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119番通報📱〜市民と消防の認識のギャップ③〜最終回

119通報は、火災や救急、救助等の対応を要請するため、市民が消防機関に通報する際の緊急用電話番号です。

救急車の出動件数は年々増加する一方、「不要」「不急」の通報が絶えない現状に、私たちは頭を抱えています。

ここで活躍するのは、119通報を受信する役割を担う通信指令員です。彼らの技術向上は不可欠です。その上で、市民が状況に応じて適切に119通報を行うことができれば、119番通報の効率が飛躍的に高まり、救命率の向上が期待できる可能性があります。

119番通報における市民の心理的要因に関する探索的検討 木村昌紀 他

X(Twitter)で、119通報の問題を投稿しました。666名の方に回答いただきましたので、ラスト7問目から10問目までを答え合わせしていきます👩‍🚒👍

1問目から3問目はこちらをぞうぞ。

1問目から6問目はこちらをどうぞ。


第7問 料理中に油が燃えて消せない

正解は、「119通報 する」です。

料理中に火災となる。これは非常に多いケースです。
ここ数年、コンロからの火災はランキングの3位を維持しています。
それだけ火災に進展してしまう可能性が高い状況ですから、「消せない!」と思ったらすぐに119番通報しましょう。

料理中の火災で特に多いのは、揚げ物料理中の火災です。
ちょっと目を離した隙に加熱し過ぎてしまったというケースが多いです。

https://www.town.mashike.hokkaido.jp/documents/m_files/1625028909.pdf

これによると、5分で適温に達しますが、10分経過すると煙が出て、15分経つと発火するとあります。突然のお客さんや電話で簡単に経過してしまいそうな時間ですね。

https://www.town.mashike.hokkaido.jp/documents/m_files/1625028909.pdf

さらに注意してほしいのは、IHに使用する「汚れ防止マット」です。

IHクッキングヒーターを製造する4社(東芝、日立、三菱、パナソニック)に対するアンケートでは、各社とも、汚れ防止マットの断熱効果で鍋の温度が正しく検知できないため、汚れ防止マットで調理することは「問題である」と回答した。いずれのメーカーも、取扱説明書に汚れ防止マットを使用しないよう明記しているという。

https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/588798.html

私の消防署でもIHに使用した汚れ防止マットが原因で、加熱防止装置が働かず、調理油に着火した火災事例がありました。私の家のIHの取り扱い説明書を見ると、確かに「使用しないこと」と明記してありました。

サッと拭くだけで汚れが取れることはIHクッキングヒーターの魅力の一つですからね。皆さんもご注意ください。

というわけで、「料理中に火が出て消せない!」というケースでは、119番通報をしましょう。

第8問 自宅の鍵を無くしてしまい入れない。何とか開けてほしい。

正解は、「119通報 しない」です。

「する」と回答された方や「分からない」と回答された方は、屋内にある危険を想像されたのではないかと思います。
例えば、「家のファヒーターを点けたまま外出してしまった。家に入りたいけど鍵を無くして入れない。焦げ臭い匂いがする。」というケースでは、119番通報は適切となります。

単に、部屋に入れないだけという119番通報は、不適切です。

先日、「お母さんが3階のベランダで洗濯物を干している際に、内側から保育園児が鍵をかけてしまい、お母さんが部屋に戻れなくなった」という119番通報がありました。

これについてはどう思われますか?

詳細に聞くと、保育園児は3才で、部屋で泣いているとのことです。

この場合、緊急性は無いようにも思えますので、炎天下や真冬でも無い限り問題はなさそうです。しかし119番通報としては適切です。その理由は、「部屋に子供が閉じ込められ、不測の行動で危険に晒される可能性が高いから」です。お母さんが中に入れないということよりも、子供が閉じ込められているという発想です。3歳ですからね。お母さんのところに行くために、どのような行動に出るか分かりません。危険な行動をとる可能性もあります。さらに言えば、家の中にいる子供を心配して、お母さんがガラスを割ることを考えるかもしれません。その際に怪我をする可能性もあります。
※消防の規模によって対応が異なる場合があります。

「家に入れない」という問題はいろんな要素があり、通信司令員の腕の見せ所でもあります。

ここでの問いは、「ただ家に入りたいから」というものですから、119番通報は適切ではありません。

第9問 家の前でうずくまっている人がいる。どういう状態か分からない。

正解は、「119通報 する」です。

不適切利用について説明すると、「状況がわからないのに通報してはいけない」ととかく考えがちです。でも実際はそんなことはありません。疑わしきは119番通報をしたら良いのです。

「最悪こんな状況かも・・。」と考えたら良いです。

今回のケースは119番通報をします。通信指令員が、”うずくまっている方の詳細”を尋ねると思いますので、その指示に従ってください。回答として「心配だけど、怖くて近づきたく無い。」も有りです。そう行った方も実際にいらっしゃいます。

僕たちが対応に困っているのは、このような通報ではありません。
次の「問10」のような通報なのです。

第10問 病院に行きたいが、場所がわからないから救急車で連れて行ってほしい。

正解は、もちろん「119通報 しない」です。

一般に、タクシー的利用と言われているものです。救急車はこういった目的で使用するものではありません。場所がわからないのであれば調べればよいだけです。

解説は、きっと必要ないですよね笑

まとめ

以上、ここまで119番通報の適切、不適切について解説してきました。
2,000人にも満たない弱小アカウントにも関わらず、たくさんの方にアンケートにご協力いただきありがとうざいました。

実際には、「適切な通報理由」として市民が認識しない場合、通報を遠慮してしまうことがあります。その結果、助けるべき命を救うことができず、予防できるはずの被害が大きくなる可能性があります。

逆に、実際には「不適切な通報理由」として市民が認識する場合、本来無駄な通報が行われることになり、通信指令員の負担が増えます。

これからも、このような場を借りて、少しずつみなさんに119番通報について理解していたらけたらなと思います。

ではまたっ!!👩‍🚒✨

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