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河北省は北京の捨て駒

 8月1日、河北省トップの倪岳峰書記は、台風被害を受けた邢台市、保定市、雄安新区を視察した。

 保定市を視察時、倪岳峰は「北京と雄安新区に隣接する保定市は、水害防止の負担が非常に大きい激務である」という趣旨の発言をしている。保定市の北部に位置し、北京市南部に隣接する涿州市が、永定河などの河水放出を受けて水没したのは間も無くのことだ。
(涿州市は保定市の一部)

 視察時に「坚决当好首都“护城河”」との発言が出たことが話題となった。「断固首都の『周囲の堀』にならなければならない」という意味だ。

 言葉尻だけ捉えれば、河北省は北京のために捨て駒になりますという大胆発言だが、これは洪水の時だけに使われる表現ではない。

 例えば、6月12日に開催された河北省国家安全委員会会議でも同様の表現が出ているし、新型コロナ感染に神経を尖らせていた頃は、それこそ何度も北京を守るためとして同じ表現が出ている。

 2018年ごろにさかのぼると、北京市を大気汚染から守るため、環境汚染を垂れ流す工場の取り締まりを展開していた際にも同じ表現が出ていた。言っていることはもっともらしいが、当時河北省にあった工場の操業を止めさせるなど、荒療治も交えて目標を達成している。

 北京市は東側が天津市に隣接しているのを除けば、北、西、南側を河北省がグルリと囲んでいる。河北省は地理的に北京を守るために存在している。「北京の『城壁周囲の堀』」になるのは、そういう役割を与えられているのだから当たり前なのだ。

 だから、河北省は安全保障では物理的に北京を守る堀になる必要があるし、コロナ患者を入れないために、北京に通じる幹線道路や高速に検問を設けたり、北京が水没しないよう河北省側に水が流れ込むようにするのは何もおかしいことではない。おかしいと感じるのは河北省の役割を理解していないからだ。

 同様の発言は、今回の災害対策の副総指揮となっている李国英水利部部長からも飛び出している。いわく、「大興空港を含めた首都北京と、雄安新区と、あふれた水を一時的に蓄えている区内の絶対的な安全を確保しなければならない」と。

 タイミングの悪いことに、7月18日、『深入学习贯彻习近平关于治水的重要论述』(治水に関する習近平の重要論述を深く学習しよう)という素晴らしいご本が出版の運びとなった。

 御多分にもれず、「(習近平が)自ら計画し、自ら取り決めを行い、自ら治水事業を推し進めた」ことになっている。

 2020年1月7日の政治局常務委員会議で、「私は(中略)新型コロナウイルスの感染防止対策について指示を出した」と習近平が後出しをしたことが2月3日になって公表されたが、この時以来の恥ずかしい発言となった。

 北京の治水が悪いのは百歩譲って仕方ないとしても、ここ5年の間に完成した大興空港や、肝入りのはずで今も開発中の雄安新区が水に浸かるとはどういう計画をしたのだろうか。

 また、6日の人民日報一面に掲載された『风雨同心 人民至上』で、先月末の四川省視察中(7月25日から27日)に習近平が防災指示を出したと明かされている。これも新コロ同様、後出しである。

 もちろん、四川省視察時に重要指示()は報じられておらず、新コロの時と同じことをやっている。

==参考消息==
http://he.people.com.cn/n2/2023/0614/c192235-40456013.html
https://www.lf.gov.cn/Item/125325.aspx
http://www.sxllnews.cn/2022-03/15/226_113584.html
http://www.china.com.cn/lianghui/news/2018-03/09/content_50691148.shtml
https://k.sina.cn/article_1887344341_707e96d502001e8jz.html
https://m.mp.oeeee.com/a/BAAFRD000020230803826796.html
http://news.china.com.cn/2023-08/02/content_97634447.html
http://www.news.cn/politics/leaders/2023-07/18/c_1129755376.htm
http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2020-02/15/c_1125578886.htm
http://aqurelliste.seesaa.net/article/473598995.html
http://paper.people.com.cn/rmrb/html/2023-08/06/nw.D110000renmrb_20230806_1-01.htm

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