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アートプロジェクトの拠点形成 足立区、墨田区、町田市、そして神津島

美術館やギャラリー、文化施設を飛び出して、まちなかを舞台にするアートプロジェクト。それぞれに事業を進めるなかで「拠点形成」がひとつの目的や、手段になることがあります。

行き交う人々が目にする、立ち止まる、集まる場所になっている。スタッフの作業場所というだけでなく、耳を傾けて情報収集し、いつしか地域の情報を訪問者と教え合う。作品を並べれば展覧会に、楽器を鳴らせば演奏会に、誰かが役を演じれば舞台に。最近では、配信用機材を備えて新たな取り組みのきっかけとすることも。

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HAPPY TURN/神津島」拠点の一角にも配信・収録設備があります。

東京アートポイント計画でも、共催団体の方々によって地域に根ざした「拠点形成」を見ることができます。今日は、その中から4つの事例をご紹介。
なお、それぞれの事業や拠点の開室日については各公式Webサイト、公式SNS等から最新情報をご覧ください。

仲町の家 [足立区]

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足立区千住仲町29-1(北千住駅より徒歩約10分)

アーティストと市民が協働し、足立区千住地域を中心にまちなかでのプロジェクトや作品制作を続けてきた「アートアクセスあだち 音まち千住のえん」。運営に携わる学生や教員が通う東京藝術大学千住キャンパスの近くで、庭のある古民家を文化サロン「仲町なかちょうの家」として開室しています。ときには、展示や演劇、演奏、ワークショップの会場になることも。空間の特徴を活かした様々なプログラムや市民の交流が部屋を彩ってきました。
近隣住民や地域で活動するクリエイター、観光客、千住に引っ越してきた、職場があるという方々まで、世代や職種をこえて、それぞれが思い思いに時間を過ごしながら、ふと出会い、情報交換する場になっています。

>> 公式ウェブサイト >> 公式SNS >> 拠点について詳しく知りたい

くると [神津島村]

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神津島村 998(神津島前浜港より徒歩約10分)

神津島にまつわる様々な立場の人が出会い、新しい考え方や変化のきかっけを生み出すプロジェクト「HAPPY TURN/神津島」では、遊び、学ぶ場としての拠点「くると」がひらかれています。
中華料理屋だった頃の柱や屋根はそのままに、道路に面した壁は透明の波板で覆われ、陽の入る空間が広がっています。天井の高い部屋、玄関いっぱいの黒板、大きな庭で子どもたちが遊んでいる風景が印象的です。向かいの建物には配信室と自習室を備え、オンライン企画に活用したり、大人が資格の勉強をしたり、それぞれの学びを紹介したり。何かが生まれる、あるいは様々な企画の基盤になる交流が、日頃から育まれている場所です。

>> 「くると」誕生の記録はこちらから(岩沢兄弟HP)
>> 公式ウェブサイト >> 公式SNS >> 拠点について詳しく知りたい

こもれび堂 [町田市]

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町田市忠生2-5-33(簗田寺の一角、町田駅よりバス約20分)

町田市忠生ただお地域において、土地の歴史や性質を知り、体感する活動を続けながら、文化催事の構造を設計してゆこうとする試み「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」でも、今後、本格的に拠点をひらくべく奔走中です。
それまでもプロジェクトの開催地となっていた簗田寺りょうでんじ、その一角に建つ「こもれび堂」に、本棚や、ちょっと休めるソファ、大きな作業机などを設置。自然豊かな里山のふもとに、大人も子どもも一息つける空間が現れています。2021年11月には「こもれび堂 家具づくりワークショップ 〜一緒に活動拠点を作ろう!〜」と題して、組み合わせ次第で机や椅子、舞台にもなる箱型の家具を参加者と制作しました。

>> 公式ウェブサイト >> 公式SNS

藝とスタジオ [墨田区]

ファンファン
墨田区東向島5-23-3(曳舟駅より徒歩約10分)
写真:成果展示「スミログオープンアーカイブ」の様子

墨田区北東部を中心に、地域の歴史や人々との出会いを通して、よりよく生きることを考える「ファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちー」でも、2021年度から新たな活動拠点「げいとスタジオ」をひらきました。
プロジェクトの参加者のみならず、事務局同士での対話も重視しており、丁寧に言葉を交わす居場所になっているほか、展示をひらいたときには地域の学びの場として活用されています。まだ誕生したての拠点には工具や配信機材などを揃え、これからどんな表情を見せるのか、誰が集い、何が起きるのか、試行錯誤に向けた準備が進められています。

>> 公式ウェブサイト >> 公式SNS

拠点ができれば終わり、ではない


本日の紹介はここまで。それぞれの拠点には、まだまだ知らないエピソードや風景が眠っているので、機会があれば気軽に門をたたいてみてください。

改めて事業を眺めてみると、基盤となる事業設計や、大切にしたい思い、地域との関係、あるいは想定通りにゆかないことさえも「拠点形成」を取り巻きながら、多彩な在りようが浮かび上がるようです。

諸々の申請手続き、安全管理、運営体制、ご近所への挨拶、付き合い方、そもそも地域への公開性をどのように考えるか、どんな機能を持たせるか、この場所のことをどうやって広報するか……。
つくる前も、つくった後も、悩みもアイデアも尽きません。

ふと、そこに訪ねてみるとスタッフに出会うことができる。企画の実施日だけでなく、どうやら面白そうなざわめきが普段から滲み出している。
場所をひらけば終わりではなく、そうして育まれる日日にちにちの生態系を支えにして、アートプロジェクトは今日も動き続けてゆきます。

▼ 「東京アートポイント計画」について詳しくはこちらから