに預けられ里親のもとで育ったナオキ君は、伝えたいことがあると言います。

『 これから預けるお母さんへの メッセージというか・・・、大人になっていくにつれて疑問とかもたくさんわいてきて、もしかしたらそういうのに悩んだり苦しんだりする子も出るかもしれないので、写真とかを1枚だけでも一緒に託す、預けてくれることによって、その子どももその時かわいがられたとか大切にされていたというのが、やっぱり目に見える形で残した方が子どもにも良いことではないかと 』 」

( Yahoo!ニュース TBS系(JNN) 5/11(木)配信 「『赤ちゃんポスト』10年、預けられた赤ちゃんの今」より抜粋 )

追記Ⅳ ( 映画「冬の華」 ) 
2017/5/12 13:58 by さくらんぼ

>女の子は可愛い娘に育ちました。近くにいた啓太(離散した3人の内の1人)は不覚にも惚れてしまい、結婚することになったのです。(追記Ⅲより)

今の啓太は土建屋さんを経営していますが、妻と従業員の前で「妻を愛している」と臆面もなく言ったりします。その「軽さ」にわずかの違和感を感じていましたが、そんなシナリオになっている理由が分かったような気がします。

この「自分が殺した男の娘を、見守った男」という設定は、同じく降旗監督の映画「冬の華」の健さんと同じだったのです。

そして映画「追憶」では「密かに責任を取って嫁にもらった」可能性があるのです。

両親不明の捨て子とあらば、良家に嫁ぐことは難しいかもしれませんからね。ならば「どんな良家に嫁ぐよりも、俺が精一杯かせぎ、精一杯愛して幸せにしてやる!」と覚悟を決めたのかもしれません。それを隠す心理から、くどいぐらいの「愛の言葉が口に出る」のでしょう。

啓太は娘を妻にしたことについて、刑事になった篤(アツシ)に、「惚れたんだから、しかたないだろ!」と言い放ちました。それに嘘はないでしょう。しかし話はそうシンプルではありませんでした。

啓太の愛に嘘は無いにしても、無理と歪が混じっていると疲労がたまり、将来「浮気」につながる可能性も。それがまた悲劇の連鎖に…。

追記Ⅴ ( メンマ ) 
2017/5/15 14:35 by さくらんぼ

子どもの頃、大根おろしを食べると舌が切れるように痛かった。子どもの舌が敏感なことも理由だけれど、昔の大根は今より辛かったみたい。

ウスターソースもそうでした。千切りにしたキャベツにマヨネーズとウスターソースをかけたものが、わが家のメインディッシュだったこともありましたが、あれも痛くてヒリヒリするほど辛かった。

しかも食事中に水を飲むことは御法度。「水を飲むなら味噌汁を飲め」と父に叱られた。そして、その味噌汁には頭付きの煮干しが何匹か入っていて、小骨はあるし、苦いし、パサパサするし、でも不味くても残せなかった。

親の味覚で「問題なし」と判定された物に子が異論を唱えることは許されなかったので、「理性で感覚を無視」し、「平然」を演技して食べていました。ましてや「美味いとか、不味い」とかは、「子どもの言うことではない」と一蹴されました。

今でも覚えています。あの痛みは、虫歯か口内炎なのに、無理に平気な顔して食事をするようなもの。

そのせいか、子どもの頃から苦い薬を嫌だと思ったことは一度もありません。大根おろしやウスターソースの戦場にくらべれば、まったく無問題です。ましてや嗜好品ではなく、薬ですからね。

ところで、涼子をレイプした男を「殺ろう」と最初に声を上げたのはメンマの嫌いな篤(アツシ)でした。

でも篤(アツシ)はバットで仕留めそこない、返り討ちにあいそうになったので、見るに見かねた啓太が包丁で集団的自衛権!?の行使をしたのです。

では、篤(アツシ)はなぜ最初に「殺ろう」と言ったのか。

たぶんそれは、男のことを排除すべき「メンマみたいにクサイ奴」だと感じたからです(ちなみに私はメンマ好きです)。

この篤(アツシ)は、悟(柄本佑)をラーメン店で見かけても、挨拶もせずに逃げだそうとしました。悟の事も「クサイ奴」だと思っていた節があります。

追記Ⅵ ( 降旗康男監督 ) 
2019/6/7 10:13 by さくらんぼ

私が名前を知っている数少ない監督の一人に、降旗康男さんがいました。

色々な作品を楽しませていただきましたが、この映画「追憶」は遺作だったと思います。

遅くなりましたが、降旗康男監督のご冥福をお祈りいたします。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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