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どうしてビューラーは気分がアガるのか?

ビューラーの、あの形が好きだ。
立体的でかさばるのに持ち歩きたくなり、メイク道具入れでは中央に鎮座している。
色っぽいのだ。
ビューラーは「いいオンナ」感を醸し出しているのだ、全身で。
あらためてビューラーをながめてみると、その多くが曲線で構成されていることに気づく。
色っぽいのは、全身が曲線だからなのだろう。
ビューラーは、美容グッズ界のマリリン・モンローなのだ。

また、ビューラーの動きは、アイスをすくうあの道具(アイスディッシャーと呼ぶらしい)に通じるものがある。
幼い私には、あの丸い金属部分におさまったアイスがなぜ次の瞬間にコーンの上に乗っかるのか、不思議だった。アイスクリーム屋で店員さんがアイスを削り取ってまあるくコーンの上に載せてくれる、あの一連の動作を食い入るように見つめた。
睫毛をビューラーでクルリと持ち上げるとき、大人になった私の脳裏には、あのときめきが時々クロスする。
アイスディッシャーがほんの数秒でまあるいアイスクリームを生み出すように、ビューラーもほんの数秒で魅惑的な目元をつくってくれる魔法の道具だ。
そのためにも、形はあの立体的な曲線でなければならない。

ある有名なモデルさんは、休日メイクはビューラーとリップだけ、と言っていた(このリップは赤だと勝手に確信している)。ビューラー×赤リップ。セクシー、ここに極まれり。

もし、画期的な発明家が折り畳み式のビューラーを開発し、それが機能的に全く劣ることなくどんなに持ち運びに便利であっても、私は全力でそれを否定したい。
「まさに、芸術というものの名において。」※

※清岡卓行『手の変幻』より

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