見出し画像

【十周年記念】シャドールの歴史 10期編

第10期 リンクの時代とシャドールの再誕

2017年4月期 ルールの改変と激動

環境の低速化のためか、非常にゲーム性を変えるルール変更がなされた

 2017年4月からアニメ遊戯王VRAINS放送開始とリンク召喚の追加にともなうルール改定があり、荒れに荒れた。EXモンスターゾーンの追加とPゾーンの廃止、そして「リンクモンスターのリンク先、またはEXモンスターゾーンにしかEXデッキからモンスターを特殊召喚できない」という制約の追加で過去のデッキの大部分が大きな大きな影響を受けた。環境の低速化とリンク召喚というシステムの普及のための変更だと思われるが、「リンク召喚を行わないとこれまで通りEXモンスターを並べることができない」という事実に多くのプレイヤーが反発し、のちに「リンクショック」と呼ばれる騒動になったのである。シャドールはもとよりそこまで大量展開を行うデッキではなかったこともあり、一部のソリティアデッキほどの影響は受けなかった。とはいえ、リンク召喚をしないと盤面がミドラーシュ単騎になるという変更はかなり痛いものであった。
 リミットレギュレーションとしては十二獣が大量規制の(妥当とはいえ)憂き目に遭い、十二獣シャドールというデッキが事実上消滅することとなった。

COTD 星杯を作った当初あんな鬱展開になるなんて思ってなかった

 15日には10期第一弾CODE OF THE DUELIST(COTD)が発売された。シャドールに使えるカードはそこまで多くなかったが、ルドラの魔導書の追加は書く価値があろう。このカードは魔導書かフィールドの魔法使い族を墓地に送って2枚ドローができるというものであり、この墓地送りは効果によるものなのでシャドールの効果を起動できる。フィールドにいる必要があることから召喚権を使用することとなるが、シャドールの効果を使いつつ手札交換ができるという点でかなり有用であった。

2017年7月期 インフレの螺旋の中にて

当時2000円くらいした

 7月まで飛び、改訂の時期となった。この改訂では主に十二獣と真竜が規制される結果となり、汎用カードとしてテラ・フォーミングと神の通告もついでに準制限カードとなった。11期に入ってもなかなか変わらなかった環境にトドメを刺す形となった。十二獣が出張セットとして機能しなくなり、それにともない十二獣真竜が事実上消滅することとなった。とはいえ真竜はその地力の高さからまだ耐え、純構築が主流に。緩和の多さもこの改訂の特徴だろう。エラッタで帰ってきていた5枚のカードと儀式やP召喚の汎用カード、依然環境にいた彼岸やDDのカードがこぞって緩和を受け、新ルールに伴いかなり大幅にリミットレギュレーションを変えたと言えるだろう。

CIBR リンクモンスターの層がだいぶ厚くなってきた

 8日にはさっそく新弾のCIRCUIT BREAK(CIBR)が発売され、かなり汎用的に強力なカードが多く登場した。その最たるものが拮抗勝負とヴァレルロード・ドラゴンだろう。拮抗勝負は今でも使われる捲り札であり、どのデッキにも入れられる、手札から発動できる罠としてはタイフーンに続き2例目となる。このカードの登場で「わざとメイン1終了宣言をし、メインフェイズ限定の効果を釣りだす」「盤面以外にも妨害を敷いて一掃されないようにする」「制圧に罠対応の妨害か万能無効を添えておく」といったケアをとるプレイングが誕生した。このことによる環境への影響は大きいと言っていいだろう。ヴァレルロードは汎用ランク4として環境デッキには必ず入っていたほどの汎用性を見せ、アタッカー兼NTR要員として活躍した。
 シャドールにそれなりに関係のあるカードとして、亡龍の戦慄‐デストルドーもこのパック出身だ。芝刈りなどの墓地肥やしで落ちれば自己蘇生が可能なチューナーであり、墓地肥やし系デッキにシンクロ召喚の選択肢を与える重要なカードとなった。シャドールに単体で採用されることはそこまで多くはなかったが、墓地肥やしGSのようなデッキやティアラメンツ併用型では入るカードである。

