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#ネタバレ 映画「塔の上のラプンツェル」

「塔の上のラプンツェル」
2010年作品
恋泥棒は罪にならない
2014/6/9 10:51 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

寅さんは好きですが、寅さん映画を観ていると、たいてい終わりには不快な気分が残るのです。最初は気づかなかったけれども、何本も観ているうちに、鼻につくようになりました。

それは、ほとんどのヒロインが寅さんを恋愛対象としては見ていないのに、寅さんに惚れているかのようなそぶりを見せるところです。悪意はないにせよ、まったく無神経なヒロインです。あんなにされたら、私でも勘違いします。

そのため寅さんは、いつも全身全霊で考え、どうしたら、あの女を幸せにできるのだろうか、どうしたらヤクザな俺が堅気の生活に入れるだろうか、などと、悩むのです。

この悩み、恋愛特有の悩みですが、若者でも、その心労は大きいのに、ましてや中高年にとっては大変なダメージになります。

極論すれば、中高年の人の中には、恋をしただけで、エネルギー不足から本当に病気になる人さえいるはずです。私は、あちこちのレビューで「恋せよ中高年」を謳っていますが、己を知らないと、命取りになりかねません。

そして、寅さんの内面の葛藤もむなしく、ヒロインは、最後には、寅さんをうがい薬の様に吐き出して去っていくのです。いや、多くのヒロインたちは、寅さんを捨てたことにさえ気が付いていません。

リアルに考えれば、寅さんみたいなフーテン野郎(失礼)に女性が簡単に心を許すわけがありません。一見、寅さんよりもずっとジェントルマン!?な私でさえ、ときに向こうから歩いてくる女性は道の反対側へ逃げていくのですから…。

失恋しても寅さんは、精一杯、平静をよそおって、女性に笑顔まで見せて去っていきます。私でもきっとそうするでしょう。そうするしか、二人が最小の傷口で済ます方法が見当たらないからです。でも、そのシーンになると、いつも、やるせなくて、憤りさえ覚えます。

「恋泥棒は罪にならない」。なんて残酷な言葉なのでしょう。

そして映画「塔の上のラプンツェル」。

この映画には三種類の泥棒が出てきます。

ラプンツェルを誘拐した魔女、泥棒フリン、そして海賊たちです。

みんな、何かを盗みます。

しかし、泥棒フリンだけは、こともあろうにラプンツェルの、大事な、大事な、心を盗んだのです。

フリンはそんな大罪を犯したのに、ましてや泥棒なのに、王女のラプンツェルと結婚できたなんて、まったくもって、世の中どうかしています。ひょっとして次期国王になるかもしれないのに。

でも「恋泥棒は罪にならない」のですから、しかたありません。

恋泥棒の被害者である寅さんと、加害者である泥棒フリン。

しかし、被害者寅さんは哀しく去っていき、老い先は、誰にも知られず、旅先のどこかで孤独死でしょう。一方、加害者フリンに、あんな幸福が訪れるなんて、人生は不条理なものです。

ところで、話は変わりますが、このレビューは斜に構えていて正統的ではありません。賢いA.Iロボット君の研究が行われていますが、彼には書けるかな(笑)。

私は音楽を聴くとき、CDを針音(PCで人工的に発生)のする、ふくらみのあるLPの音や、昔の真空管ラジオみたいな、少々雑音(PCで人工的に発生)もあるが、味わいのあるAM放送の音で聴けるオーディオが欲しいと思っていますが、そんな製品を、私は知りません。

技術的には簡単だと思いますが、きっと需要が少ないからでしょう。なので、きっとロボット君にも斜に構えたレビューは書けないんだろうな。

そうすると、レビューだけでなく、ロボット君が大勢活躍する近未来は、たとえば接客業の90パーセントがロボット君の職場になったら、客の人間様は街ブラをしても味気ないかもしれない。

などと、人間臭く、無理やり収束してみたのでした。

★★★★★

追記 ( 角栄さんの偉大さ ) 
2014/6/12 6:38 by さくらんぼ

散歩のついでにホームセンターの本屋さんへ寄りました。

なにげなく立ち読みをしていたら、田中角栄さんの特集本があって、かたすみに角栄語録が載っていたのです。

アフォリズムとか、語録とか、私は大好きなので、さっそく読んでいたら、そこに「女は砥石と同じだ。接すれば、かならず男は、すり減る」みたいな言葉が書いてありました。

やっぱり、そうなんだよなぁ…さすが角栄さんスルドイと、私は、しみじみ納得して、本を置きました(ごめんなさい。本当は買いたかったのですが…)。

私や寅さんはもとより、一見ラッキーな泥棒フリンさえも、身分違いの王室に結婚で入って、やがて、あまりの生活習慣の違いから心労が重なり、すり減っていくのだろうと、思いました。

やっぱり泥棒には、いつか天罰が下るのでしょうね。

追記Ⅱ ( ぽっかり )
2014/6/13 6:01 by さくらんぼ

「人を愛することは、希望よりも絶望に近いものである」

話のついでに、「アフォリズム」で検索して、ネットサーフィンをしていた時に偶然見つけた言葉です(誰の言葉だかは分かりませんでした)。

確かに、その通りです。一理あります。

でも、そうだよなぁ、などと、余裕で納得している気分ではなく、むしろ、チャイムが鳴ったから、「は~い!」と、玄関のドアをかけた瞬間、マグナム44で胸板を撃ち抜かれたかのようなショックを受けました(たぶん)。

追記Ⅲ ( 旅路の果てに )
2014/6/13 10:09 by さくらんぼ

「幸福は誰かと分かち合えた時、現実となる」

なにげなくYahoo!ニュースなど見ていたら、人生相談のコーナーに、映画から受けた教訓が一つ書いてありました。

そうですよね。いくら一人旅(孤独な人生)が好きだと言っても、気がつくと旅先では看板娘の笑顔など探しているのですから、人間、やっぱり一人ではさみしいんですよね。

映画名は書いてありませんでしたが、私も映画ファンのはしくれですから、ピンときました。たぶん映画「イントゥ・ザ・ワイルド 」でしょう。

あれを観た時には、正直、そんな感銘は受けませんでしたが、今、観たら、もっと違うと思います。私も少し歳をとったのかも。

寅さんも、寅さんの美しきヒロインたちも、ラプンツェルも、泥棒フリンも、みんな、みんな、無意識の中、幸福を誰かと分かち合いたいからこそ、そんな相手を探していたんですね。恋愛というだけでなく。

追記Ⅳ ( エンドロール )
2014/6/16 6:13 by さくらんぼ

「  あなたに会えて ほんとうによかった 

嬉しくて 嬉しくて 言葉にできない… 」

小田和正さんの名曲「言葉にできない」より。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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