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#ネタバレ 映画「ブルーに生まれついて」

「ブルーに生まれついて」
2015年作品
私はどこでチェットを知ったのだろう
2016/8/23 14:29 by さくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

私はどこでチェット・ベイカーを知ったのでしょう。マイルスほどメジャーではないのに、気がつくと、いつのまにか何枚かのCDを持っていました。その内一枚が「チェット+1」として宣伝されているもの。

ひさしぶりに、その一曲目「アローン・トゥゲザー」を聴くと、退廃の世界なのに、その極点アートに、いつも膝を正したくなります。たとえが適当かは分かりませんが、古賀政男の名曲「影を慕いて」を聴いた時みたいに。もちろん、こちらの世界観は退廃ではありませんが、どちらも極点であることに変わりありません。

そんな彼の生涯が、映画「ブルーに生まれついて」として今年の秋に公開されるのです。先日、なじみの映画館に置いてあるチラシで知りました。この書き込みは前夜祭のつもりです。今から楽しみ。

オーディオ的には、彼の音楽(トランペット)は、できれば「ふくらみのある真空管アンプ」と「トランペット再生に定評あるホーンスピーカー」で聴きたい。秋の世に、ウイスキーを友にして、しんみりと…。

追記 ( ホーンスピーカー ) 
2016/8/23 17:01 by さくらんぼ

「ホーンスピーカー」で検索すると、「学校の校庭にでもありそうな、ラッパ型の屋外スピーカー」が出てきやすいですが、私の言っているのは「オーディオ用の、室内で使うスピーカー」のことです。間違って買う人はいないと思いますが、念のため申し添えます。これは道楽者の内輪話です。CDラジカセでもチェットが楽しめることは言うまでもありません。

追記Ⅱ ( 「木枯し紋次郎」 ) 
2016/12/1 14:32 by さくらんぼ

「引きこもり」という言葉があるなら、「木枯し紋次郎」は「道こもり」だと言ったことがあります。目的地など「道こもり」の方便・幻であり、彼にとっての幸せは「道中の夢の中にしかない」からです。

そして映画「ブルーに生まれついて」のチラシの一枚。彼の膝枕で微笑む彼女、そして彼の手にはトランペットが。そのとき彼はペットも吹いていなければ、彼女に口づけもしていないのです。彼の幸せはあの「間隙にしかない」のかもしれません。

彼がペットを吹くにはドラッグが必要になり、彼女との関係が破たんします。彼女を取ればドラッグが使えなくなりペットに最高の愛撫を加えることが出来ません。

この「どっちつかず」、それが彼のつかの間の幸福。しかし、その幸福には不安定ゆえの寂しさ、哀しみが内在している。他にも象徴的に「黒人と白人」「ペットと歌」「ドラッグと(なんとかという薬)」なども出てきます。

ときには何かのはずみでバランスを崩し、一方にくっつくことがあります。それは確かに安定ではあるけれど、他方を失うことになるので、やっぱり、やるせない寂しさと哀しみが押し寄せる。そのときトランペットに口づけしていれば、彼はすすり泣き、最高のパフォーマーに。

ラストシーンが素直にメロドラマしていて、「いいんじゃない!」と思いました。

★★★★

追記Ⅲ ( 映画「コマンドー」 ) 
2016/12/1 14:38 by さくらんぼ

>ときには何かのはずみでバランスを崩し、一方にくっつくことがあります。それは確かに安定ではあるけれど、他方を失うことになるので、やっぱり、やるせない寂しさと哀しみが押し寄せる。…

映画「コマンドー」のレビューに書いた「仕事の話」を連想します。

そのときの仕事を断っても、受けたとしても、やっぱり一抹の寂しさと哀しみは避けられないのだと思います。

追記Ⅳ ( 「私を憐れまないで」 ) 
2016/12/3 7:44 by さくらんぼ

私はクラシックもジャズも聴きます。でも二つの音楽が私の心に沸き起こす感情は違うのですね。専門的にはどうか知りませんが、クラシックは「午前」、ジャズは「午後」にふさわしい気がします。私はけっして朝日の中でジャズを聴こうとは思わないのです。スポーツセンターなどで朝からBGMにジャズが流れていることがあって「???」と思うことがありますが。

以下の話、むかし友人に話したところ、まったく同意が得られませんでしたので、異論のある方が大勢であろうと思いますが、それを承知でさらに私見を書きます。

これはクラシックに宿る「前向き・精神性の高さ」と、ジャズの「後ろ向き・退廃」にあるのでしょう(善悪ではありません。芸術の話です)。

ジャズのルーツは「黒人奴隷の哀しみ」だと私は思いこんでいます。ならば奴隷制度を作った白人にジャズが演奏できるのかという疑問に突き当たりますが、人種に関係なく人の世には哀しみが存在するので可能なのでしょう。

その哀しみとして「二つのものの間にゆれ動く主人公」がいました。そして彼の「哀しみはどちらか一方を選択することで最高潮に達する」のです。それは「所有する者の哀しみ」「金持ちの哀しみ」でしょうか。いかにも白人らしいそれだったのかもしれません。

映画のラスト、ペットの部品から作ったネックレスを外して去ってゆく黒人の恋人。

彼女の最後の言葉は、たしか「私を憐れまないで」でした。あれは「これぐらいのことで私はジャズらないわよ」と言ったのかもしれません。

追記Ⅴ 「LGBTQに生まれついて」 
2016/12/3 7:54 by さくらんぼ

今なぜこの映画が作られたのか。

チェットに対して「女みたいな歌い方だ」というセリフが有ったような記憶です。さらにドラッグを使って演奏するときの「自分の頬を撫でる、艶めかしいしぐさ」、そして「二つのものにゆれ動く」という点も。

つまり時代を象徴するワード、「LGBTQに生まれついて」が深層を流れているテーマだったのかもしれません。



(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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