春は外へ出ようと決めた

おれの中で、時間はべつに速いほうだ。たとえば放っておけばおれは早口だ。自分でも反省するし、ひとに言われたこともあるけど、ゆっくり喋ってみたら? というの、そしてゆっくり喋るために、ゆっくり考えてみたら? 頭の中のギアをチェンジ。普段よりもローなギアにシフトチェンジ。さっき、すごい勢いに任せて文章をバーっと書いていて、書けた書けたーって気持ちと、でも達成感しか残ってない、言葉をただ書き散らしてしまったことへの後悔みたいなのに襲われてる。ファストフードがジャンクなのみたいに、言葉のジャンクな消費を、書く時点でやっちゃってねえかと。それは内容にも読まれる際にも影響しないだろうか。たまにはゆっくり考えて、文章もじっくり練ってみてもいいのやも。文体が、たぶんごろっと変わるわけではないような気が、今の時点でしているけど、小さいながらも変わるものがどこかにあるのではないか。

今日は早稲田の、俺の学部とかの卒業式で、でも式には出ないで、学位記だけもらって帰った。ようやく俺卒業の証拠証明を得られたが、実感は無きまま、今日は夕方にある予定のためにずっと外で待機していた。携帯ですぐにゲームをする俺は、外に出ずっぱりだと、ひんぱんに充電の瀬戸際に立っている。でも充電ない方が本を読もうという気になって、おかげさまで今日は一冊読み終わった。

おれの思う稽古場における演出家の在り方はカウンセラーと極めて近い。だからこの本の中で書かれているケアとセラピーについての考察は、稽古場における演出の問題とすっかり重なって、読むことができた、その上での発見も多々。でも、いま、ローギアな思考で文章を書いているけど、これは分析的なアタマじゃない! から、ちょっとあまり本について書く感じじゃないので、また詳しくは別で書く。

今日はだから、学位記を取りに行ったのが昼すぎで、予定が夕方で、5時間近く暇だったので、高田馬場の地域センターで、フリースペースで本一冊読んで有り余る時間を、どうやっても過ごせずに、さすがに外に出て散歩などもしていた。高田馬場は桜がもうすぐ咲くみたいな蕾。あとは何川だか知らんがわき上がる蚊柱! 春だ。暖かくなることの良い点と悪い点のそれぞれの萌芽を見た。ついでに洋画も見ようと思って早稲田松竹に行ったら上映開始に20分遅かった。泣く泣く喫茶店に入る。

短いながら散歩をして良かったのが、行くあてがなければ歩くスピードが変わることと、見えるものが変わることの気づき。身体が変わると言ってきっといい。夕方の予定で人と会って、そこで戯曲を書くことについて考えていたのだけど、そういえばおれは文章を最近自室のふとんの上でしか書いてばかりだ。だからおれの文章にはカラダがないんだ。散歩しながら書いてみればいいかもしれない。出先で文章を。使わない言葉をきっと使うだろう。別な時間の速さもあるかもしれない。喫茶店のオレンジスカッシュというのがうまかった。その後も入った喫茶店ではウィンナーコーヒーがうまかった。よく分からないままエスプレッソたのんでちょんもりしか来ないのにしょげちゃうおれじゃもうないぜ。

そんなことを考えていたこともあって、勢いで文章を書いたあと、しっかり反省したりしたわけだな。勢いは大事だが、落ち着きも大事。右手に勢い左手に落ち着きをギチギチ言わせながら握りしめて言葉と接しよう。春は外へ出ようと決めた。4月からおれは仕事がその実なにも決まっていないがまるで楽観的だ。ぎりぎりまで呑気でいたい。仮にやばくなるとしても。きっとなんとかなる。新しいことも始める。もっと言葉を書く。いつにも増していちばんおれは善く生きる人になる。ポジティブな気持ちが蚊柱みたいにわき上がるこの暖かさよ。