EP17 こっちのデッキを探ってくんじゃねぇ

 9月に入り、恒例の黒船襲来の時期がやってきた。「また環境が変わるんだろうな」とは思っていたが、今度の来訪者はなにかワケが違う。今までの黒船がただのボートに見えるような異常な展開力、SPYRALの降臨である。ターン1をつけ忘れたサーチを多用した制圧で瞬く間に環境に食い込んできた。シャドールとしては先攻でミドラーシュで封殺すればそれなりに勝機はあったが、如何せん後攻から捲るのがあまりにも辛く、太刀打ちできる状態になかった。
 いいニュースとして、新規テーマのうちの一つ、サブテラーがリバーステーマとしてシャドールと好相性であった。特にサブテラーマリスの妖魔はシャドールで使えるリンクモンスターとして非常に有用であり、シャドールがリンクモンスターを出すのが苦手という点を除けばうれしい新規であった。リバースモンスターをデッキから墓地に送れる上にサーチまで可能ということで、出すことさえできればシャドールモンスターを効率よく回せる、実はサブテラーとそこまで相性は良くない、そんなリンクモンスターである。

2017年10月期 新たなる希望

未だ禁止のカード

 10月のレギュレーションは真竜を絶対に根絶してやるというような規制であった。真竜本体からは2枚の禁止カードと3枚の制限カードが出、真竜とよく使われていた恐竜および竜星も規制の対象となってしまった。
 また、増殖するGが規制されたことも面白い変化だ。強力なドローソースかつ、この頃には大部分のメインデッキに投入されていたカードとして規制されたのだろうか。
 この二点の変化はどちらもSPYRALを相対的に強化するものであり、少しの間とんでもない一強環境を誕生させることとなる。とある大会の上位32名のうち30名がSPYRALだった、なんて噂が流れるほどに。

EXFO ボーダーなんで2000も打点があるんですか??

 14日にはEXTREME FORCE (EXFO)が発売された。この弾はインスペクト・ボーダーやセンサー万別など、今でも嫌われがちな強力なロックカードが出たのが特徴だ。そもそもパッケージイラストのエクスコード・トーカーもゾーン封鎖をおこなうモンスターなあたり、狙っていたのかもしれない。
 シャドールにとって大きかった新規はなんといってもオーバーテクス・ゴアトルスだ。闇属性恐竜族で、墓地に送られたときにデッキから進化薬をサーチできるこのモンスターは、恐竜族とシャドールをつなげる非常に重要な橋渡し役となる。シャドールの融合でゴアトルスを墓地に送り、究極進化薬をサーチ。この動きによりミドラーシュと究極伝導恐獣を並べることが可能であり、従来のシャドールに不足していたアタッカーとミドラーシュの防御手段をいっぺんに用意できるコンボとして非常に有用であった。これにより【恐竜シャドール】が戦えるデッキとして再びシャドールに光をもたらした。

サンプル恐竜シャドールデッキ。ゴアトルスを墓地に送ることに全力を注いでいる。


LVP1 久々すぎる新規に涙

 そして11月15日。シャドール使いにとって歓喜の日、待望の新規が追加されたパック、LINK VRAINS PACK (LVP1)が発売されたのだ。シャドール・ネフィリムはリバースモンスターを素材とするリンク2で、融合効果と自己蘇生効果を持つ。魔法以外の融合を可能にしつつ、リンクマーカーを提供してくれる強力なカードだ。横展開が苦手なシャドールにとって出しづらいモンスターではあるが、融合召喚をする方法がまた一つ増えたことは好ましい。また、再録によりミドラーシュと影依融合の値段が大きく下がったことも非常にありがたかった。しかし、ここでシャドール使いは思っただろう。「あれ?融合の方のネフィリムは?」
 このパックは他のテーマも強化したが、特に汎用性の高いぶっ壊れリンクモンスターを何体か生み出したことで有名である。ライトロード・ドミニオン キュリオス、天球の聖刻印、聖騎士の追想 イゾルデ、ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム、水晶機巧-ハリファイバーといった、海外で禁止になったり、国内でも規制を受けた面々が勢ぞろいしたのだ。この圧倒的なパワーによりSPYRALに対抗馬が何個か出現し、パワーをパワーで解決する9期のおなじみがまた繰り返されるのだと誰もが確信したことだろう。

