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#ネタバレ 映画「ドライヴ」

「ドライヴ」
2011年作品
5分間だけ待つ
2012/5/27 9:44 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

この世は絶妙なバランスの上に成り立っています。もし、それが崩れた時、過去にはテレビの「ウルトラQ」で描かれた世界の様に、そして現代では大震災の様な大変な事態になります。

映画「ドライヴ」では、一人のドライバーが愛のためにバランスを崩し暴走するさまが描かれていました。しかし彼は5分間だけ待つドライバーに徹し、犯罪には直接関与しないでおくべきでした。映画のスタントマンもしていましたが、スタントマンもドライバーもある意味裏方さんです。そこに徹しておけばよかったのです。

しかし裏方さんでいると時にエネルギーが鬱積します。そして愛のためなら死もいとわない!?のが男の性(サガ)です。その性が、鬱積していたエネルギーを放出してしまいました。カースタントは鬱積されたエネルギー(充填120%)の記号、サソリは破滅的暴力(波動砲てー)の記号なのでしょう。

ドライバーは孤独な木枯らし文次郎の様に、つま楊枝の様なものをくわえていました。これは子供の頃に母の愛情が不足していた記号なのでしょう。彼らはもっと母親のおっぱいが飲みたかったのではないでしょうか。そこにぶら下がった愛、しかし、一人のドライバーが暴走すると、玉突きの様に、彼に関わりのある人たちも次々とバランスを崩していきました。

映画「シェーン」に似ているとささやかれていますが、「シェーン」は忍耐を描いていて、実は銃社会アメリカで生きるための教訓を語る教育的映画だと思いました。子供には子供の教訓、大人には大人の教訓が描かれています。その為、ストーリーにタメ(忍耐)があります。黎明期アメリカの希望も感じられました。

しかし「ドライヴ」は忍耐の教育映画と言うよりは、鬱積されたエネルギーの放出をアートとして描いていました。連鎖反応的にタガが外れ、暴力に走ってしまう人たちが描かれていて、現代アメリカの持つ終末的な感じがしました。

評判が良くロングランをしていたので観に行ったのですが、ニューシネマな物語には残念ながらあまり感動できませんでした。しかしキャリー・マリガンさんは魅力的でした。

★★★

追記 ( 失業率 ) 
2012/6/11 16:30 by さくらんぼ

若者の失業率、ヨーロッパではなんと50パーセントを超えているらしいです。それは想像するだけで怖くなるほどの数字です。映画「ドライヴ」の深層では、そんな若者の心も描いていたのかもしれません。終身雇用の正社員など夢のまた夢で、裏方のアルバイトを探して食いつないでいる人たちの哀しみです。スタントマンも、ドライバーも、夜の仕事も、ある意味裏方でしたから。

それから、その夜のシーンですが、もっと積極的に、例えば映画「ワイルド・スピードX2」の様に美しく撮影したらどうだっただろうかと、ふと考えました。映画「ワイルド・スピードX2」の、口をあんぐりと開けてしまうほどの遊園地的ネオン光の美しさは、映画「ドライヴ」の空気とはちょっと違うかもしれません。裏方の哀しみの表現がダウンします。でも、それは、それで、悪くないと思うのでした。イチゴ大福的アン・マッチなら、この映画も別の次元にぶっ飛べそうです。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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