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さみしいタバコは誰のため。

「いつ頃東京に来るの?」

「来月頭かな、3日の飛行機でまた出国。成田から行くから東京でお茶でも」

「そっか、会えるといいね」

電話でそんな話をしてから何日かが経って、その来月の頭とやらが見え始めても彼からの連絡は無い。忙しいんだろう、そう考えていた。私もそれなりにやることはあったし、月末は何かと追われていて1日の隙間時間に彼のことを考えるのは優先順位がそれほど高くなく、気づけば日付は2日になっていた。

あえるといいね、だったのか、会いたいね、なのか、会おうよ、と言ったのか電話口だったから確かめようがない。

電話をしたとき彼はすごく弱っていて、身の回りのことに心を痛めていて、その次の日にはすごく明るく振る舞っていたから私は不安だった。彼が無理しているのではないかと考え得る断片的な記憶しかなくて、どこかに蒸発してしまったんではないだろうかなんて考えた。

すごくすごく不安だった。彼の興味を引くようなメッセージが送れたら、彼の精神がどこだかわからない遠くに行ってしまうこと引き留められるんじゃないかとか、頭の中でぐるぐる巡った。

だから、連絡が取れなくなってしばらく経って、いつか彼が私に勧めたタバコを買った。
初めて深夜のコンビニで「72番」と番号を伝えて、マルボロのドライの5ミリを買った。高かったけど、寂しさを紛らわすなら、彼の気持ちがこちらに向くなら、安いものかもしれないなんて考えている自分がいて、こうして人々はタバコを手にするのかと、少し腑に落ちた。

そのまま帰り道に火をつけて吸ってみると、どこか冷たくてでもしっかりとついてくる匂いが確かに私の周りにあった。こびりついてしまうのが少し怖くて、急いで歯磨きをした。

それから、寂しい夜だけは、上手に吸えないたばこを吸った。吸っても彼からの連絡は来ない。不安定な煙だけが遠くの夜空へ飛んでいく。

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#恋愛小説 のようなものを書き始めました。

タイトルの最後に「。」がついているのは小説などです。

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