2018年1月期 現代遊戯王、開幕

他力本願ウナギ、なぜか強すぎて禁止になる

 新年が明け、最初の改訂でリンク召喚と相性の良すぎるカードとSPYRALが規制を受けた。シャドールにとって悲しかったのはマスマティシャンの規制だろう。マスマティシャンはトークンを生み出せるダンディライオンを簡単に墓地に送れるということで、あちらともども枚数を減らされる憂き目に遭った。驚くべきはエンシェント・フェアリー・ドラゴンの禁止で、アニメの主要キャラの使用していたカードが一発禁止になるという異例の事態に多くの人が驚いた。展開効果とフィールド魔法サーチ効果をターン1なしで使えるのはさすがに強力過ぎたか。テラフォーミングが規制されて以降、このカードと盆回しも規制を喰らっており、この頃のコナミのフィールド魔法サーチに対する懸念が見て取れる。

FLOD 革命的なカードの多かったパック

 13日に発売されたFLAMES OF DESTRUCTION (FLOD)は今でも環境で使われるカードが多数収録され、遊戯王のゲーム性を大きく変えたと言ってもいい。まずはトロイメアというテーマだ。リンク1~4まで網羅している星遺物ストーリーの適役テーマなのだが、汎用性の塊のようなモンスターたちで占められている。展開を担うリンク1、特殊召喚されたモンスターか魔法罠を破壊するリンク2、デッキバウンスのリンク3、そしてロック効果を持つリンク4がある。それぞれ相互リンク状態の時に追加効果を持つ。リンク1は後にどちらも禁止となり、フェニックスとユニコーンが今でも現役なのを見るに、当時として破格の性能だったことがわかる。
 トロイメアだけではない。まず、新規手札誘発として屋敷わらしと無限泡影が追加された。屋敷わらしは妖怪娘シリーズの墓地担当であり、墓地除外はかなりユビキタスな効果なため、刺さる対面は多い。後述の墓穴の指名者を止められるのも偉い。無限泡影の方は罠バージョンのヴェーラーといった性能で、場にカードがないとき手札から発動できる。セット状態から発動したら同じ縦列で発動した魔法罠を無効化できることもあり、隙がない。前回の拮抗勝負に引き続き、またも手札から発動可能な罠である。このパックで実はもう一枚手札から発動可能な罠が出ており、しかもカウンター罠である。レッド・リブートはライフ半分と引き換えに手札から発動でき、相手に1枚罠を伏せられてしまう代わりにそのターン中の罠の発動を封じることができる強力なカウンター罠である。遊戯王のカード3種類のうち1枚を完全に封じられるその性能は圧倒的であり、海外では禁止になったほどだ。ロック系罠に対して後攻が取れる択が一気に広がったと言える。
 さらに、このパックで墓穴の指名者が追加された。手札誘発を無効化できるカードというこの異質な速攻魔法の登場により、1ターン目でのチェーンの応酬が過去類を見ないほど激しいものとなり、「空中戦」とまで言われるほどの現代遊戯王を確立した新規といえる。現代で使われる手札誘発がここで大体出そろったことと手札誘発を止める手段が登場したことを合わせて自分はこのパックを「2024年現在の現代遊戯王のスタート」としている。

 2月24日にはデッキビルドパック ダーク・セイヴァーズが発売され、閃刀姫が環境入りした。モンスターこそレイとその変身体の単騎だが、強力な魔法でゆっくりリソース差をつけていくデッキだ。特に「実質強欲な壺」と言われるエンゲージは長い間規制されるほどのパワーを持っていた。シャドールとしてはミドラーシュが大して刺さらず、リソース勝負ではさすがに強欲な壺に勝てなかったため、苦しい対面であった。海外ではこのあたりの環境が良かったと今でも人気だったりする。

2018年4月期 全人類待望の瞬間

おかえり!!!!

