アンダーウェア・アフェア(2010年)

画像1 アンダーウェア・アフェアは文化庁支援の若手映画作家育成プロジェクト「ndjc」で手掛けた約30分の短編。監督は岨手由貴子。ストーリーは主人公朝子のモノローグから始まり、高校生だった過去の自分と、結婚して夫と子供を持つ主婦となった現在の自分の生きている世界が交差しながら進んでいく。思春期から大人になる時間の流れの中で、女性の心境の変化や葛藤、成長などを繊細な表情や言葉で丁寧に現している。下着、性、傷痕、臭いなどがキーワードなのかな。
画像2 朝子は母と妹と3人で狭いマンション暮らし。1人になれる場所がなく、そういう時は風呂場で過ごすが、すぐにどかされると不満げに語る。
画像3 子供が出かける支度をなかなかしないことや、やっと洗濯を片付けたところにまた服を汚したりすることに苛立ちを感じている毎日。
画像4 保育園を営む夫とは現在別居しており、息子と2人で暮らしているが、たまに夫は息子を連れ出して遊びに行く様子。この日はワカサギ釣りに出かけて夜まで朝子は留守番。
画像5 剛くんは町おこしか農業プロジェクトの一環か、都会から田舎へ移り住んで3か月目の若者役。それにしても、鎌とか野菜似合わねー笑。こういう役は初めてなんじゃないでしょうか?
画像6 人懐っこいこの若者、思わせぶりに朝子の午後の予定を確認してきます。旦那と子供が出掛けたのを横目で見ていたんですね。美味しいコーヒーを取り寄せてるから、良かったら淹れますよとかなんとか言って、家に入れてもらう気満々。。
画像7 洗濯物の中を歩くシーンが印象的。光とカラフルな洗濯物と小野ゆり子の横顔がとても綺麗。隣に住む男の子とちょっといい感じになりそうな予感?でも実は妹の方が先にもっと親密になっていることを知り、静かにふてくされる朝子。妹と彼がベランダでタバコを吸うという秘密を共有していることに嫉妬して、「じゃあ、ガンになったら教えて。」と意地悪なことを言う。いつも一歩踏み出せないまま、気持ちを抑えてしまう姉。
画像8 家事をするのは全部自分。妹のシャツのアイロンをかける時、妹が身に付けている大人っぽい下着に反応。帰りが遅くなるというし、胸にペンダントをしているところから、彼氏でもいるのかも?奔放な妹にいつも先を越されてばかり。このシーンのちょっと挑発的だったり、自慢げな妹と、それに驚くも羨ましくて嫉妬する姉の顔の表情が最高に上手いと思う。
画像9 若者が家に来るのを意識してか、主婦になってからオフにしていた女のスイッチが入ったか、新しい下着を買いに行く朝子。真っ白なのを選ぶところも、大人になった今は逆にピュアなものを身につけたいという気持ちからか、精一杯背伸びしていた過去との対比になっているのかな?でもなんかサイズが合ってないような?新しい下着を買うのが久々すぎて選び方も忘れた感じを出してる?
画像10 そしてシーンはその精一杯大人ぶろうとしていた過去へ戻る。妹の挑発的な態度に刺激されて大人っぽい下着を新調したい衝動で家を飛び出す朝子。
画像11 奥手な高校生にとっては、マニキュアも大人のマストアイテム。中でも朝子が手にしたのは、強烈な性的魅力を漂わせる赤。
画像12 下着も思い切って赤に。妹に負けたくない、もっと強烈な色気を纏いたかったのかな?と思わせますね。
画像13 例の若者(浜崎)が訪ねてきて、コーヒーを淹れてくれた。ドキドキ。でも私どうなっちゃうのかしら?的ちょっとワクワクするような期待も?
画像14 思わせぶりな会話で揺さぶりをかけるくせに、何にも狙いはないですよー的に距離を保ったり、お互いに相手の様子を見ながらの心理戦?でも奥手な朝子はただ無難に質問に答えるだけで精一杯(笑)。何かが始まりそうな男女のどうでもいいような会話の中で、リンゴを剥きながら自分が指をザックリ切った話から、朝子にザクッといったことあります?と訊く浜崎。
画像15 実際朝子には太ももに傷跡がある。学校から帰宅中に暗闇で自転車と行き交うときにぶつかってか、故意にイタズラで傷つけられたか。。
画像16 その後誰かに跡をつけられる気配を感じ、恐怖にダッシュで逃げる。
画像17 部屋にへたり込んでしまった朝子は、静かにスカートの下の傷痕を確認する。結構大きくて深そうだが、大事に至るような傷ではないようでちょっと安堵。落ち着いたとたん、家の部屋の臭いを急に感じる。わがままで奔放な妹と正反対で、いつも冷静で感情を自分の中で昇華させているいじらしさみたいなものも感じる。自分の本質も朝子のような感じなので、共感できすぎてしまい、朝子を抱きしめたくなった!
画像18 それまだ残ってますか?とこれまた際どい誘い誘われのスレスレをかすめてくる浜崎(笑)。しかし、傷痕を見せるでもなく「この辺」とただ指差す朝子。ここで男慣れした女性なら、傷痕を見せて一線を越えていたんじゃないかな。
画像19 目線を落とした浜崎は、真っ赤なペディキュアに反応する。スリッパの上にわざわざ置いてるのだから、彼に見せたくて出してるに決まってるのに、「どこか出掛けるんですか?」とちょっと意地悪な質問したり(笑)朝子のまんざらでもない気持ちを分かっててのさらなる揺さぶりをかけてくるw でも結局「最近の若いお母さんはちゃんとしてますもんねー。」と色気のない会話にまた引き戻されるww
画像20 反応してくれたのが嬉しいのか、何か起きそうだけど起きないことへの安心なのか、あれ?というちょっと残念な気持ちなのか?最初の緊張した面持ちから笑顔を見せる余裕が出てきた。この2人の探り合いのシーンも絶妙。
画像21 夫と子供が帰宅したとき、お風呂場で下着1枚でボーッと座っていた朝子。思春期のときそうだったように、お風呂場が落ち着くのかな?なんか様子が変だと感じながらも、普通に接する旦那。全体の会話や朝子への気遣いから、この人絶対いい人でしょ?って思うw 多分浜崎とは何もなく、何か物足りない、満たされない気持ちに折り合いをつけて、日常に戻って行ったのかな?と思った。剛くんが出ていなかったら観なかっただろうけど、本当に良作だと思います。思いがけず素敵な映画に出会えて嬉しい。岨手監督の他の作品も観てみたくなりました。

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