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「以後」になると、「以前」が遠くに感じられる|7/4〜7/8

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事中心。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中に開始。3回目の宣言解除の日から再開、少し休んで「第6波」から再々開。すぐに途切れて、再々々会。もう3年目。

2022年7月4日(月) 上野→市ヶ谷

雨が降っている。でも、暑いものは暑い。月曜日の上野公園は、ほとんどの施設が休館のためか静かだ。東京国立博物館平成館に「だれもが文化でつながる国際会議」へ。セッション4の「つながりを生み出す:私たちの文化的生態系」に参加する。大きな力に対するためには集まることが必要……Collective、Platform、Groupであることを繰り返し語っていた(と思う)Struggles for Sovereignty: Land, Water, Farming, Food(SFS)のニサさんの一言が腑に落ちる。変動が激しい社会状況があることや連帯、連携、つながりと置き換えては意味が変わりそうで簡単に比べるのは難しいと思いつつ、日本で「アートNPO」や「アートプロジェクト」がやってきたこと(やろうとしてきたこと)は、ひとつの参照項になるのではないかとも思う。
小さいからこそできることがある。それゆえ、集まって大きな力との対等性(対抗性)を獲得することが大事になる。とはいえ、ひとつの主体を強くする(生き残る)ことも求められる……でも、それによって失うこともある。
昼を食べてから、東京都美術館の関連展示も見にいく。国際人権博物館連盟の取り組みを知る。台湾の国家人権博物館内にアジア太平洋地域連盟が設立されているのだという。博物館とNGOが連携した「移住労働者」に関するワークショップ(「共同学習エンパワーメント講座」と書かれていた)が興味深かった。フィールドワークやフォーラム、それから展示づくりまでを行うのは、小金井アートフル・アクション!の「まちはみんなのミュージアム」多摩の未来の地勢図の連続ワークショップのやりかたと似ている。「Ayo!Ayo!明日はきっといい日 移住労働者人権特別展」は会場のモニターから見ることができた。知らないだけで近しい事例はたくさんある。台湾に行きたい……と思った瞬間に「いま」は行けるのかと考えてしまう。

2022年7月5日(火) 府中本町→市ヶ谷

Artist Collective Fuchu(ACF)のミーティングへ。配布された資料が充実している。A3で出力されたエクセルのスケジュール表は、列が大分類で本体事業(ACFの法人としての動き)、事業部(プログラム×4本)、メディア部(ラジオ、ニュースレター、ウェブサイト、複数のSNS、ニュースレター)に分けられている。それぞれの列には、縦軸に刻まれた年月に沿って予定が埋められている。それぞれの動きを連動させようとする意思が感じられる、いい表だった。ACFは他の事業に比べても、関わる人が多い。会議は、いつも7〜8人が大きなテーブルを囲んで議論をしている。地元に暮らすメンバーが、手持ちの時間や資源を持ち寄って事業をつくっている。事業の年数を重ねることで、さらにメンバーは増え、プログラムも多様化してきた。それゆえ、事業の動かしかたには、さまざまな工夫が生まれている。
昨年度からはじまった「ラッコルター創造素材ラボー」がヒットしている。市役所の市民協働や環境のフェスティバル、商工会のお祭りなどに出てほしいと声がけが増えているのだという。そのスケジュールを箇条書きにした、A4のペーパーが1枚できていた。それだけ「祭り」が再開してきたということなのだろう。

2022年7月6日(水) 市ヶ谷→秋葉原

曇り空。予報は一時雨。午前は明日のミーティング用の書類づくり。午後はROOM302で東海大学広報メディア学科のゼミの方々にアーカイブセンターでの取り組みを紹介する。アートプロジェクトは活動が小さく、プロジェクト型の作品は無形のものも多いため、資料が残りにくい。チラシがあっても、冊子まで「綴じる」ことができるものも少ない。資料がないということは、活動を語りうるものもなくなってしまうということ……毎度のことながら、人に話をすることであたりまえになっていることを確認する。
東京都の新規感染者数は8,341人。前週比で4,538人増えた。あるニュースで識者は「3回接種の陽性者かなり増」と語っていた。政府は全国旅行支援を延期検討。