 4月、シャドール使いの待ち望んだ瞬間がやってきた。リミットレギュレーションでネフィリムが制限復帰したのだ。代わりにミドラーシュも制限となったが、関係ない。これにはネフィリム返しておじさんも成仏することとなった。あまりにも、あまりにも長かった。丸3年も禁止を経験したシャドールの要がようやく帰ってきたという事実に歓喜するしかなかった。
 他の変更?そんなもんは知らん
 その後4月期はヴァレルソード・ドラゴンなどが登場した以外は特に環境に変化もなく、シャドールに有用な新規も来ずに7月に入った。

2018年7月期 紫色のリンク1の時代

初出が1999年のかなりの年配である

 7月の新リミットレギュレーションでは先攻ワンキルコンボの原因となっていたキャノン・ソルジャーとトゥーン・キャノン・ソルジャーが禁止となってしまった。まさかトゥーンから禁止カードが出るとは思わなかったが、無限ループが原因となれば仕方がない。
 また、前回制限になったネフィリムとミドラーシュともども準制限に緩和された。もう少しで全盛期の力が戻ってくる。

ネメシス・コリドー出張セットは今でもかなりの脅威である

 14日にはさっそく新弾のSOUL FUSION (SOFU)が発売され、サンダー・ドラゴンのリメイクテーマがさっそく環境に食い込んできた。手札から発動する効果に加え、墓地にいったり、除外されたりすることで効果を発動できるという、初代サンダードラゴンの系譜をしっかり受け継ぐ雷族テーマだ。特に相手のサーチを封じ、除去も楽ではない超雷龍-サンダー・ドラゴンの制圧力はすさまじく、サーチを多用する遊戯王においては非常に強力な置物としてとんでもない存在感を見せつけた。光と闇で構成されるサンダードラゴンはシャドールにも入っていいポテンシャルがあった。とはいえサンダードラゴン単体で使用したほうが強いという悲しい結末に涙するしかなかった。採用するにしてもシャドール要素を少しだけ入れてミドラーシュを立てる感じになっただろうか。
 汎用カードとしては(本来汎用ではないのだが)ダイナレスラー・パンクラトプスが収録された。後攻側がスキルドレインすらも貫通してカードを破壊できる手段としてサイドデッキの常連と化した。場合によってはメインからの採用すら視野に入り、フリーチェーン破壊の強力さを如実に語る結果となった。未だ制限なことを踏まえれば相当汎用性が高い一品である。
 その後はEXTRA PACK 2018の追加などあったが、特に環境にもシャドールにも関連するカードは出なかった。

2018年10月期 暴力、発車!

エラッタされて帰ってきた

 10月の規制でネフィリムとミドラーシュが制限解除となり、ようやくシャドールはすべてのカードをフルで使える状態に復帰した。実に4年間もの間、何かしらが規制されていたことになる。
 今回の改訂で前回に引き続き射出カードであるアマゾネスの射手とメカ・キャノン・ソルジャーが禁止となった。ファイアウォール・ドラゴンの罪は重い。禁止で言えば大体どのデッキにも入っていた最強のリンク3、サモン・ソーサレスが一発で禁止を喰らった。②の効果が自分に向いているリンク先でもよかったのがあまりにも強力過ぎたのだと言えよう。ちなみにエラッタされたことで2024に帰ってきた。
 さらに閃刀姫とオルターガイストが若干の規制を受けた。環境の変化としてはそのくらいのものである。

