なんでも戦争に例える方が悪い

 昨年末から北京市北部や河北省をはじめとして、新型コロナウイルスの感染が再び広がってきた。感染が広がる地方政府はこぞって『戦時状態』に入ると宣言しているのだが、省レベルで感染者が出ていない地方政府までが使用するのは乱用だと新華社が批判した。

 『戦時状態』は、最初に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、都市封鎖されていた湖北省武漢市に対し、衛生保健担当の孫春蘭・副総理が「戦時状態で発生源を突き止め、抑制せよ」と檄を飛ばしたのが始まりだ。

 武漢市の都市封鎖が解除された後の5月に、吉林省でロシアからの陸路帰国者が原因と見られる感染が広まり、現地の市長が『戦時状態』と宣言した。

 その時わたしは緊急事態なのだなと感じて記事を書いたのだが、その後感染の規模に関わらず『戦時状態』が宣言されるので、あまり意味はない言葉なのだなと思うようになった。

 確かに『戦時状態』には感染者や感染率が一定の基準を超えた時に使われるのではなく、とりあえず管轄内で新規感染者が出たら宣言されているので、乱用と言われれば乱用だ。

 新華社は「新規の感染者なし」「発生している都市から遠く離れている」「そもそも省内で発生していない」なのに、『戦時状態』を使用することで民衆を惑わし、いらぬパニックを引き起こしていると批判する。

 言わんとすることはわからなくはないが、それなら、わずか10日前に自分のところで書いた内容と、整合性は取ってもらいたいものだ。

 1月5日、新華社は『戦時状態の意図とは』と題した記事で、新規感染者が増えた4つの地方政府で『戦時状態』が宣言されたことを紹介している。

 『戦時状態』の宣言については、「外部に決心を示し、意識させる」(任建明・北京航空航天大学公共管理学院教授)、「責任感を強くし、緊迫感をあげる」(中国傳媒大学メディア・公共事務研究員専門家)と、いずれも好意的な専門家の説明を紹介している。新華社は10日前のことも覚えていない。

 2ヶ月前のことなどまったく記憶に残っていないのだろう。

 11月5日に孫春蘭は新疆ウイグル自治区の感染対策状況を視察したが、その際新華社は『一刻の猶予もない戦時状態で』と見出しで危機感を露わにしている。

 なお、記事本文で孫春蘭はそんなことは一言も言っていない。

 新華社が言葉狩りをしたいのなら、まずは「殲滅戦に必ず勝つ」みたいな物騒な物言いをしている習近平に文句をつけるべきだ。病気でも災害でも事故でも戦争に例え、「保衛戰」などの単語を使う風習に警鐘は鳴らさないのに、一旦はほめた単語を槍玉にあげるとか頭がおかしい。


==参考消息==
https://note.com/aquarelliste/n/neec60515aed7
http://www.xinhuanet.com/politics/2020-02/06/c_1125539719.htm
http://www.xinhuanet.com/politics/2021-01/16/c_1126989719.htm
http://www.xinhuanet.com/politics/2021-01/05/c_1126947929.htm
http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2020-11/05/c_1126703559.htm

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