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メートル・キュイジニエ・ド・フランス “ジャン・シリンジャー杯”を振り返って

フランスレストラン文化振興協会(略称、APGF)note編集部員です。
APGF公式note、今回は、2002年にジャン・シリンジャー杯で優勝経験のあるハイアットセントリック金沢の総料理長 市塚 学様からのメッセージです。
是非、市塚 学様の貴重なコンクール挑戦を通じて得たすばらしい経験談をお楽しみください。

地方からの挑戦と人との繋がり

当時私は地方都市からのチャレンジでした。

過去の予選通過者や優勝者、入賞者のほとんどは大都市(東京や大阪など)か、有名なシェフがいる所に所属をしているシェフがほとんどでした。

私がコンクールに挑戦する大きな理由は、今現在の自分の立ち位置と同世代のシェフたちとの違いを確認することでした。

また、色々なシェフ達と繋がりが持て、料理人生で幅が広がった事は間違いありません。


正確なルセット作成とパソコン入力

コンクールの予選は主催者から指定されたルセット用紙で作成し1次審査する大会が多いです。

ポイントとなる事は、料理タイトルの表現は抽象的な表記だと減点になる事もあり、フランス語の誤字やアクサンの抜け、原価の記入や計算にも注意が必要です。

また、ルセットを作成する為にはパソコン入力が必修になってきます。パソコン入力にチャレンジして下さい。


ルセット、料理手順は頭と身体に叩き込む事が時間短縮

最近は審査をさせていただく機会も多く、厨房審査の時など自分自身が作成したタイムテーブルや手順の紙を見ながら進める選手に違和感を感じます。

もちろん競技時間の長さによって必要になることもあるでしょう。しかし2時間程度の競技時間であれば、しっかりと練習をして頭と身体に叩き込む感覚も必要だと思います。

これはあくまで私の感覚と経験ですが…。

また自分の順番が来るまでの控室での過ごし方は、リラックスして自分の料理に自信を持ち、集中力を高められるメンタル面も大切です。


温かいものは温かく

ジャン・シリンジャー杯最初のチャレンジは2001年でした。

決勝に残れたが入賞は出来ず、ある審査員から「料理の内容は良かったが残念なことは全体が冷めていた」とアドバイスを頂きました。

そこで2002年の再チャレンジと共に課題が見えてきました。

“ドレッセの美しさは必要だが、提供温度のほうが大切”なのでは…と。


火事場の馬鹿力は存在しない

私たちは普段なにかしら頑張っていることや、やらなければならないことがあると思います。

それらを成し遂げるために、普段の業務で経験値を積み自信に繋げていると思います。

すでに持ち合わせている潜在能力が無意識に発揮でき、所謂「ゾーン」に入った状態が火事場の馬鹿力だと思います。

逆に言えば“元々持っている能力”となります。自分を追い込んで普段以上の力を発揮できるように経験を積み、自信を得ることで大きな成果が得られるのではないでしょうか。


コンクールは特別なものではなく普段の仕事が全て

コンクールは普段業務の延長上にあると考えています。

勿論コンクール会場は緊張感があり、普段にはない異空間に思えるでしょう。

しかしコンクールで的確に行動をとれる選手は、普段の業務も想像がつきます。是非普段の業務を見直してください。

厨房審査の減点は結果に大きく左右されます。

またコンクールの結果はとても大事ですが、そこにたどり着く為の試行錯誤する過程がもっとも大切な財産になると思います。

普段の業務も大変でしょうが、コンクールにチャレンジして新しい自分のドアを開けてみませんか。

コンクール会場でお待ちしています。

ハイアットセントリック金沢 総料理長 市塚学


市塚シェフ (002)


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