サベージ、最近TCGで禁止になりましたね

 13日発売のSAVAGE STRIKE (SAST)で登場したサブテラーの継承はシャドール新規ともいえるくらい非常に相性が良かった。使いまわしが可能な罠で、手札かフィールド(表側表示)のリバースモンスターを墓地に送って、同じ属性の、リバースモンスターか元々のレベルの低いリバース以外のモンスターをサーチできる。シャドールはこの頃は闇属性で統一されており、全員リバースモンスターなので手札のシャドールの墓地効果を使いつつ任意のシャドールと交換できることになる。シャドールの潤滑油として優秀なカードだと言える。
 汎用カードとしては強欲で金満な壺の追加は書くに値するだろう。EXデッキを3枚か6枚ランダムに裏側除外し、3枚ごとに1枚ドローができる魔法カードだ。EXを使わないデッキからすれば実質的な強欲な壺であり、後に規制されるほどの強力なドローソースとなる。
 また、このパックで守護竜という最強のドラゴン族リンクモンスターが登場しており、ドラゴン族を大幅に強化した。3枚のリンクモンスターのうち2枚が未だ禁止から帰ってこないというすさまじいカード群である。征竜といい、どうしてドラゴン族汎用強化はこうやりすぎてしまうのだろうか。

結局列車で轢き殺すのが最強

 11月に入り、デュエリストパック-レジェンドデュエリスト編4- (DP21)が発売された。ハーピィや月光、サイバーエンジェルなどが強化を受けたが、特筆すべきは列車である。列車ドールの構想は前述のとおりであり、新規の追加でより安定して、より脳筋な盤面を出力できるようになった。特に大きかったのは超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベの追加だ。ランク10機械族の上に重ねて出せるランク11で、4000も攻撃力がありながら、2000もの打点上昇とX素材の数+1回までモンスターに攻撃できる暴力性を前面に出した圧倒的な筋肉である。よしんばモンスターがいなかったとしてもグスタフマックスの2000バーン+リーベの6000ダイレクトアタックでワンキル成立であり、列車のワンキル力が異常な域まで達したと言える。列車の強化はシャドールの強化なのでうれしいところだ。

うららありがとう!!!

 12月8日にはストラクチャーデッキ-ソウルバーナー-(SD35)が発売された。サラマングレイトが大幅強化されたことにより環境入りを果たしたことは書いておかねばならない。転生リンク召喚を駆使して罠を構える罠ビートのようなデッキで、墓地からうららを回収することもできる。シャドールとしては先攻でミドラーシュを出せれば割と簡単に勝てるが、後手から捲るためには少し手数が足りない、そういう相手であった。

2019年1月期 シャドールのミライもらくらくクラフト


やっぱり、ダメだったよ…

 2019年は衝撃の改訂から幕を開けた。放送中のアニメの主人公エース、ファイアウォール・ドラゴンが禁止になったのだ。それまで射出カードを身代わりにすることで何とか耐えていたが、あまりの採用率と悪質なコンボ性に流石に看過できない事態となり、主人公エースの座をデコード・トーカーに奪われる形で消えることとなった。時を同じくしてトロイメア・ゴブリンも禁止になっており、召喚権を増やせるリンク1という存在がどれほど罪深いかがよくわかる。
 他にも多数のカードが規制を喰らっており、かなり大規模な制限改訂からこの年は始まった。

DBIC リンクスで「メスガキ粉砕機」というトンチキな名前のデッキを生みだした

 2月23日に発売されたデッキビルドパック インフィニティ・チェイサーズ (DBIC)で登場したウィッチクラフトはシャドールと相性が良いテーマで、【シャドールウィッチ】というデッキタイプを誕生させるに至った。同じ魔法使い族テーマとしてサポートを共有できるのもさることながら、ウィッチクラフトは属性がばらけている上に墓地効果を持つためシャドールの融合素材として非常に優秀であった。特にウィッチクラフトマスター・ヴェールとウィッチクラフト・ハイネが非常に優秀であり、前者はミドラーシュのロックをさらに強力なものにでき、後者はミドラーシュに対象耐性を与えることができる。無限泡影という負け筋を潰してくれるのはかなり大きいだろう。後々さらに相性の良くなる新規が出てきたことを鑑みれば、非常に嬉しい新規テーマだったと言える。

2019年4月期 最強のリンクデッキ

「シンプルなテキストほど強い」を地で行くカード

 4月の改訂は割と軽いものであったが、サンダー・ボルトの制限復帰という、それなりに驚きの変更がなされた。海外ではすでに禁止解除されていたが、ここまでシンプルに相手フィールドのモンスターを全破壊するカードが許されるとは思っていなかった。ちなみに後に制限解除まで行ったものの、準制限に引き戻されて今に至る。やはり雑な全体除去は強力なようだ。
 規制がかけられたカードの方はと言えば、レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴンが一発禁止になった。【守護竜】で破壊竜ガンドラXと一緒になって暴れていたのが原因だろう。後にエラッタされることになる上、守護竜が信じられないほど禁止を多く生み出すことになることを考えればこのコンボがどれほど凶悪だったかがよくわかる。

RIRA 結局ウィンとウィンダってどういう関係なんです??

