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再戦。令和の函谷関を駆け抜けろ!

電気屋さんと勝負から一夜明けた。


そしてまた、我が家に必要なものが生まれた。

炭酸ボンベである。

ソーダストリームという炭酸水メーカーがあって、それはもうヘビーローテーションしている。お酒に弱い僕は、風呂上がりはこれと決め込んでいる。以前は炭酸水のペットボトルを購入していたけど、コスパやゴミを捨てる手間を考えるとこの方が断然良い。

炭酸水メーカーは電源がいらないが、炭酸ガスのボンベが必要だ。
空き瓶を電気店に持っていくと新しいものと交換してくれる。一本2,000円と少しだ。これで何杯分の炭酸水が作れるかというと、毎日使っても1ヶ月は余裕だ。僕にとってソーダストリームは無くてはならない存在となっている。

そしてこれ。
500円の割引券だ。今日こそこれを使う。
知ってるよ。501円以上のじゃないと使えなんでしょ?
すでに学習済みである。

今日もいるかな、あの店員さn・・・いや諸葛亮。

僕は颯爽とロードバイクにまたがり、諸葛亮の待つ電気屋さんに向かったのであった。それはもう赤壁の戦いさながらである。

そんな中、途中で消防署の後輩を見かけた。

「おー!勤務明け? お疲れさーん!」

少し大きめの声を彼に掛け、片手を上げ爽やかに通り過ぎた。え?その場に留まって会話をしないのかって?

こちらは今からまたあの諸葛亮と勝負をすることになるのかもしれないのだ。一分の隙も許されない。油断ならないのだ。相手はあの諸葛亮である。

さていくか・・。
僕の前に店舗の門が立ちはだかる。
ロードバイクを駐輪場に止め靴をトントン。リュックを背負い直して。

ん?あれ?
軽い。軽すぎる。

もう一度リュックを背負い直してみる。
やっぱり軽い。まさか・・。

僕は一息ついて、チャックを開ける。
「うん。・・・ない。入っていない。」

空の炭酸ボンベ忘れた!

ここまで10分の距離。まあよかろう。
ちょっとしたトレーニングだ。

僕は再びロードバイクにまたがり、元の道を戻った。
あまりにも時間が経っていなかったので、念のため少しだけ遠回りをした。
無論、さっきの後輩と再びすれ違うのを防ぐためである。ルートBだ。
「先輩。行ったり来たり何してるんですか?」と思われてはかなわない。

・・・あった。これだ。
下駄箱の上に置いたままだった。
この空ボンベがないと、さすがに交換はしてくれないだろう。

そしてこの500円割引券。ちゃんとある。
ん?まてよ・・・、なんか書いてあるな。
何だって?この券を使うときは会員証を見せること、、、だと?

これは聞いていない。
まさかこんなところにトラップがあったとは。
ここ何年も会員証なんか見てないぞ?

何?アプリ?
この前携帯電話も変えたばかりだ。
もう一度再インストールしてと・・・。よし。

パスワード?

確かこんな感じ・・・。よし、OK。

おー・・。会員証が出た。
これまでの総ポイントは・・・と。「0pt」
まあそうだろね。

危なかった。勇んで500円割引券を出したはいいが、会員証の提示を求めらたら手も足も出ないところだった。

「会員証がないなら割引券使えませんねー。」
僕の脳裏に諸葛亮がほくそ笑む絵面が思い浮かぶ。
ふん。その手には引っかからないぞ・・・。今日の僕は昨日の僕ではないのだ。

これで準備は整った。
こうして僕は、三度ロードバイクにまたがり、颯爽と走り出した。
無論、またあの後輩とすれ違うことを避けるために、今度もルートBだ。

旗振りのおじさんにお礼をして、工事現場を通り過ぎる。こんなところで工事してたんだな。

無駄に立ち漕ぎなんかしてみる。
帰ったら炭酸水を一気飲みするんだもんね。トレーニングも兼ねてるんだぞっと!!!!自然とペダルを踏む足にも力が入った。

ギュッとタイヤが止まる。
着いた。2度目だけど。

僕は空ビンの入ったリュックを背負い直し、肩にかかる重さを確認した後、
ロードバイクを駐輪場に止めた。

そして訪れるそのとき。

いた。諸葛亮だ。

僕は彼の目をまっすぐ見て言った。
「炭酸ボンベを交換してください。」

「・・・わかりました。お待ちください。」

彼は、また来たな?といわんばかりの笑みと、わずかばかりの会釈をしてみせた。これもマニュアルか。

ふふ。早く帰ってこい諸葛亮よ。
そしてついにこの500円割引券を突き出す!

知ってるよ。501円以上だろ?
昨日の屈辱はここで晴らさせてもらおう。

あ、そうそう。
会員証を提示するんだったな。

アプリはさっき携帯にインストールした・・・あれ?

携帯は??

あれ?

ポケット?

カバン?

どこやった?

僕はありとあらゆる空間に手を突っ込んだ。
流れる汗は、きっとロードバイクのせいじゃない。

そろそろ諸葛亮が戻ってくる。
急げ!探せ!どこだ!!!!

・・・・・ない! 家に忘れた!!!


こうして僕は諸葛亮が戻ってくる前にレジを離れ、ロードバイクにまたがって颯爽と走り出した。

ふふ。諸葛亮め。
消えた僕に、今頃驚いているところだろう。
念のため、別の店員さんに「急用が出来たから、また後で来る」と伝えておいた。

まあ、後って言っても一週間後だけどな!!

赤信号で振り返ると、電気屋さんの入口が見えた。そして呟く。

そうか・・・これが令和の函谷関というやつか。

信号が変わり、ロードバイクは再び走り出す。

道路工事のおじさんに、「なんだこいつ、ウロウロして」と思われたくなかったので、ルートCで帰ることにした。



今日はね・・。もう水でいいや・・・。






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