2022年7月7日(木) 錦糸町→有明

出先での打ち合わせから、そなエリア東京に行く。カロクリサイクルのリサーチとして、NOOKの瀬尾夏美さんと中村大地さんも一緒だった。そなエリア東京は東京臨海広域防災公園にある国営の防災学習施設だ。NPO法人プラス・アーツがプログラムや展示づくりにかかわっていた。近々、プラス・アーツの東京事務所へ話を伺いに行く予定もあり、その準備も兼ねている。
体験型のプログラム「東京直下72hTOUR」に参加する。エレベーターのなかで地震が発生するところからはじまる。なかなか揺れが怖い。その後はタブレットを使って、クイズに答えながら、被災直後のジオラマのなかを歩きまわる。みんなが同じなのではなく、人によって違う質問になっているらしい。公園にあるベンチが「かまど」になることを知る
2階の展示の先には、緊急災害現地対策本部を上から眺めることができた。そなエリア東京は防災体験学習の施設であり、緊急時は自衛隊など政府の拠点となる。天井の高い壁面には無数のモニターがあり、複数の映像が同時に流れている。いつでも使えるように机、パソコン、電話、オフィス機器などが整然と並んでいる。シン・ゴジラの撮影でも使われたのだという。見学に来ていた中学生が興奮していた。
何かあったときに、ここは避難場所としては利用できない。館内にいる人も別の場所に移動する必要があるのだという。臨海部にあるけれど浸水はしない……という理由はわからなかった。「国土」づくりのスケールで防災が語られていた。つい東北の震災伝承施設のことを思い起こしてしまう。

東京都の新規感染者数は8,529人、国内では47,977人で前週の倍以上になった。都知事「第7波に入ったとも考えられる」と発言。

2022年7月8日(金) 自宅

晴れているけど、涼しい。感染者数が増えていることもあり、昨夜は思い立って、自治体の大規模接種会場でのワクチン接種の予約をいれる。接種券のIDを使ってオンラインでスムーズにできた。3回目は職域接種直前に家族が発熱したため、それから接種しそびれていた。2回目から1年近くが経っている。予診票を書きながら、副反応がどうだったかと思い出そうとするが、大変だったということ以外、感覚を忘れている。朝イチで市役所に向かうと、会場は空いていた。ほとんどが接種4回目の高齢の方々のようだ。受付で付与された「25番」の人として流れ作業のように動き、問診を受けて、注射を打ってもらう。痛い。15分の経過観察。等間隔に並んだイスに座って待つ。テレビではピアノの演奏が流れていた。
腕は痛いが、それ以外は支障がないので、在宅勤務をする。いくつも確認すべきファイルが溜まっている。昼近くになって、安倍元首相が奈良で演説中に銃撃されたというニュース。SNSのタイムラインには近くにいた人が撮影した映像が流れてくる。ちょうど数日前に仙台で女子中学生が切りつけられる事件が発生していたことも思い出してしまう。民主主義に対する暴力だ……週末は選挙というタイミングで……戦前やオウムのときは……SNSを見るのを止めよう、テレビを消そう……早い流れで情報が飛び交い、なんとも言えない不穏さが漂っている。正直、まだ何が起こったのかわからない。でも、今日はひとつの転換点として語られてしまうのだろう。「以後」になると、ほんの数時間しか経っていない「以前」が遠くに感じられる。
18時前に元首相が亡くなったというニュースが流れる。熱が上がってくる。副反応が本格的にはじまった。寒気と震えに襲われる。そう、この感覚だったと思い出す。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2021年の記録から)

▼ 2年前は、どうだった?(2020年の記録から)