 13日には新弾のRISING RAMPAGE (RIRA)が発売され、召命の神弓–アポロウーサが登場した。今でも良く使われる汎用ランク4で、素材の数だけ攻撃力が上がり、攻撃力と引き換えにモンスター効果を無効にすることができる。単体で最大4回もモンスター効果を止められるこのカードの制圧力は凄まじく、無効カードを積むなり、戦闘破壊で処理できる手段を用意するなりすることが求められるようになった。

 6月に入り、ストラクチャーデッキ-リボルバー-が発売されたことでヴァレットが強化を受け、環境ですでに活躍していた【守護竜】と合体して【ドラゴンリンク】という名のデッキを生み出した。このデッキのパワーは凄まじく、守護竜が軒並み死んで長かったにも関わらず、2023年のWCS OCG部門にて優勝を果たし、MD部門の優勝チームも使用していたほどだ。ドラゴンリンクの脅威に環境は荒れ、新リミットレギュレーションに突入することとなる。

2019年7月期 隕石到来

「元々の」つけ忘れ案件

 7月のリミットレギュレーションは幅広いデッキタイプを規制すると同時に、先攻ワンキルやロックなどの不快度の高いデッキを重点的に潰すものとなった。破滅竜ガンドラXの禁止、魔鍾洞の規制とサーチカードたるメタバースの制限がそれを如実に物語っている。フィールド魔法サーチカードがまたも規制されたということで少し話題になった。環境デッキとしては閃刀姫とサンダードラゴンが規制の対象となった。

CHIM ダークフルードが活躍するのはもう少し先の話

 13日にはさっそくCHAOS IMPACT (CHIM)が発売された。環境として大きいのはまずI:Pマスカレーナの追加だろう。緩い条件で出せるリンク2で、いわばリンク版フォーミュラ・シンクロンのような存在だ。違うのはマスカレーナを素材としたモンスターが破壊耐性を得るところで、これが非常に強力であった。
 また、輝光竜セイファートの登場により【ドラゴンリンク】がさらなる強化を受けた。

EP19 アトラクターは許さん

 9月の黒船の季節は強テーマこそ来なかったものの、とんでもないカードが何枚か来日した。まずはディメンション・アトラクター。手札誘発版マクロコスモスと呼べるカードで、シャドールとしては涙が出てくるくらいガン刺さりするカードだ。他にも展開を抑止できる原始生命態ニビル、盤面のモンスターを全て無効にできる冥王結界波など、現在でも環境に大きな影響を与えているカードが勢ぞろいした。「ニビルケア」なんて言葉が普及するくらいには大きなものである。ニビルは光属性であるためシャドールにとってかなりうれしい手札誘発だった。

2019年10月期 シャドールの春が来た

MDでは禁止になった

 10月のリミットレギュレーションはドラゴンリンクの規制がメインだった。輝白竜ワイバースターの制限とエクリプス・ワイバーンの禁止により、【白黒シャドール】の構築が困難になってしまった。
 そのかわり、捕食植物オフリス・スコーピオが準制限に戻ってきたため、影依融合のサーチがより楽になった。

IGAS イグニスター、組もうかな…

 12日発売のIGNITION ASSAULT (IGAS)は遊戯王のカードの種類が10000種を達成した記念のパックであり、万物創世龍の追加で大いに祝われた。シャドールとしてはグラビティ・コントローラーの収録が大きい。グラコンはLモンスター以外のEXゾーンのモンスター1体を素材にできるリンク1で、融合召喚したネフィリムを墓地に送って出すことができる。ネフィリムの特殊召喚時にシャドール魔法・罠を墓地に送っておけば実質サーチができるというわけだ。この時点ではあまり大きくはなかったが、後にぜひともサーチしたい永続罠が追加されたときに有用なコンボとなった。

LVP3 なぜかMDでまだ耐えているヘビ

 11月にはさらにLINK VRAINS PACK 3 (LVP3)が発売され、全体的にとんでもないレベルのリンクモンスターが多数収録された。シャドールにとってうれしかったのはまず神聖魔皇后セレーネ。魔法使い族を蘇生できるリンク3で、霊使いを絡めることができれば2体から出せる。蘇生した魔法使い族とセレーネでリンク4を出せるということで、魔法使い族の展開力が大きく上昇した。後に収録されるアクセスコード・トーカーをシャドールで出す術として非常に重宝することになる。
 さらに捕食植物ヴェルテ・アナコンダの追加により影依融合と神の写し身との接触をデッキから撃てるようになり、ちょっとした革命がおこった。このカード、後にフュージョン・デステニーや烙印融合で非常に悪さをすることになるのだが、融合魔法が必要なデッキにとって非常に大きな強化だったと言える。少なくとも出張で使われる設計のカードではなかったはずなのだが…のちに禁止になる。
 他にも禁止になったユニオン・キャリア―、海外で禁止になった幻獣機アウローラドン、王神鳥シムルグなど、すさまじいカードが収録された。

SD39 ネフィリムとミドラーシュはアニメ産以外のカードで初めてイラスト違いを得たカードである。愛され方がよくわかる

 12月7日、運命の日。人気投票で見事一位をとったシャドールに新規を多数盛り込んだストラクチャーデッキがついに発売されたのだ。当然筆者もシャドールに投票したし、そのためだけにコナミIDも作った。このストラクの発売により、メインデッキに闇以外の属性のシャドールが登場することとなり、構築の幅が大きく広がった。
 聖なる影ケイウスは光属性担当で、リバース時に手札からシャドールを展開でき、墓地効果で打点上昇を行える。リンクネフィリムを出しやすくなっただけではなく、ミドラーシュを(500打点だけとはいえ)戦闘破壊から守りやすくなったのはかなりうれしい。また、ネフィリムを出すための素材になれるのも偉い。̚カドシャドールとか読めるわけがない
 影霊の翼ウェンディは風属性担当で、リバース時と墓地効果でそれぞれ展開を行える。横展開が苦手なシャドールにとって非常にありがたい存在であり、後述のカードのおかげで任意のリバース効果を使いやすくなった。さらにはレベル3で、他のシャドールと違いサイキック族なので緊急テレポートに対応しており、リンクネフィリムの素材として非常に有用である。リーシャドールとか読めるわけがない
 影依の巫女エリアルは水属性担当で、リバース時に除外されているシャドールを特殊召喚でき、墓地効果で墓地のカードを3枚まで除外できる。除外が苦手なシャドールにとって除外からの救済手段が登場したのは非常に大きく、またネフィリムが「融合召喚した場合」ではなく「特殊召喚した場合」なのを活かして、除外ゾーンから出し、墓地肥やしを行うことも可能である。墓地除外も非常に優秀であり、昨今流行りの賜炎の咎姫などの墓地妨害やリソースを削りに行けるのは一部デッキにとってかなり大きいだろう。作者は以前エルドリッチ3枚を一気に除外できたことがあり、爆笑した。ノェルシャドールとか読め(ry
 影光の聖選士は墓地からシャドールを表側か裏側守備で特殊召喚できる通常罠である。墓地効果でこのカードと墓地のシャドールを除外し、自分のモンスターの裏表を変更できる。墓地から出したシャドールを即リバースできる設計だ。墓地効果目当てでネフィリムや芝刈り経由で墓地に送るという手段もある。よくやるコンボとしては墓地の融合モンスターと一緒に除外して、エリアルをリバースさせることで実質墓地効果での蘇生ができる。レーシャドール・インカーネーションとか(ry
 最後に新たな融合モンスターとしてエルシャドール・アプカローネが登場した。属性の異なるシャドール2体で融合できるレベル6モンスターであり、戦闘破壊耐性を持つ。特殊召喚成功時にフィールドの表側表示のカードを永続無効にでき、墓地に送られればデッキ・墓地からシャドールカードを手札に加えて、その後手札を墓地に送れる。前半の効果は永続魔法系のカードに対して非常に刺さりがよく、何度神碑の泉を機能停止に追い込んだかわからない。フィールド魔法が重要な王などのデッキに対して大きく出られるようになった。後半の効果は待望のサーチ効果であり、EXから直接墓地に叩き落しても発動する。ちなみに墓地から融合モンスターを戻した場合手札を捨てる処理は発生せず、ノーコストのEX補充に使うこともできる。全体的にかゆいところに手が届く設計の超優秀な新規カードで、筆者がミドラーシュの次に好きなカードである。
 大量の新規を獲得したことでシャドールはデッキとして非常に強化され、全シャドール使いが泣いた。最高かよ

LGB1 原作愛が強すぎた弊害

 12月21日に出たLEGENDARY GOLD BOX (LGB1)は環境を震撼させる新規が複数収録された。サイバースの実質強欲な壺、デコード・トーカー・ヒートソウルをはじめ、カッチカチ耐性でモンスター無効を持つFNo.0 未来龍皇ホープ、そして目玉の超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズが登場したのはこのボックスである。ドラグーンは破壊耐性に対象耐性を持つ3000打点で、真紅眼融合からブラック・マジシャンと真紅眼の黒竜を素材にデッキ融合が可能だ。素材とした通常モンスターの数までモンスターを破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与える起動効果に万能無効まで持ち、さらに無効したあと自身の打点を1000アップさせることができるというトンデモないオーバースペックであった。捕食植物ヴェルテ・アナコンダを使えば真紅眼融合の条件を無視して展開後にドラグーンを出して制圧をすることが可能であり、任意の効果モンスター2体がこのバケモノになることができたともいえる。【ドラグーンビート】がデッキとして機能できるどころか環境まで出てくるくらいのパワーを有し、ヴェルテ・アナコンダを出せるほぼすべてのデッキに採用されてしまうくらいの汎用性を誇った。シャドールとしても出せるものなら出したいカードであったが、リンク2の出力が苦手すぎるのと、バニラ2枚を採用しないといけないのが事故率の元々あるシャドールと相性が悪かったために耐えるしかなかった。年の最後にとんでもないものを出してきたものだ。

2020年1月期 10期の終わりとせまりくる厄災

最大4ハンデスはいかんでしょ

 何やら海の向こうで不穏な気配を漂わせながら始まった2020年は先攻ハンデスを可能にしていたトポロジック・ガンブラー・ドラゴンが禁止になった。当たり前である。他にも未開域で使用されていたカードやオルフェゴールに規制が入った。
 緩和組としてはマスマティシャンが返ってきたことでシャドールにとってうれしい墓地肥やし要員が増えた。

ETCO チェーンを許さぬ破壊+5300打点。優先権の大切さをMD初心者に教えてくれる。

 11日、10期最後の通常パックとなるETERNITY CODE (ETCO)でアクセスコード・トーカーがついに登場した。最後のコード・トーカーだけあってその効果はすさまじく、殺意の高いフィニッシャーとして環境で見ない日はないほどの汎用性をほこる。シャドールにもセレーネなどを利用して無理やり採用されるくらいには強力で、シャドールのフィニッシャー不足を一撃で解決してくれる。
 その後は疫病の流行により大会等のイベントがキャンセルされてしまい、パックの発売等はあったものの、このリミットレギュレーションでのデュエルが行われることはそう多くはなかった。
 
 10期は遊戯王というゲームを根本から覆すような変化から始まり、その後も革命的なカードが多数出現した。ただのインフレというよりはゲーム性が進化していった時代だったと言えるだろう。とはいえ俗に「リンクショック」と呼ばれたスタートダッシュによって苦しい時代だったことも否定はできない。シャドールとしては何よりもうれしい規制緩和と新規を得られた最高の時代だったことは言うまでもない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?